2024年04月26日( 金 )

「住むまち」から「暮らすまち」へ仕掛人が手がける、那珂川町のこれから(前)

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 2013年、宮崎県日南市が公募した油津商店街テナントミックスサポートマネージャー職に、330倍以上の競争率を突破して就任した木藤亮太氏。油津商店街はその後、4年間で25を超える新店をオープンさせ、IT企業の誘致にも成功するなど、地元の若い世代の起業拠点として生まれ変わった。16年には経産省の「はばたく商店街30選」にも選ばれ、全国でも稀な商店街再生例として注目を集める。油津での成功体験を携えて17年4月、木藤氏は出身地の福岡県那珂川町で事業間連携専門官の職に就いた。18年の市制移行をきっかけに「住む町から暮らす町」への転換を図る同町の「切り札」として、活躍が期待されている。

那珂川町事業間連携専門官
(株)油津応援団 専務取締役 木藤 亮太 氏

縦割り行政を横ぐしでつなぐ

 ――事業間連携専門官とは、どのような役割をはたすのでしょうか。

(株)油津応援団 木藤 亮太 専務取締役

 木藤 油津で学んだのは、行政内の連携です。さまざまな部署が連携し合って、事業をより良い方向にしていく。従来の行政って、「縦割り」が基本で、那珂川町も同じです。いざまちづくりを始めようとなっても、複数の部署同士で連携を取り合って仕事を進めることが苦手なんですね。私が那珂川町に提案した仕事は、そういった複数の部署が進める事業を同じ視点や理念でコーディネートすることです。

 事業間に横ぐしを差すことで初めて、役場が一体となって1つの目標に向かうことができます。ここでいう「目標」とは、直近でいえば2018年10月に那珂川町は「市」になりますので、それに向けたさまざまなプロモーションを行う必要があります。さらに、現在動いている複数のまちづくりプロジェクトについても、それぞれが興味深い成果を出しつつあるので、それをもう1歩、いや2歩くらい前に進めたい。担当職員間の橋渡しであったり、違う概念を有機的に結びつける役割がこれから半年くらいの大きな役割だと思います。

 また、役場内だけではなく民間同士、あるいは民間と役場の橋渡しの促進も私に課せられた大きなミッションです。那珂川町にはJR博多南駅という新幹線の駅があり、その駅前に町が所有するビルがうまく活用できていなかったため、ビル再生プロジェクトが進んでいます。そこに民間の発想を入れる必要があります。民間の感覚で動けるチームや法人をつくり、行政とコラボするかたちで事業を進めたい。そうすればスピードアップも図れます。行政主導だと法律や条例のしばりがあって思い切ったこともできませんので、民間の発想で事業を組み立て、それを行政が支援する、自由度の高い体制をつくりたいのです。

(つづく)
【小山田 浩介】

<プロフィール>
木藤 亮太(きとう・りょうた)
1975年生まれ。福岡県那珂川町出身。九州芸術工科大学大学院修了。環境設計を専攻。卒業後は、大学の先輩が創業した(株)エスティ環境設計研究所に14年間勤務、取締役を務める。在職中の実績は、子守唄の里五木の村づくり(08年土木学会デザイン賞優秀賞)、重要文化的景観「蕨野の棚田」、かなたけの里公園、古湯・熊の川温泉など。13年、全国公募で選ばれた日南市油津商店街テナントミックスサポートマネージャーに就任。現在は、(株)油津応援団取締役。

 
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