わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2019年07月18日 15:53

「人口減」の先に待ち受ける、激変時代(3)~身内の死の接近に己の寿命を予感する(後)

 子どもが一人前の人間としての生命機能を身につけるには、長い時間がかかる。そのため両親は必死で育児を行う。ようやく、ひと安心という段階に至るまでには約10年の歳月(小学4年生くらいまで)を要するだろう。老化から死に至るまでと子どもの成長は真逆だが、時間に換算するとだいたい同じぐらいの期間ではある。要は人間=人類として生きるための機能・能力が1つ1つ剥げ落ちて機能不全となり(老衰)、命=生命活動がストップする(死を迎える)のは10~20年なのである。

壮絶で、かつ悲惨な戦い

 前述した義姉夫婦は自宅で闘病生活を送っている。12年の闘病生活=癌の転移との闘いの初期段階では、まだ余裕があった。抗生物質による治療の合間に台湾旅行も楽しむことができた。

 悲劇の始まりは連れ合い(義兄)も癌に侵されていることが判明してからである。以降は治療の合間に自宅に、その後病院に戻るの繰り返しだった。義姉は趣味が多い人なので、気晴らしに刺しゅう制作に没頭した。義兄は将棋6段の腕前。近所の子どもたちに教えることに喜びを感じる日々を送ってきた。

 その後、医師から「自宅のみでの治療」が宣告された。要するに「治療によって回復する可能性はゼロ。自宅で死を迎えなさい」という宣告である。

 もう少し表現を換えてみると「精一杯、癌と共生して寿命を全うしなさい」「癌によって老衰は早まるかもしれないが、自宅で死と向き合いなさい」という意味で、なんとも残酷な宣告である。

 義姉夫婦は認知症など発症しておらず、頭がしっかりしている。少なくとも体が自由なら気分も楽だろう。週に2回、介護師が自宅を訪問し、風呂に入れてくれたり、部屋の掃除、食事の段取りなどをしたりしてくれる。

 義姉夫婦は冷蔵庫にいれてある料理を取り出して質素な食事をするという。最近の電話では「食事する意欲もない」と語っていた。

 この状態では息子たちが介護に苦労する。長男夫婦は手分けして2日に1回帰ってきて介護をする。長男の妻の実家には介護が必要な母がいて、そちらの世話もしているとか。この長男もしっかり介護に精を出しているが、心身の疲労は計り知れない。

 義姉夫婦は「頭がしっかりしている」と前述したが、お互い病床でどういう会話をしているのであろうか!

人間の威厳・尊厳

 次兄は筆者の6歳上=昭和16年生まれであるから「魔の78歳」間近になる。5年前には自分史なるものを作成した。田舎の秀才として九州大学工学部を卒業して三井東圧に入社してエンジニア畑を歩いてきた。イラン・イラク戦争時には技術者として派遣されたこともある。身長は178cmと当時としては長身の部類になる。豪快に酒を飲むことを楽しみにしていた。

 次兄の入院先で1時間立ったまま、容態を見守り続けていた。耳元で「俺がきたぞ!」と大声をあげるが、瞬きこそすれ、はっきりした意識は無そうである。指を握ったり、腕をきつく締めたりしてみても反応が返ってこない。

 脳の手術を2回行ったが、3週間経っても意識の回復には至っていない。伴侶である義姉は午後2時から午後5時まで立ち会う。「夜、1人で悶々とした時間を過ごしているのか」と想像するだけで、こちらも涙がでてしまう。

 次兄の意識不明の姿を直視しながら人間の尊厳・威厳について考えさせられる。口を開け、自ら呼吸を繰り返す光景には種=人間としての生存への執着心があらわれている。

 しかし、意識がない状態の人間をどう表現したら良いのだろうか?通常、睡眠状態の人間は、次の朝には必ず目を覚まし、人間としての活動を開始する。「次兄には回復の可能性があるのか!なければ人間としてどうなるのだ」。

 どうであれ治療は長期戦を余儀なくされるだろう。

故郷へ戻る

 次兄の2歳上である長兄は80歳になる。弟が先に意識不明の状態に陥ったことにショックを受けている。長兄は次兄よりも70代に活動的な生活をしてきたので多少、元気が良い。もちろん、年相応に病気は抱えている。

 長兄は高校の同窓である義姉と結婚し、横浜にマンションを購入して38年になる。いよいよ残りの人生、最後の支度を終えたようだ。

 まず檀家に2人の17年間の法要代(戒名含む)200万円を払った。80歳を超えれば義姉にとって家事労働も負担となる。「高齢者向きのマンションを探して終の棲家とする」と決断した。

 色々と探したが、東京では費用負担が大きく、生まれ故郷・宮崎に居を構えることになった。宮崎は東京に比べ、コストが半分で済むそうだ。

 18歳で大学に入学し、故郷を離れて62年ぶりに戻る。80代を最後に郷土に錦を飾るのか!己の最後の生き様についても最終的な覚悟を迫られる様相を帯びてきた。

(この項了)

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