わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年11月13日 07:00

監訳者に聞く 「MMT(現代貨幣理論)」とは何か?(2)

経済評論家((株)クレディセゾン主任研究員) 島倉 原 氏

MMTのルーツはケインズ経済学

 ――島倉さんご自身も言論活動を行われていますね。

 島倉 私が言論活動を始めたのは2011年からです。最初は単なるブロガーでしたが、14年に経済評論家の三橋貴明さんが主宰するメルマガの執筆陣に加わるなど、徐々に活動の幅が広がっていきました。そうした活動のなかで書きためたものを本にしたいと考え、15年に『積極財政宣言 ―なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論)を出版しました。同書の原稿をメルマガ執筆者の1人でもある京都大学の藤井聡先生に見ていただいたことがきっかけで、同じく15年に、社会人ドクターとして京都大学の博士後期課程に入学しました。

 私の言論活動の基本は、理論だけではなく現実のデータに基づいて、何が問題なのか、そして解決策として何が正しいのかを分析、指摘することです。日本経済は過去20年余り、名目GDPが増えず、デフレが続いています。こんな国はほかにありません。さまざまなデータを調べてみると、その原因が長年にわたる財政支出の抑制、すなわち緊縮財政であることが明らかになりました。ただし、こうした見解は決して多数派ではありません。

 ――MMTとの出会いは?

 島倉 実は、『積極財政宣言』を出したころは、MMTの存在はまったく知りませんでした。「機能的財政論」を唱えたアメリカの経済学者アバ・ラーナーについて調べていた16年ごろにランダル・レイの存在を知り、『MMT入門』の原著を読んだのが始まりです。ラーナーはジョン・メイナード・ケインズの弟子にあたり、機能的財政論は、政策論としてのMMTの原型ともいうべきものです。

 『MMT入門』の翻訳の話は1年以上前から検討されていました。ただ、私自身が関わるようになったのは今年の春からです。最初は原稿の大まかなチェックをお手伝いするだけでしたが、最終的には監訳というカタチで関わることになりました。

 ――日本でのMMTの紹介者は中野剛志先生ですか?

 島倉 MMTというまとまったカタチで日本で紹介した書籍は、中野さんが16年に出版された『富国と強兵』(東洋経済新報社)が恐らく最初だと思います。ただ、MMTが属するポスト・ケインジアン(ケインズ理論の後継学派)関連の専門書でも断片的ながら紹介はされていて、たとえば09年に翻訳出版された『ポスト・ケインズ派の経済理論』(J・E・キング編、多賀出版)では、レイを始めステファニー・ケルトンやビル・ミッチェルなど複数のMMT論者が共同執筆者として参加し、「MMT」という名称は使わずに、その理論を概略的に解説しています。

貨幣は商品ではなく債務証書である

 ――いわゆる主流派経済学(新古典派、ニュー・ケインジアン)とMMTとの違いは?

 島倉 そもそも貨幣に対する見方が違います。主流派経済学は、素材としての価値がある何らかのものが、物々交換の不便さを解消する交換の媒介として用いられたことが貨幣の起源であるという「商品貨幣論」に立脚しています。これに対してMMTは、貨幣の起源はツケ払いのような信用取引にともなって発行された「債務証書」であり、価値の裏付けは素材ではなく、そこに記された債権の内容であるという「信用貨幣論」に基づいています。

 MMTはさらに、通貨すなわち政府が発行する貨幣について、国家が自らに対する支払手段として受け取ることを約束していることが価値の裏付けとなっているという「表券主義」を唱えています。言い換えれば、通貨とは、人々が国家に対して負っている支払債務と相殺できることが約束された、政府の債務証書であるということです。MMTによれば、こうしたメカニズムは4千年前、つまり古代メソポタミアの時代から続いていて、現代では税金の支払手段となっていることが、通貨の価値を裏付けるうえで大きな役割をはたしていると考えられています。

 ――商品貨幣論は間違っている?

