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自転車は交通インフラであり続けられるか?(前)
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2019年07月19日 07:00

自転車は交通インフラであり続けられるか?(前)

 自転車は、古くて新しい乗り物だ。日本全体の自転車保有台数は7,000万台を超えるといわれ、気軽に乗れる「日常の足」として、老若男女問わず、多くのユーザーがいる。とりわけ、博多や天神などの都心部では、自動車に代わる“シティーコミューター”として、重宝されている。環境に優しく、経済的で、運動にもなる―と良いことずくめに思える自転車だが、負の側面もある。

 福岡県警によれば、2018年に福岡市内で1,859件の自転車関連事故が発生。4名の死者数を出している。そのうち自転車の法令違反による事故は186件を占める。悪質な道路交通法違反による検挙数は363件に上る。これらの数字は年々減少傾向にあるが、自転車運転マナーが向上した結果かといえば、必ずしもそうではない。福岡市のアンケートによれば、市民の約76%が「自転車運転マナーが悪い」と回答しているからだ。自転車は、運転免許が不要なため、車両(軽車両)であるという意識が希薄で、歩行者感覚で通行しがちだ。福岡市の自転車交通をめぐるルール、運用はどうなっているのか。現状や問題点などを検証した。

福岡県警による自転車運転に関する街頭啓発の様子

悪質運転約82%が福岡市内で検挙

 2018年の福岡県全体の自転車関連事故数は4,383件で、そのうち自転車運転者の法令違反に起因する事故は887件。福岡市内では、全体の約42%を占める1,859件の自転車関連事故のうち、法令違反は186件。道路交通法違反による検挙件数(赤キップ)は県全体で444件、そのうち福岡市内での検挙数は363件と全体の約82%を占める。

 検挙理由には、ブレーキなし(いわゆるピスト自転車)、信号無視、傘差し運転、通行区分違反などがあり、通行区分違反とは、歩行者が優先される歩道を通行中、歩行者に危険を与えた場合などを指す。

 福岡県警による自転車の道交法違反の検挙は、ブレーキなしや踏切侵入など重大な違反を除き、「警告主義」に基づく運用が原則だ。目的は検挙ではなく、あくまで是正。運転免許が必要な自動車の違反検挙とは、考え方や手続きがかなり異なる。

 たとえば、街中で警官から「信号無視はやめなさい」「傘差し運転はダメよ」などと注意された場合、すぐにやめれば、警告書は渡されるが、即キップを切られることはない。しかし、注意を無視して走り去ろうとしたら、「悪質だ」と判断され、追跡捕捉されて赤キップを切られることになる。「警告を受ければ、たいがいの人はやめる」(福岡県警担当者)ので、赤キップは、例外的にかなり悪質な運転者ということになる。警察の取り締まりから逃走し、逮捕された事例もある。

 とはいえ、自転車で赤キップを切られても、運転免許の点数を引かれたり、自転車に乗れなくなることはない。だが、3年以内に2回以上摘発されると、自転車運転者講習の受講命令を受け、受講しない場合は5万円以下の罰金になる。

 福岡市内の自転車事故多発スポットは、交差点周辺に集中している。警固、薬院駅前がとくに多く、南警察署入口、清水四ツ角、高砂2丁目などが続く。博多、天神、中洲周辺には突出した事故発生スポットはないが、中程度の頻度の事故が面的に広がっている状況だ。ホットスポットの1つである警固交差点周辺は、朝晩の通勤通学時に多くの自転車が集中することから、事故の発生率が高いと見られる。

福岡市内での自転車事故発生「ホットスポット」の1つ警固交差点

 福岡市内で発生した事故当事者を年代別で見ると、高校生を含む10代が453件と最も多く、20代の407件、30代の363件と続く。若者世代の事故件数が多いのは自転車に限ったことではないが、運転免許取得者が少ない10代は、総じて「自転車が車両であるという意識が希薄」(福岡市市民局担当者)なため、事故に巻き込まれやすい傾向がある。

 福岡市は13年4月、「福岡市自転車の安全利用に関する条例」を施行した。政令市では京都市についで2例目で、九州では初。自転車の安全運転やマナーなどについて、市を始め、自転車利用者やその保護者、販売店、学校長の責務などを定めている。市では条例施行に際し、条例施行前に3,112件(12年)だった市内での自転車関連事故の発生件数について、16年度に策定した「第10次福岡市交通安全計画」のなかで、20年までに「2,100件以下」に減少させるという目標を設定。「定量的な数値目標は達成できている」(同)という。

 マナーについては、現場のモラル・マナー推進員への聞き取りなどから、「かなり改善してきている」(同)と評価している。ただ、17年度に市民にアンケート調査を行ったところ、「自転車のマナーが悪い」と回答した市民が約76%に上った。そもそもマナーの良し悪しを判断する客観的な基準など存在しないのだが、少なくとも、多くの市民にとっては「まだまだ」という段階のようだ。

(つづく)
【大石 恭正】

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