2024年03月19日( 火 )

【夏期集中連載】金融機関を取り巻く現状(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

■プライドを捨てて生き残り策に奔走

 7月10日、横浜銀行と千葉銀行が「業務提携で合意した」との発表があり、業界にインパクトを与えた。いまや銀行同士の業務提携(アライアンス)はとくに珍しくもないが、地銀の総資産で1位(横浜銀)と3位(千葉銀)の銀行の提携だけに与えた衝撃は大きかった。東京を挟んで、時にはライバル同士ともとられる地銀の両雄ですら「助け合わなければ生き残れない時代」になったのか……。

 「アライアンスによるシナジー効果を狙う」。金融機関の提携ではよく聞く謳い文句だが、要は「自前では解決できないので他所の力を借ります」ということ。プライドの高かった日本の銀行が、なりふり構わない生き残り策に走り始めた。

 一部業務の提携、勘定系システムの共通化など、潮流は銀行の合従連衡の時代だ。中には営業区域の離れた銀行同士のアライアンスも目に付く。これがさらに進み、持株会社化や統合へと道が続いていく場合もある。

 日銀の試算で「地銀の6割が10年後には最終赤字」といわれる時代であり、うかうかしていると破綻の憂き目に遭いかねない。むしろ「(統合に)早めに動き、イニシアティブをとった方が、後のことを見据えれば有利になる」と話す金融機関幹部もいる。

 国もそれを後押ししている。当初、公正取引委員会が「待った」をかけたふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行(長崎)の経営統合は、一定規模の債権譲渡を条件に承認されることとなった。以前なら同一営業区域(ふくおかFG傘下の親和銀行は長崎県佐世保が地盤)同士の銀行の統合など考えられないことだったが、「特例的」に認められた。4月に開催された政府の未来投資会議でも、「地銀の業績悪化による仲介機能不全を避けるためには(独占禁止法の特例も)やむなし」との議論が出ている。

■地元金融機関の動向を注視すべし!

 地域金融機関の統合・集約化の波は地銀を筆頭に信用金庫や信用組合にも及ぶ。それは大なり小なり職員、借り手、預金者にストレスを与えことになるだろう。それでも、もはや不可避な状況だ。

 店舗統廃合で職員はリストラの恐怖におびえるかもしれない。現場で急速に導入が進んでいるAI(人工知能)やロボットアドバイザーのスキルを上げることも生き残る方策の1つだ。「管理職はITリテラシーが足りない。文系出身の部門長なら、プログラムの内容までわからなくてもいいから、せめてどういうシステムを構築しているかぐらいの知識はもってほしい」と専門家はアドバイスしている。

 一方、株主や顧客、預金者、さらにはライバル社や行政機関など、広範なステークスホルダーはどうするか。地元の金融機関の動向を絶え間なく注視し続けていく必要があるだろう。そして来るべき「その時」のための備えを怠らないことだ。地域金融機関は地域の重要なインフラであり、ある種のライフラインでもある。その大きな変動の時期は、もうすぐそこまで来ている。

(了)
【渋谷 良明】

(中)

関連記事