2024年04月20日( 土 )

旅館業届け出種別で見る福岡市のホテル市場動向

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増え続けるインバウンド需要

 JNTO(日本政府観光局)が公表している訪日外客統計の集計・発表によると、2018年の訪日外客数は、前年比8.7%増の約3,119万2,000人となった。18年の夏から秋にかけては、日本各地で地震や台風による自然災害の影響により伸び率に鈍化がみられたが、JNTOが統計を取り始めた1964年以降では、過去最多の訪日客数を記録した。

 福岡市が公表している「福岡市の観光・MICE 2019年版(福岡市観光統計)」(以下、福岡市観光統計19年版)によると、福岡空港および博多港からの外国人入国者数は18年にはおよそ309万4,000人を記録。外国人の延べ宿泊数については、14年から17年にかけて、三大都市圏(東京・名古屋・大阪)の伸び率が1.58倍、地方部の伸び率が2.02倍に対し、福岡市の伸び率は2.80倍となっており、全国的に見ても高い伸び率を維持している。

市内宿泊施設の着工状況

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 16年以降で市内に設置された「予定建築物のお知らせ」のうち、宿泊施設に該当する物件概要を集計したところ、19年1月から4月にかけて新たに16件の宿泊施設概要が判明した。19年中に着工を予定している宿泊施設は、全27件となっている。

 前述の福岡市観光統計19年版によると、福岡市におけるホテル・旅館の客室数は、18年で2万8,329室となり、前年から2,807室増加。19年から20年の間には、計47棟の宿泊施設の開業が予定されており、客室数は6,680室増加する見込みだ。

届け出種別で見る宿泊施設の増減傾向

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 19年3月31日時点における福岡市内の宿泊施設は、全725施設。届け出種別で見ると、「ホテル」は全181施設で3施設減少した。減少の要因は、「福岡マリンホテル」(事業者:(株)マリンホテル、福岡市博多区)が19年2月末をもって一旦閉業したことと、同社が運営していた「マリンホテル新館」が、宮崎県内で大型ショッピングセンターのプロパティマネジメントを手がける(株)宮交シティ(宮崎市)に引き継がれ、旅館業の種別が「旅館・ホテル」に変更されたこと。

 また、「シーサイドホテルツインズももち」(福岡市早良区)の事業者が、グループ内の再編にともない(株)医療福祉運営機構(東京都港区)から日本医療サービス(株)(東京都港区)へ替わり、届け出種別も「ホテル」から「旅館・ホテル」に変更したためである。それ以外の変更点としては、「ホテルセントラーザ博多」(事業者:(株)ホテルセントラーザ、福岡市博多区)が19年4月上旬から「オリエンタルホテル福岡 博多ステーション」としてリブランドオープン。

 「ホテルフォルツァ博多」(事業者:(株)エフ・ジェイホテルズ、福岡市博多区)は、施設名称が「ホテルフォルツァ博多駅筑紫口Ⅰ」に変更された。

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 「旅館・ホテル」は全175施設。19年2月1日以降で新たに開業した施設は【Ⅲ】の通り。だが、18年8月14日に営業許可が行われた「BEACONROOM HAKATA S1001」(事業者:(株)ビーコンSTAY、福岡市博多区)は閉業。「収益性が低く、採算性の問題から閉業した」(同社)という。

 「旅館」は全91施設。1981年2月27日に「旅館」で届け出許可を行っていた「鹿島旅館」(福岡市博多区)が、法人化にともない、事業者が吉田ヨネ子氏から(有)鹿島本館(博多区)に、旅館業の届け出も「旅館」から「旅館・ホテル」に変更された。同社によると、氏の死去にともない今回新たに届け出を行ったが、もともと家族で経営していることから、事業そのものに大きな変化はないとのことだった。

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 「簡易宿所」は全278施設。19年2月1日以降、新規で開業した施設は【Ⅳ】の通り。17年11月15日に開業許可が行われた「Chiku-House」(事業者:筑井敬太、福岡市博多区)は、法人化にともない事業主が(株)Walk onに変更。「BEACON ROOM Hakata V402、V1005」(事業者:(株)ビーコンSTAY、福岡市博多区)は、前述の「BEACONROOM HAKATA S1001」と同じく、収益性および採算性の問題から閉業している。

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 【Ⅴ】にあるように市内の宿泊施設を行政区ごとに見ると、宿泊施設が一番多い行政区は博多区の411施設。2位は中央区で234施設。3位は東区で36施設だった。博多区と中央区を合わせた宿泊施設数は645施設となり、市内全体のおよそ88.97%にものぼる。博多区と中央区における宿泊施設の開業は依然として活発であり、市内宿泊施設の増加を牽引している状態である。

【長谷川 大輔】

※データは2019年3月31日時点

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