2024年04月27日( 土 )

天王洲をブランディング 倉庫街からアート街へ(後)

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寺田倉庫(株) 執行役員・不動産担当 田嶋 拓也 氏

(C)Tennoz Art Festival 2019 photo/Shin Hamada

 ――寺田倉庫の知名度も上がりましたね。

 田嶋 横浜美術大学と提携して美術品修復の寄付講座を開催するほか、日本一のアート見本市「アートフェア東京」や若手アーティスト向けアワードのスポンサー実績もあります。さらに事業も保管から、輸配送・展示、修復、レンタルアトリエスペースやギャラリー向け賃貸スペースの提供など、アートにまつわる複合的なサービスを展開しています。また、意外に思われるかもしれませんが、貴重な映像や音声のマスターテープ保管も弊社のメディア事業で行っています。

ミュージアム設立で建築模型の流出防ぐ

建築倉庫ミュージアム 建築模型

 ――建築模型の展示により、建築文化の情報発信も強化されていますね。

 田嶋 今年6月まで代表を務めていた中野前代表は、「水辺とアート」というコンテンツで倉庫や建物をブランディングしていこうという意向をもっていました。中野前代表は、隈研吾氏を始めとする著名建築家の方々との交流があり、建築模型はアートとして海外での評価が高いものの、それゆえに日本から流出している現状を知ったそうです。

 このままいくと日本にとって損失になるという理由から、建築模型を保管しながら展示するという国内唯一のコンセプトである「建築倉庫ミュージアム」を設立したという経緯があります。ここにしかない建築模型も多く、建築を学んでいる学生も熱心に観察されています。最近は同時に2つの企画展を行い、いつ来館しても楽しんでいただけるよう工夫を凝らしています。

 ――まち全体でアートを楽しめるイベントも多く手がけていますね。苦労した点はございますか。

 田嶋 壁画の展示には現在、地元、品川区、東京都の了承と合意が必要であり、トータル6カ月間の期間を要します。当たり前といえば当たり前ですが、手続きをきちんと踏んだうえで壁画アートを楽しんでいただくような工夫が必要です。この点は、毎回苦労しますね。

 私は、天王洲・キャナルサイド活性化協会理事も兼務しており、天王洲の水辺の魅力とアートがコラボすることで、魅力ある水辺空間を実現しようと活動しております。その一環として、毎年4回開催する「天王洲キャナルフェス」では、運河をめぐる“ライブ・ナイトクルーズ”を始め、水辺のビル壁面への映画投影、ライブパフォーマンスなどを行っています。

 その天王洲・キャナルサイド活性化協会も参画している「天王洲地区景観まちづくり研究会」では景観ルールを検討しており、このルールが正式に策定されれば、壁画作成も地元の合意を得ることで手続きが簡素化される可能性があります。そのスキームをつくることできれば、スムーズに地元の方々との合意も得られますし、結果として皆さまが壁画を楽しめるような街にしたいですね。建物をスクラップアンドビルドするだけではなく、周辺の環境に投資して、天王洲地区全体の価値を上げていけるよう取り組んでいます。

壁画制作の様子
三信倉庫に描かれたアート壁画
(C)Tennoz Art Festival 2019 photo/Shin Hamada

(了)
【長井 雄一朗】

<Company Information>
代表取締役社長CEO:寺田 航平
所在地:東京都品川区東品川2-6-10
設 立:1950年10月
URL:https://www.terrada.co.jp/ja

▼関連リンク
天王洲水辺のまちづくり アートを感じる街並みの歴史(前)

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