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2019年10月16日 09:30

浦江をここ数年で「中国一ゴミのない」県に再生させた政策科学の力!(2)

立命館大学政策科学部教授 周 瑋生 氏

周 瑋生氏を挟んで、向かって(左)中川十郎氏、(右)張沖氏
周 瑋生氏を挟んで、向かって(左)中川十郎氏、(右)張沖氏

中国経済の急速な発展は、環境汚染を引き起こした

 ――歴史もあり、昔から文化が盛んだったようですね。確か「科挙」の合格率も南京と並んで、中国有数の地であったと聞いています。しかし、その浦江が今、まったく別の面「中国一ゴミのない」県として大きく注目されています。

 張 中国経済の急速な発展は、先進諸国と同様に環境汚染、土壌汚染という深刻な問題を引き起こしました。持続可能な発展の観点からいえば、中国社会に、生産‐消費・廃棄から再利用に向かう閉じた循環性をもつプロセスの構築が急務となっています。

 中国では、2011年からの第12次5カ年計画で、有機廃棄物の処理は三化(減量化、資源化、無害化)を基本原則にしました。しかし、依然として大量の都市廃棄物が適切に処理されていない状況がありました。

 2014年、中央政府の命によって、浙江省は「美しい農村」を建設するために、金華市を農村部のゴミ処理モデル都市として選びました。この時の金華市の方針は、集中型ゴミ処理方式で太陽ハウスにおいて堆肥をつくるというものでした。しかし、私は新しい提案をしました。それは、まず、生活ゴミを「腐るもの」と「腐らないもの」の2種類に分別し、「腐るもの」は鎮で建設された高温好気性微生物を利用した発酵設備で、高速発酵させ、有機肥料の原材料にし、最終的に有機肥料に変えるようにしたという分散型資源利用のゴミ処理方式でした。

 従来の方式を踏襲しても、二次汚染やダイオキシン発生、メタンガス発生などさまざまな問題が一向に解決できないことがわかっていたからです。この提案は幸いなことに、県の政府に採用されました。また「腐らない」ものの、みを都市部に運んで処理することにしたので、都市部に運ぶゴミの量は分別前に比べ40%も減りました。現在この「微生物高温発酵設備」の処理センターは浦江県全域(17カ所)に普及しています。

 周 この生活ごみ処理の「浦江モデル」について、周研究室は、政策科学の視点から、経済性、環境性、社会性に関する計量分析を行い、その持続性と他地域への普及可能性について検証し、今年3月に修士号を、張社長の後輩にあたる中国人留学生に授与しました。また九月に行われた「環境経済政策学会」において浦江県新型PPP(Public Private Partnership)モデル事業を事例として取り上げ、官民連携による中国農村都市の生活ごみ処理システムに関する研究を発表しました。

「グローバルリサイクルシステム」の構築と活用

 ――移動中の車内インタビューで、張社長は自分が現在あるのは、周先生のもとで学んだ政策科学(学部~修士~博士課程)のおかげであると言われていました。そもそも政策科学とは、どのような学問なのですか。

 周 私の研究室は、主に「国際エネルギー政策と環境経営戦略」をテーマに、政策の社会効用の最大化とコスト(リスク)の最小化を目指し、政策科学研究を行っており今年で20年になります。最初の博士論文は「グローバルリサイクルシステムの構築(大循環、中循環、小循環)」というものでした。小循環とは、できる限り地元で循環させ、リサイクルし、資源管理処理をするものです。中循環とは、廃電池や一部の医療廃棄物など、地元ごとで処理消化できないものをもっと広いエリアで集中して処理するケースです。

大循環とは廃船、廃車、廃プラ、古紙、鉄くずなど、自国で消化しきれない産業廃棄物を海外にもって行き、グローバルでリサイクすることを言います。このグローバルリサイクルシステムの究極な目的は、資源利用の最大化と環境負荷の最小化です。

 約15年前に、研究室の中国人留学生が、「中国における有機廃棄物循環システムの構築に関する研究」をテーマに、日中比較を通じて、中国の有機廃棄物処理システムを提案し、修士号を授与しました。

 ところで、その時中国は、急激な経済成長による都市農村の生活様式や食生活が多様化にともなって廃棄物系バイオマスを増加させ、これらの適正処理が求められ、国策として「循環型経済社会」の実現を目指したばかりでした。生ゴミ・家畜糞尿・農産物残渣などのバイオマスは、野積みや野焼きなどで廃棄され、有効利用されていないだけでなく、水質汚濁や悪臭などの環境悪化の原因となり、研究成果として提案した有機廃棄物処理システムも実用化されていなかったのです。

 その10年後、中国政府がごみ分類の徹底など強い環境政策が打ち出し、都市農村部の生活ごみの減量、分類と処分の徹底を開始したことで、卒業生の張社長が自分の精鋭な努力に加え、天の時、地の利、人の和を生かし、浦江県でごみ処理システムを構築し、全国のモデルにすることに成功したわけであります。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
周 瑋生氏(シュウ・ウェイション)

 1982年浙江大学工学部熱物理工学専攻卒(工学学士)、1986年大連理工大学大学院動力工学科専攻修了(工学修士)、1995年京都大学大学院物理工学科高温物理工学専攻(工学博士)、1995年新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)産業技術研究員として(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)に勤務(研究員)、1998年RITE主任研究員、1999年立命館大学法学部准教授、2000年立命館大学政策科学部准教授、2002年から現職。

 これまでRITE研究顧問、立命館孔子学院初代学院長(現在名誉学院長)、立命館サステイナビリティ学研究センター(RCS)初代センター長、大阪大学サステイナビリティ・サイエンス研究機構特任教授、東京大学大学院原子力国際専攻客員研究員、浙江大学、大連理工大学、北京大学、上海交通大学、同済大学、中国浦東幹部学院、四川大学など複数大学の客員教授を併任。全日本華僑華人聯合会名誉会長(初代会長)、日本浙江大学校友会名誉会長(初代会長)、日中発展促進会会長など日中関係で数多くの要職をもつ。

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