• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年09月30日 16:52

続・鹿児島の歴史(1)~神話・熊襲について~

 以前、島津氏を中心とした鹿児島の歴史について10回、奄美・トカラについて7回のシリーズで述べました。今回は、前2シリーズではふれなかった内容や、古代、流人、文化面、西郷・大久保以後の政治家・軍人等について述べます。

 まず、神話について。いろいろな神話がありますが、代表的なものとして日向(鹿児島も含む)への天孫降臨神話があります。天照大神の孫のホノニニギが日向に降臨し、その曾孫のイワレヒコが東征し、大和地方で神武天皇として即位するというものです。4世紀、近畿に起こった大和朝廷が、なぜ朝廷誕生の神話を日向とする必要があるのでしょうか。神話は8世紀初頭につくられた古事記・日本書紀に出てきます。8世紀初頭につくられた物語ということになりますが、神話は当時の政治状況を反映したものと考えられます。たとえば、天照大神(祖母)が孫のホノニニギを降臨させるのも、祖母の持統天皇から孫の文武天皇へ、祖母の元明天皇から孫の聖武天皇への皇位継承(ともに子は早死)を正当化させるものといわれています。当時皇位継承は、親‐子‐孫ではなく、兄‐弟の継承が一般的でした。8世紀初頭といえば、南九州では、隼人が大和朝廷に抵抗し、最後の大規模な反乱をおこした時期(後述)です。天孫降臨の地は、大和朝廷と隼人の中間の地ともいえます。大和朝廷が隼人を支配下におくための神話とも考えられます。ホノニニギの子である山幸彦と海幸彦の神話についても、山幸彦が大和朝廷につながり、海幸彦の子孫である隼人が天皇の守護人となる理由を説明したものといわれています。

 神話で、現在も鹿児島の地名に残るものとして、ホノニニギが向かうカササ(笠沙)、ホノニニギと結婚するアタツヒメ(阿多)、イワレヒコと結婚するアヒラツヒメ(吾平・姶良)等があります。

 神話と関連して、鹿児島には可愛之(えの)山陵・高屋山上陵・吾平(あいら)山上陵の3山陵があります。それぞれホノニニギ・ヒコホホデミ・ウガヤフキアヘズが葬られていますが、山陵の治定は明治7年です。以前は日向を中心とする南九州各地にありましたが、3山陵とも鹿児島県内に決定しました。明治政府(特に教部省)の中心にいた鹿児島出身者の存在が影響したと考えられます。

 次に熊襲です。熊襲については、はっきりしないことが多く、「猛(たけ)き」性質をあらわす「クマ」と「ソ」という地域名という考え(本居宣長「古事記伝」)や、「クマ」は肥後南部の球磨地方で「ソ」は大隅の「曽於」という考え(津田左右吉)もあります。景行天皇やその子の日本武尊(やまとたけるのみこと)のクマソ討伐が中心で、クマソという言葉は隼人よりも早く用いられたようですが、天皇の遠隔地への巡幸という歴史的事実や地名などから、7世紀後期の状況を反映しているといわれています。
 なお、「鹿児島」の初見は、続日本紀764年の「麑島信尓村(かごしまのしにむら)」です。信尓村は行政単位ではなく、自然村落としての集落です。

(つづく)

<プロフィール>
 1957年生。鹿児島大学教育学部卒、兵庫教育大学大学院修士課程社会系コース修了。元公立小学校長。著書に『奄美の歴史入門』(2011)『谷山の歴史入門』(2014)『鹿児島市の歴史入門』(2016 以上、南方新社)。監修・共著に『都道府県別日本の地理データマップ〈第3版〉九州・沖縄地方7』(2017 小峰書店)。ほか「たけしの新世界七不思議大百科 古代文明ミステリー」(テレビ東京 2017.1.13放送)で、谷山の秀頼伝説の解説などに携わる。

▼関連リンク
鹿児島の歴史
奄美・トカラの歴史

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年09月21日 07:00

BIS第170回例会~ワシントンDC、ローマを結ぶオンライン開催(8)

 井出氏は、新型コロナウイルス感染拡大で世界が求められていることは(1)感染経路の究明、(2)感染防止のための諸国民の努力、(3)専門家、医療関係者への期待・要請...

2020年09月21日 07:00

ご縁と絆を大切にして、堅実な事業を構築し続ける

 (株)隆工務店は1965年1月創業、67年7月設立の建設会社だ。現代表取締役・田原昇氏は、長年“番頭”として先代を陰で支え続け、2016年7月に3代目の同社代表取締...

2020年09月20日 07:00

実直・謙虚な姿勢で快適さを提供する

 創業64年の社歴をもつ地場有数の老舗である山本設備工業(株)。地場業界のなかでも老舗に入る企業を率いるのは、3代目代表取締役社長・山本慎一氏。今年で就任15年目に入...

2020年09月20日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】香港で起きていること~国家統治の基本となる三権分立(後)

 上述の9月1日付『産経新聞』の記事では、香港政府は高校教科書から「三権分立」の記述を削除させた、と最後に小さく記述されていた...

2020年09月19日 07:00

WITHコロナで柔軟対応戦略を展開

 「コロナ襲来でこんなに社会活動が規制されることを想像したこともなかった」と諸藤敏一社長が溜息をつく。しかし、立ち止まることはない...

2020年09月19日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】香港で起きていること~国家統治の基本となる三権分立(前)

 国の政治状況には、騒乱期と安定期がある。騒乱期には政治的争点は直ちに露見され、騒乱を激化させる。一方で、安定期には本来であれば政治的争点となる「不都合な真実」を支配...

2020年09月18日 17:48

【9/18~30】カイタックスクエアガーデンがスイーツなどのポップアップショップをオープン 新たなカルチャー発信を目指す

 「カイタックスクエアガーデン」は本日から、ポップアップショップやプロモーション拠点などとして利用できる「ワスクポケットショップ」をオープンさせた。

2020年09月18日 17:22

小田孔明選手らが豪雨被災地に義援金~復興への願い込めアスリートが数百点のグッズを無償提供

 九州出身のプロゴルファーの小田孔明選手らは、7月の豪雨で甚大な被害を受けた九州の3都市(福岡県大牟田市、熊本県人吉市、鹿児島県鹿屋市)に義援金を届けた。被災地が悲惨...

2020年09月18日 17:15

【書評】岡田勢聿の『自立論』~自らのチカラで生き抜く思考法

 青少年の自立支援を行う(一社)自立研究会は、コロナ禍で安定雇用の崩壊が深刻化するなか、いかにして自らのチカラで生き抜くのかということを主題にして、実業家・岡田勢聿氏...

2020年09月18日 17:07

医者の診断を断って、AI診断へ切り替えよう

 肺がんに罹患している友人A氏の証言を紹介しよう...

pagetop