2022年05月26日( 木 )
by データ・マックス

メガソーラーに揺れる宇久島~着工目前、島民の声(1)

 データ・マックス特別取材班は、今年1月に宇久島取材を敢行。以後、継続して宇久島メガソーラー事業の動向を報じてきた。遅々として進まぬ事業着工に動きがみられたのは、今年8月末。着工に向け、農地転用許可ならびに林地開発許可が長崎県から交付されたとの報が入ってきたのだ。記者は9月某日に再び宇久島を訪れ、現在の島の様子を追うとともに、メガソーラー事業に揺れる島民の声を拾った。

着工へ向けて一歩前進か~寺島では九電工関係者の姿も

 島に着いてすぐに向かったのは、現地で働く作業員の宿泊施設の建設予定地とされる、宇久野球場と陸上競技場周辺。着工に向けて建設資材を運ぶトラックが往来し、現地で働く作業員の姿を目にするだろうと思いきや、その気配はまるでなかった。目撃したのは、数名の作業員が草刈りを行っている姿。島民によると、彼らは測量という名目で草刈り作業を行っているということだが、実際は「宿泊所建設をめぐり複数回にわたる住民説明会が行われたが、そのなかで反対意見が出ており、話し合いがいまだ平行線になっているため、主だって作業ができない」とのことだ。

草刈りされた建設予定地

 宇久島の属島・寺島では、事業者と島民が接触。事業者が島内の様子などをうかがうとともに、島民に対し、メガソーラー事業に関する説明を行っている姿を目撃した。寺島は、計画によって島のほとんどがパネルによって埋め尽くされてしまうことが明らかになっている。今回の取材では、着工に向けた準備が水面下で着々と進められていることを印象付けられた。

宇久島では事業者と島民が接触していた。

メガソーラー事業の是非を問う

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 今回、宇久島各地で島民の声を拾うなかで多くを占めたのは、「どちらともいえない」という声。実に半数を占め、その理由の多くが、「自分たちは当事者(土地の所有者)ではないため、意見をいう立場ではない」という声だった。一聞すると当事者意識の希薄さが指摘されそうだが、背景には島独自の事情が見え隠れする。

 ある島民は、「メガソーラー事業は島全体というより土地所有者の問題。島民の多くが集まる市街部は土地をもっている人が少ないから、『自分たちは関係ない』と思う人が多いのではないだろうか」と分析。別の島民は、「そもそも宇久島では『島民全員で島のことを考える』という習慣がない。皆それぞれの想いはあるのだろうけど、島という閉鎖された環境下では近所の人に後ろ指を指されることを恐れ、意見を述べることすら難しいと感じている」と話した。そのうえで、「現状、土地の所有者に対して何もいえない人が多いが、ある土地の所有者が『反対』と声を挙げれば、それに連なり反対意見を述べる人も出てくるのではないか」とも話した。

 過去、風力発電導入に関し、賛成・反対で意見がわかれて議論になったことを知る島民は、なるべく争いごとや揉めごとを起こしたくないという島民感情に配慮しつつも、「今回に関しても、(島にとって利益になるから)賛成、(島の将来を考えれば)反対とそれぞれの立場や意見があるわけだから、双方で意見を出し合い議論すればよいと思う。何も賛成したから、反対したからと言って咎められる筋合いはない。なぜなら、誰もがこの事業の先のことはわからないのだから」と話した。

 「賛成」とする声の主な理由としては、「普段使わない土地を有効活用できる」「事業を進めることで、やがては島の活性化につながる」という意見が多数を占めた。表向きはもっともらしい意見ともいえるが、詳しく話を聞いてみると、本音と建前が見え隠れしていた。「はじめのうちはいいと思って土地を提供したが、遅々として進まない事業に対する不信感が募っている。今では白紙に戻してもいい(お金も返していい)と思っている」「あまりにも時間がかかりすぎている。これまで何度も延期されていて、事業そのものに信憑性がない。内心は反対の立場だ」―――彼らの多くは今、冷静な視点でメガソーラー事業の成り行きを見守っている。

 現地で事業を手がけている宇久島メガソーラーパークサービス(株)の担当職員は、「島民の意見が賛成ばかりではないということは承知している」と前置きをしたうえで、「事業に理解してもらえる・もらえないはさておき、事業を進めていく以上、進めることを前提で島民に理解を求めていく。あと何年かすれば、島の人口が今の3分の1、1,000人を切るかもしれないといわれている。我々は企業として利益を追求している以上、島の将来を考えた時、この事業を誘致することで、この島が潤うと思っている」と話した。

 「反対」とする声の多くは、島の自然や環境を破壊する行為であることに触れ、「島の4分の1もソーラーパネルを張られてしまったら、島の景観が死んでしまう。そして、一度壊した自然は、そう簡単には元に戻らない」と警鐘を鳴らした。また、「仮に事業が進んだとしても、完成後のソーラーパネルを維持管理するだけで相応のお金がかかるはず。そのころの島の人口は今より少なくなるだろうが、いったい誰がやるのか」「人が追い付かなければ、そのままほったらかしにされるのではないだろうか。ソーラーパネルを処分しきれず、そのまま島に放置されることになれば、宇久島はゴミの山になりかねない。そうなってしまったら困る」などと、メガソーラー事業の先行きを不安視する声も聞かれた。

(つづく)
【長谷川 大輔】

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