2024年04月19日( 金 )

時流を読んだマンション事業からの脱却 社員一丸で“挑戦者”として次なる展開を(4)

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 ――そうした社員が育ってきたことで、時代の流れに柔軟に対応できるのですね。

 石原 先ほどの蓄電池にしても、決して未来永劫続くようなビジネスモデルではないと思いますが、たまたま弊社が太陽光をやっていたおかげで、こうした発想が生まれてきました。そして蓄電池事業がある程度かたちになってくれば、今度はまた別のアイデアが生まれてくるのではないかと思っています。

 結局、「家」というものは、さまざまな要素とつながっています。当初は別事業と考えていた太陽光も、最終的には家に関係してきますし、浄水器だって家に取り付けるものです。規模の大小や、取り扱う商材の違いなどはありますが、同じ枠組みのなかで、新たなビジネスをいろいろと増やしていけるのではないでしょうか。

 そして、これまでは住環境だけにこだわってきたのですが、個人的には、それ以外の環境にもチャレンジしたいなと考えています。

 たとえば、ひょっとすると世の中の流れに逆行しているものかもしれませんが、現在、「スモークポイント」という喫煙ブースの販売を行っています。たとえば健康増進法の改正により、飲食店などでは来年4月から全面禁煙が義務付けられるなど、社会全体で分煙化の取り組みが広がっています。どうしてもタバコを吸わせたい場合は、喫煙ブースや喫煙所の設置を行わなければならないのですが、その喫煙ブースの販売をしています。

ダクト工事が必要な禁煙ブース「スモークポイント」
ダクト工事が不必要な喫煙ブース「スモークポイント」

 通常の喫煙所などは換気扇などが必要ですが、この「スモークポイント」はダクト工事が不要なことに加え、ガラスで囲まれたデザインが何ともスタイリッシュです。ブース内で吸っても煙が吸引されるので、衣服や髪の毛にも臭いが残りませんし、フィルターが3層式になっていて、タバコの煙もきれいな空気にして室内に循環させます。もちろん厚生労働省の分煙対策のガイドラインはクリアしているものです。これを飲食店だけでなく、ホテルやオフィスなどもターゲットに、販売を進めていきたいと考えています。

 ――最後に、今後のご自身の役割について、抱負をお聞かせください。

 石原 1つは、社内的な団結を再構築していくことが挙げられます。というのも現在、弊社の事業構成が多岐にわたったことの弊害として、以前に比べると社内的な団結や一体感などが薄れてきているのを感じます。以前の弊社は、社員が一丸となって皆でマンションを売っていましたので、マンションが売れれば社員全員で喜び、逆に売れなかったら全員で悔しがるといったような、そうした一体感が会社のなかにありました。

 ところが今は組織が縦割りになってしまったことで、マンションが売れても「私には関係ないし」とか、戸建が売れても「俺たちには関係ないし」など、他事業部への関心が薄れている状況も生まれつつあります。そこは多事業展開の弊害だと感じていますが、それではシナジー効果は生まれませんので、自分の代でもう一度、社内全体の一体感や団結をつくり上げていきたいと思います。

 もう1つ、社外的なものを挙げれば、“競合”ではなく、“協業”をつくっていきたいと考えています。弊社は販売力が強みではありますが、裏を返すと技術力では弱い部分があります。やはり今の世の中は、いろいろな新たな技術が出てきていますし、そうした技術力をもった企業と提携し、販売の部分を受け持つことで、両社のシナジー効果を発揮していくような、そうした取り組みを考えたいですね。あるいは、同じ業種同士でも競合して足の引っ張り合いをするのではなく、何らかのかたちでともに儲かっていけるような、そうした方策についても考えていきたいと思います。

 弊社はまもなく25周年の節目を迎えます。今後、弊社が展開している各事業はそれぞれに異なる局面を迎えることが予測されますが、常に多くのお客さまから必要とされる企業であり続けるために、自社の強みである“ダックスらしさ”を追求しながら、変革を恐れることなく常に挑戦を続けていく―そうした会社にしていきたいですね。

(了)
(文・構成:坂田 憲治) 

<COMPANY INFORMATION>
代 表:石原 紀幸
所在地:福岡市中央区長浜1-1-1
設 立:1995年2月
資本金:1億9,134万円
売上高:(19/1)73億8,487万円

<プロフィール>
石原 紀幸(いしはら・のりゆき)

 1963年2月生まれ、福岡市出身。九州大学卒業後、85年4月に(株)リクルートに入社。88年4月に新生住宅(株)に入社した。95年2月、(株)ダックスの設立と同時に入社。2018年3月の代表取締役副社長就任を経て、19年4月に代表取締役社長に就任した。

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