2024年03月19日( 火 )

『脊振の自然に魅せられて』「夏だ! 沢登りの季節がやってきた」

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野河内渓谷で最も美しい滝(2007年撮影)

 今年の夏は例年より暑さを感じます(加齢のせいもあり)。こんな時期の山旅は沢に限ります。

 福岡市早良区飯場に福岡市で唯一の大型渓谷「野河内渓谷」があります。この渓谷は井原山直下の水無鍾乳洞に源を発しています。水無鍾乳洞周辺から上部は西日本最大のオオキツネノカミソリの群生地があり、7月末から8月上旬まで黄色い花を一斉に咲かせます。

 すばらしい自然に囲まれた水無鍾乳洞から湧き出る水を源にもつのが野河内渓谷です。渓谷入り口から遊歩道が700mほど続き、3kmほど変化に富む渓谷が続きます。

 例年は7月末から沢登りに入りますが、今年は脊振山直下の膨大な不法投棄ゴミの処理が終わるまでスケジュールを保留していました。大量のゴミは7月31日に総勢18名で処理し、いよいよ沢行きです。

 脊振の自然を愛する会のメンバーと、環境省福岡事務所のOさんにも「福岡を楽しんでください、沢へ行きましょう」と声をかけました。Oさんは第1回脊振サミットの新聞記事を見て来場し、それ以来の付き合いで、脊振の自然を愛する会にも入会していただきました。

 参加者は沢のベテラン=脊振の自然を愛する会副代表のT、会員のNとOさん、私と4名の予定でした。しかし、前日にNから「真夏のテニスで熱中症になったので自重します」とのメールが入りました。賑やかなNは「テニスで腰を痛めた」「便秘でひどく力んで腰を痛めた」など身体的なトラブルを抱える人でもあります。久しぶりの参加なので楽しみにしていましたが「お大事に」という旨のメールを返信しました。

 いつも参加するワンゲルの後輩たちは北アルプス行きで不参加。当日は私を含め3人のみの参加となりました。

8月10日(土)

 野河内渓谷無料駐車場に午前9時に着くとすでに渓谷遊びにきている車が4台ほど停まっていました。この駐車場は私が提案し、7年ほど前に早良区役所が用意した無料駐車場なので、利用者が増えてきて「よかった」と安堵しました。

 駐車場に到着そうそう、入渓の準備をします。初心者のOさんには安全確保のため沢用のハーネスを装備、そして沢靴を履き準備完了。車のキーもビニールに包んでザックに入れます。

 渓谷の入り口で家族連れの子どもたちが水遊びを楽しんでいました。それを横目に渓谷に入り、冷たい水の感触を楽しみながら上流へと向かいます。

 沢登りは渓谷の上流へと向かって登って行く山の楽しみ方です。遡行と書きます。

 入渓入り口から700mほど遊歩道が続いています。遊歩道直下の急流を水の感触をたしかめながら上部へと進みます。水流が激しい大小の滝があった場合、滝を避け、遊歩道に上がれば危険ではありません。

 今回は最後尾から2人が水に挑む姿を防水カメラで撮影しながら進みました。ベテランTは足が届かない深い20mほどのゴルジュ(狭い岩で挟まれた場所)を泳いで岩場にたどり着いていました。そして彼に続く私とOさんの様子を楽しそうに眺めていました。私もチャンレンジしましたが、今回は撮影もあり、途中であきらめ、岩をよじ登って遊歩道へ出ました。

ゴルジュを泳ぐ
赤いヘルメットがリーダーのT(2007年撮影)

 渓谷を半分きたところに幅20m、落差15mのきれいな滝があります。水が横一面に広がって流れ落ち散る姿は眺めていても飽きないことなく、とても美しい滝です。

 水量によって美しさは変化しますが、今年は水量も多くきれいでした。私のお気に入りの場所です。

 滝の直下まで近づき、滝のしぶきを浴びながら撮影を続け、満足してこの場を離れました。

 初心者のOさんを同行させており、落下の危険があるため、滝を避け、崖をよじ登り高巻きしました。Oさんも彼に続きます。Oさんの足取りを見ると敏捷性があり、高巻きも大丈夫だと判断し、彼の後尾につき滝の上部に出ました。崖に生えている樹木の枝を通して先ほどの滝が見え、白い水流がきれいでした。

 落差30mの大滝にたどり着き、ここで休憩を取ります。風に吹かれた滝のしぶきが我々を歓迎してくれます。幅の狭い滝は水流が激しく、下から見上げる滝の勢いは圧巻です。この場所は陽あたりが良いので毎年、休憩ポイントにしています。水無鍾乳洞から湧き出る水が冷たく、日光が恋しい時もあります。

 震える体に太陽の温もりを受け、休憩を取るのは至福のひとときです。行動食のアンパンと暖かいコーヒーをOさんに差し出します。

 暖かいコーヒーが体を温めてくれます。リーダーのTは30年も愛用している沢用のザックから食料パックを取り出し、いつもの行動食を頬張っていました。Tのザックは機能的な収納をしています。Tは脊振の自然を愛する会の副代表で、かつワンゲルの1年先輩で、こと山に関してはスキルと知識が豊富で、頼れるリーダーです。

 休憩も終わり大滝を高巻きして、最後の滝に出ます。ここを巻けば渓谷は緩い小川へと変化して2kmほど水無鍾乳洞へと続いています。膝下の流れを上流へと進み、適当な所から渓谷と並行している林道へと藪漕ぎをして上がり、林道を降り、渓谷の入り口へと向かいました。

 そして駐車場で装備を外し、帰宅の準備をしました。初めて経験するOさんも満足そうでした。

 濡れた体が夏の日差で温まってきます。今年も沢登りを満喫できた3時間でした。 

2019年8月16日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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