• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年08月20日 07:00

HIS、ユニゾHDの敵対的買収に発展~それぞれが抱える表に出せない裏事情(中)

ユニゾHDの小崎社長は「みずほのラスプーチン」と呼ばれた人物

 ユニゾHDの小崎哲資社長は、知る人ぞ知るメガバンク業界の有名人だ。東大法学部を卒業し、旧日本興業銀行に入行。故西村正雄・興銀頭取の信を得て、1999年の富士銀行、第一勧業銀行の3行統合の際に、旧興銀側の実務責任者として統合を推進した人物だ。

 統合会社みずほHDが、2兆円以上の公的資金に対する配当の原資が枯渇する事態に直面した際、みずほHDの親会社としてみずほフィナンシャルグループ(FG)を設立、持株会社を重ねるという「二重持株会社」方式を考案した。

 2003年には不良債権の増大で自己資本比率が8%割れ寸前になり、一時国有化の危機に直面したみずほFGを取引先3500社を引受先とする1兆円増資で救った最大の功労者だ。

 2度にわたる離れ業で、みずほを窮地から脱出させた手腕を買われ、2004年、小崎氏は取締役に就任。みずほFGの最高実力者となった前田晃伸(旧・富士銀出身)FG会長の懐刀として辣腕を振るった。

 「オレは“I(旧・興銀)派”じやない、“M(前田)派”だ」と豪語し、その権勢ぶりから「みずほのラスプーチン」の異名が付いた。ロシア帝国末期に、「影の皇帝」と呼ばれた怪僧ラスプーチンになぞらえたものだ。

 2009年、みずほFGは新経営体制が発足した。持株会社みずほFGと、傘下の銀行、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の3トップは一斉に交代。そのシナリオを描いたとされる小崎氏はFG副社長に就任。次期FG社長に王手をかけた。

 だが、事態は暗転する。会長に退いたとはいえ、3トップは実権を手離さなかった。みずほグループは経営トップが6人もいる肥大した組織となった。金融庁は「トップが6人もいては誰が意思決定権者かわからない」と圧力をかけた。

 2010年6月、旧3行を率いてきた前田晃伸氏ら3会長は辞任に追い込まれた。同時に、権勢を誇ってきた小崎哲資副社長も退任、旧興銀系のビル賃貸業、常和ホールディングス(現・ユニゾHD)社長に転出した。「ラスプーチンの粛清」として当時、大きな話題になった。

 みずほは、小崎氏と興銀に76年同期入行の佐藤康博氏が、金融庁と組んで“ワンみずほ”、つまり「興銀一強体制」を築くことになる。

ユニゾHDは「脱みずほ」に舵を切る

 みずほを追放された小崎氏は、「脱みずほ」に舵を切る。小崎氏の得意技はみずほ救済で辣腕を振るった増資策だ。ユニゾHDは18年5月までに過去5年で4回の公募増資を実施。みずほグループの持ち株比率を薄めてきた。

 公募増資の結果、外国人の比率は19年3月期末で17.2%と、14年3月末の8.9%からほぼ2倍。個人投資家は同期間に9.2%から28.2%と3倍となった。「脱みずほを進める小崎氏に、みずほが立腹している」という不仲ぶりが外部に漏れ伝わってきた。

 HISは株主構成の変化に着目した。外国人投資家や個人投資家は、相次ぐ公募増資で株価が低迷していることに不満が強い。条件次第では、TOBに応じる。TOB価格に56%のプレミアムをつけた。ユニゾHDの小崎社長と仲違いしているみずほが動かないという読みもあった。

 しかし、みずほ系の不動産会社を、みすみすHISに渡すわけにはいかない。

 株式市場では、「同じみずほ系の日鉄興和不動産やヒューリックなどをホワイトナイトに仕立て、対抗TOBを仕掛けてくるのでは」といった観測が流れている。

 HISの澤田会長の野望を封じ込めるのと同時に、みずほに牙を剥く、ユニゾHDの小崎社長も追い落す「串刺し作戦」である。希代の策士である小崎氏が黙って引き下がるとは思えない。どんな奇策に出るか。今後の見どころだ。

(つづく)
【森村 和男】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年10月20日 07:00

疾病リスク低減表示拡大と公正競争規約はトクホの救世主となるのか?(1)NEW!

 2015年4月1日に誕生した機能性表示食品制度は、それまでの「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」の行政主導の動きから、官邸主導の決定となり、食品の機能性表...

2019年10月20日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(4)NEW!

 関電の取締役会は機能不全となってしまった。かかる場合、虞犯取締役は辞任する他なく、また、関電は直ちに仮役員の選任を裁判所に申請し、適法な取締役で構成された取締役会に...

2019年10月19日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(3)

 関電の前号のような事情・実態もあってか、竹中平蔵氏が語っているように、政府高官の子弟が多く電力会社に就職している実態がある。竹中氏は遠慮しているので凡学一生の体験を...

2019年10月19日 07:00

癒しを求めて 全国から経営者が来院(後)

 慢性疲労には、水素も効果的です。大学病院の研究では、水素ガスの吸引は、ストレスや慢性疲労には極めて効果があることがわかりました。疲れが溜まっていくと、細胞内のミトコ...

2019年10月18日 17:59

「私たちにも何かできることがあるはず」~台風19号により氾濫した多摩川を取材して

 多摩川駅から歩いて約5分先の川沿いを歩いた。本格的な夏も終わり、コンクリートで固められた堤防というのに、上流から流されてきた大木や草木によって、現場では生草と粘土の...

2019年10月18日 17:49

日本初上陸の王室ご用達のスペイン料理店「ホセ・ルイス」出店~カトープレジャーグループがスペイン大使館で事業戦略発表会を開催

 (株)カトープレジャーグループは11月1日、日本初上陸のスペイン王室ご用達レストラン「ホセ・ルイス」を、東京・渋谷に出店。10月16日には、駐日スペイン大使館(東京...

2019年10月18日 16:57

ホークス、台風19号の被災地に義援金

 福岡ソフトバンクホークス(株)と福岡ソフトバンクホークス選手会(会長:柳田悠岐選手)は台風19号の被災地支援として義援金200万円の寄付とヤフオクドームに募金箱を設...

2019年10月18日 16:19

健康長寿の産業化で医療コスト削減を目指す

 国の財政問題がさまざまに語られるなか、中心となるのは高齢化の進行と、それにともなう医療費の高騰や経済活動の減退だ。これらの対策として医療費を削減するとともに、経済活...

2019年10月18日 16:10

次世代通信技術“5G”の持つ危険性(後編)

 欧米の研究者の間で進められている5Gの健康への影響に関する調査の一部を紹介してみたい。日本での議論の呼び水になれば幸いである。先ずはイスラエルのアリエル大学で物理学...

2019年10月18日 16:10

種子の自家採取原則禁止、疑念払拭できず 種苗法めぐり農水省(前)

 農家による種子の自家採取を原則認める種苗法が改正される恐れが生じるなか、日本の種子(たね)を守る会(会長・八木岡努JA水戸代表理事組合長)が15日、参議院議員会館内...

pagetop