2024年04月20日( 土 )

不動産市場の主要プレイヤーとなったアパグループ のホテル開発戦略(中)

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アパグループ 代表  元谷  外志雄  氏

逆張りで躍進したアパホテルの軌跡

 ――2010年4月に「SUMMIT5(頂上戦略)」を展開し、東京でトップを取るとの方針を定めましたが、頂上作戦の成功は一体どこにあったのでしょうか。

 元谷 リーマン・ショックにより地価が大きく下落したことで、マンションデベロッパーが仕込んでいた土地を一気に手放しました。それまで都内にアパホテルは6カ所しかありませんでしたが、我々は不動産市況の冷え込みをチャンスと見て、値下がった土地をどんどん購入しました。当時は建築費も安く、ホテル用地の取得にはうってつけのタイミングでした。

 この大量仕入れが成功した要因は、皮肉にも耐震強度不足問題に巻き込まれたことだったのです。我々はホテル建設の発注者であり、耐震性能が不足するホテルを発注するはずがありませんが、マスコミは視聴率稼ぎのため「アパの耐震偽装」と書き立てました。これをきっかけに、金融機関は借入金の返済を求めてきました。それならば、ということで、事業用の土地を売却するなどして借入金を返済していきましたが、ファンドバブルの頂点だったので高く売ることができました。仕入れ時よりも地価は上がっていたので、売却益を確保することができたのです。

 また、バブル崩壊のときと同様に、その売却益をリーマン・ショック後に暴落した土地を仕入れる資金とすることができたのです。このように、何度ものピンチをチャンスに変えることができたことが、今日のアパグループの礎となったのです。

アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉
アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉

 ――東京都23区内では、続々と新たなホテル計画を推進していますが、福岡を始めとしたほかのエリアでの展開はどのように考えていますか。

 元谷 現在、東京都心で営業中のホテルは52ホテル・1万1,775室です(19年5月14日現在)。現在、20ホテル・6,147室を建築・設計中で、これらが開業すれば合計72ホテル・1万7,922室となります。さらに、フランチャイズを含めると80ホテル・1万9,118室の展開です。エリア的には新宿に9棟、赤坂・永田町に6棟(ホテル3棟、オフィス3棟)、日本橋・銀座に21棟、六本木・品川に15棟展開することになります。

 15年4月1日から20年3月までに、客室10万室を目標とする次期中期5カ年計画「SUMMIT 5-Ⅱ(第二次頂上戦略)」に則って大阪、京都、名古屋、広島、福岡など、宿泊需要が多いところにも進出します。資本主義の発展形態は、百花繚乱から寡占化へ、寡占化から独占化へと向かいます。すでに全国最大のホテルネットワークとなり、国内のマーケットシェアは10%弱に達していますが、さらなる寡占化一番乗り、シェア20%一番乗りを目指します。それには、東京はいうまでもなく、宿泊需要が高い大阪や福岡などの拠点戦略が重要となります。

アパホテル〈新宿 歌舞伎町タワー〉
アパホテル〈新宿 歌舞伎町タワー〉

 ――重要拠点の中核都市以外にも、アパホテルはありますね。

 元谷 M&Aによりアパホテルとなったケースもありますが、主にFC契約のホテルです。FC加盟ホテルは全国に52棟・7,287室(19年5月14日現在、建築・設計中を含む)とホテルFCビジネスでも国内ナンバー1で、おかげさまでホテルのオーナーさまからは「FCに加盟して良かった」というお声をいただいております。最近では新築FCの要望も増えています。最初からアパホテルの仕様で設計し、部屋をコンパクトにすることで、より多くの収益が上がりますので、「設計時からアパホテルのノウハウを取り入れたほうが良いですよ」と提案しているのです。

(つづく)
【長井 雄一朗】

<Company Information>
アパグループ

代 表:元谷外志雄
東京本社:東京都港区赤坂3-2-3 アパグループ赤坂見附本社ビル
売上高:(18/11連結)1,339億円
TEL:03-5570-2111
URL:https://www.apa.co.jp

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