 島倉 商品貨幣論は「かつては物々交換経済があった」ことを前提としていますが、歴史学や人類学の分野では、かつて物々交換経済が存在したという事実は確認されていません。つまり、商品貨幣論の前提自体が、いわばフィクションに過ぎないのです。MMTの文献によれば、歴史的にはむしろ、債務証書としての貨幣が先に存在し、それを基礎として市場経済が発展したと考えられているようです。

 また、商品貨幣論では、貴金属などに交換できない不換紙幣が通貨として流通している現代の状況について、つじつまの合った説明ができません。これも、信用貨幣論や表券主義との大きな違いです。

(つづく)
【大石 恭正】

<プロフィール>
島倉 原(しまくら・はじめ)

 (株)クレディセゾン主任研究員。1974年、愛知県生まれ。97年、東京大学法学部卒業。(株)アトリウム担当部長、セゾン投信(株)取締役などを歴任。経済理論学会および景気循環学会会員。会社勤務の傍ら、積極財政の重要性を訴える経済評論活動を行っている。著書には『積極財政宣言─なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』(新評論)など。

<まとめ・構成>
大石 恭正(おおいし・やすまさ)
立教大学法学部を卒業後、業界紙記者などを経て、フリーランス・ライターとして活動中。1974年高知県生まれ。
Email:duabmira54@gmail.com

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年12月11日 12:25

【鹿児島県知事選】九州経済産業局の塩田康一局長が出馬表明へ~〈ラ・サール→東大〉県出身エリート官僚NEW!

 来年夏に予定されている鹿児島県知事選挙に、九州経済産業局の塩田康一局長(54)が出馬する意向を固めた。関係者に対して、今月中に退職する意向を伝えたとみられる。

2019年12月11日 12:00

「インボイス制度」導入前における財務体質強化NEW!

 10月は消費増税や幼児教育無償化など、経済環境に影響を与える変化が大きい事象がありました。軽減税率やポイント還元制度など、消費者視点からの情報がメディアを賑わせてい...

2019年12月11日 11:59

不動産ローン申請書類 コーセーREでも改ざんの疑いNEW!

 コーセーアールイー(東証一部)は、投資用分譲マンションを販売する子会社において、投資家の源泉徴収票や物件の賃料を改ざんしていた疑いがあると発表した。

2019年12月11日 11:50

消費者庁、定期購入告げずに販売した財宝に特商法違反で是正指示NEW!

 消費者庁は10日、電話勧誘で定期購入する契約であることを告げずに健康食品を販売していたとして、(株)財宝(本社:鹿児島県垂水市、水迫邦夫社長)に特定商取引法違反によ...

2019年12月11日 11:00

間違いだらけの大学英語入試~経済政策にひた走る文科省!(後)NEW!

 私はこの背景には安倍政権が「アベノミクス」と称して進める民営化、とりわけ「コンセッション方式」(「公設民営」)があると考えています。具体的には、「施設」は公営のまま...

2019年12月11日 10:47

国交省、九電工に90日間の営業停止処分NEW!

 国土交通省九州地方整備局(九地整)は12月10日、(株)九電工(福岡市南区)に対し、90日間の営業停止処分を下した。全国における土木工事業に関する営業のうち、公共工...

美談の裏で─ライオンズクラブ337-A地区と朝倉災害支援─(18)〜茶番の名誉顧問会か?NEW!

 既報の通り、2019年12月9日にライオンズクラブ(以下LC)337-A地区の「名誉顧問会」が開催された(開催場所不詳)。LCの名誉顧問会とは、現ガバナーが任命した...

アベノミクスの正体を暴くべきときが来たNEW!

 2012年12月の総選挙で第2次安倍内閣が誕生した。このときから丸7年の時間が経過する。安倍内閣を誕生させた最大の功労者は野田佳彦氏である。野田氏は主権者を裏切った...

2019年12月11日 09:38

「現在、政権を取っている人たちこそ反社勢力」と山本太郎氏~日米FTAの再交渉期すNEW!

 れいわ新選組の山本太郎代表は10日、群馬県・JR高崎駅前で街頭記者会見を開き、臨時国会での日米貿易協定承認を「まさに国家の切り売り。売国」と批判するとともに、有権者...

2019年12月11日 09:30

リクルートキャリアのリクナビ問題は~人材データの利活用のあり方が問われる事態に飛び火(後)NEW!

 故・江副浩正氏によって1960年にスタートしたリクルートは就職情報誌、結婚情報誌、住宅情報誌で事業を拡大した。転機は2012年。その年、新社長に就任した峰岸真澄氏は...

pagetop