2024年04月29日( 月 )

【凡学一生のやさしい法律学】戦後最大の冤罪事件~ゴーン裁判近し(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

ゴーン弁護団の宣戦布告

 10月24日、カルロス・ゴーン氏の弁護団は公訴棄却を主軸にゴーン裁判を遂行すると記者会見で宣言した。無罪主張はむしろ付け足しのようなものという印象だった。

 世間一般の人は、弁護団の主張する本件司法取引の違法性というものを具体的にイメージすることは困難であるため、社会の耳目となる報道機関の役割は今後一層重大であるといえる。

 ちなみに、各大手新聞の翌日の朝刊の記者会見の取扱いには極端な差が生じていた。ゴーン事件の発覚日以来一週間、怒涛のようなゴーン有罪論を報道した朝日新聞は、今回、一行も報道しなかった(すべて各紙福岡地方版の比較による)。この朝日新聞の極端な姿勢こそ、ゴーン事件が戦後最大の冤罪事件である証拠ともいえる。

 実際、発覚日以降の朝日新聞のゴーン事件の報道は常軌を逸していた。記事の内容は論理不整合・支離滅裂で、ひたすら検察リークによる一方的なものであったため、肝心の司法取引の闇が全く報道されなかった。

 その一貫した検察従属の姿勢から言えば、弁護団が司法取引の違法性を全面的に争う姿勢を見せたことは、朝日にとって、何の報道価値もないと判断しても不思議ではない。

 思うに、日本の冤罪の構造は大きく変貌してきた。戦後に頻発した冤罪の典型は、検察官の強引な起訴と国選弁護人の有罪容認の情状弁護によって、それを裁判官が仕上げるという法曹村による国家犯罪であった。被害者も弱小の個人が多かった。従って、有識者・知識人、そして新聞報道機関の強力な反対世論により、ほとんどの重大冤罪が世の中に暴き出された。

 昨今の冤罪事件は、主として経済事犯の冤罪事件が散見される。その主役となっているのが、検察官を退職して天下り弁護士となったヤメ検によるものである。彼らは巨大な利権として大企業や独占的利益団体に監査役や取締役等の地位に天下り、それら大企業の法律用心棒として暗躍した。つまり、社会的地位の高い虞犯市民の弁護を専らとした。

 一例を挙げれば元東京都知事・舛添要一氏の政治資金規正法違反容疑事件におけるヤメ検2名による「不適切であるが違法ではない」との詭弁判定事件、元貴乃花相撲協会理事解任事件におけるヤメ検理事による一方的な事実認定事件、関電疑獄事件における虞犯取締役らの「不適切であるが違法ではない」とする事件隠蔽報告書事件等々である。そして、それらヤメ検の極め付けといってよい関与事件がゴーン事件に他ならない。

 本件の司法取引の影の主役が2名のヤメ検弁護士であることを国民は見落としてはならない。この2名のヤメ検の暗躍こそ、本件事件が冤罪であることの本質である。

 以上の変質に呼応するかのように、報道機関の冤罪に対する姿勢にも変化が生じた。冤罪事件が複雑な法令解釈を必要としたため、報道機関の記者らの理解を超えてしまった。

 「不適切であるが違法ではない」という命題が、これまで如何なる法律専門書にも存在しないヤメ検の新案特許詭弁命題であることすら理解できないため、ますます深く考察することを止めてしまった。これは、マスコミが国民の耳目となる役割を放棄したことを意味する。

 以上の現状においては、町の好々爺が分かり易く刑事訴訟法の規定を解説する他ない。

 あらためて刑事訴訟法で新設された日本版司法取引法の条文の検討と、本件事件への適用の当否を市民の目で検討する。

(つづく)

(2)

関連記事