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2019年08月12日 07:00

『盛和塾』稲盛塾長、最後の講演(6)

 二代目、三代目になると、意思伝達するのにきついことを言ったら逃げられはしないか、反発されはしないだろうかと、どうしても遠慮しがちになります。

 そうすると、フィロソフィを語るにしても格好よくしようと思うものですから、ますます意思伝達が難しくなります。私の場合には、そのようなことを気にすることなく、はっきりというべきことをいうことができました。

 それは、常日ごろから自分が誰よりもフィロソフィを実践しようと努めているという自負があったからですが、従業員のために社長が誰よりも苦労している姿ほど、共感を得るものはありません。ですから、会社のなかで経営トップが一番苦労しなければなりません。そうすれば、必ず従業員はついてきてくれるものです。

 常日ごろから、誰よりも率先垂範、フィロソフィの実践に努め、尊敬されるような行動を続けているからこそ、従業員は納得して、その言葉を聞いてくれます。

 従業員も、日頃から経営者の率先垂範する姿を見ていればこそ、嘘偽りのないその言葉を信じて、フィロソフィの実践に向けて自らを鼓舞することができるはずです。

 第三に、フィロソフィを説く経営者は、従業員と本音で語り合うことに努めなければなりません。

 経営者がフィロソフィの力を信じ、率先垂範していたとして、「それはあくまできれいごとだ」として、斜に構えて見ている従業員もいます。そのように斜に構えた従業員とは、本音で語り合うことが必要です。

 彼らが心に思っていることを放置していれば、ますます不満をためていきますし、周囲に悪影響をおよぼし、会社内のフィロソフィ共有にとってもマイナスに作用します。

 では、具体的にどのようにして本音で語り合うことができるのでしょうか。

 仕事を通じて、互いに本音で語り合えるのであれば、それに越したことはありませんが、私の場合には、コンパの場を活用しました。意思伝達をしようと思っても、杓子定規で、かしこまって話をしたのでは、誰も聞いてくれません。聞いていたとしても、右から左に抜けてしまいます。

 お酒でも酌み交わしながら、人の心の琴線に触れるような話し方をしなければ聞いてくれません。だから、私は昔からコンパをコミュニケーションの最大の手段として使ってきました。

 京セラでも、まだ会社の規模が小さかったころまでは、私がコンパに出ていって、直接コミュニケーションをとっていました。

 その最大のイベントが忘年会でした。従業員が1,000人近くになっていたころのことでしょうか。どの職場でも忘年会を開催するわけですが、そのすべてに私が出席しました。12月は1日も休まずに忘年会に出席したこともあります。それぞれ、50人くらいの規模ですが、全部の忘年会に出席して、「頼むぞ」と言葉をかけ、酒をついで回りました。

 また、熱く夢を語ったものです。

 そうすると、不信感をもっている従業員は「はあ、そうですか」という冷たい反応で、すぐにわかります。

 「おまえ、何か不満があるのか」と聞いても、はじめは「いや、何でもありません」というだけです。

 しかし、さらにつつくと、腹に一物ある従業員に限って、必ず不満を言い始めます。聞いてみると、こちらの気配りが足りないために不満をもたせているケースもありますが、8割ぐらいは本人がひねくれていて逆恨みをしているようなケースです。

 ですから、「ちょっと待て。だいたい、おまえの人間性はねじれてはおらんか」とズバリいうわけです。先ほどまでは、「まあ、頑張れよ」と言っていたのに、今度は突然、「コラッ!おまえ」と取っ捕まえて、説教を始めるわけです。そのようなことから、雨降って地固まるというように、一気に人間関係が強固になることもありました。

 相手がそういう心情を吐露したのも、一杯飲んで本音が出たからです。誰が何を思っているのか、どのような不満をもっているか、あるいは、どんな悩みを抱えているか、そのような本音が出る場であればこそ、真のコミュニケーションが図れるわけです。

(つづく)

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