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2019年11月14日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】憲法改正について(2)

憲法が最高法規とされている意味、憲法と法律の関係

一般の法律と憲法とは何がどう違う?

 まず改正手続きに根本的な差異があります。一般の法律は自民党(実際は官僚)が多数の力で自由に改廃していますが、さすがに憲法は自由に改廃できません。それは改正(制定)規定の差です。一般の法律は衆議院の過半数で成立しますが、憲法改正は国会の3分の2以上の発議により、国民投票の過半数で成立します。

 つまり、法律条文は国民の代理人レベルで成立し、憲法条文は国民の直接投票で成立するという違いがあります。法律は代理人で決められるが、憲法は本人しか決められないのです。

規範としての抽象度の程度に差異

 憲法は国民生活全般を網羅する射程範囲をもつため、その規範定義文言は一般に抽象度が高い文言が使用されています。講学上、一般条項とよばれます。たとえば民法で有名な一般条項は信義則や公序良俗です。憲法で有名なのは公共の福祉です。これらの一般条項は最終的には国民の良識、つまり条理や経験則によって判断されます。この憲法条項の一般条項性をもって具体的法律の具体性と比較すれば、当然、一般条項は具体的条項を含むとするのが論理学ですから、その意味では憲法が包括的です。これは上位・下位とは意味が違います。

 もう1つ、憲法が一般条項的に規定している例を挙げれば、憲法第29条の財産権の保障です。同条第1項ではただ単に「財産権はこれをおかしてはならない」と規定するだけです。

この文言を普通に解釈すれば(文理解釈)、それは一切の財産権の侵害を違法、憲法違反とするものです。具体的な財産権の侵害態様を要件として規定していないため、極めて広範な一般条項で、すべて具体的には法律、条理、経験則等法源とよばれる判断基準で判断します。

成立後の法的効果は同等

 重要なことは、「成立した」条文の中身については法律も憲法も「法規範」という意味(国民に対する効果)では同等であることです。広く国民に広がっている誤解は、憲法の規定が一般の法律の規定より上位であると信じられていることです。その誤解の根源となっているのが、違憲立法審査権(憲法第81条)です。

 これは、やさしくいえば、憲法の条文規定と矛盾する法律の制定は認められないという、つまり、矛盾した法規範は両立しない、存在しえないという極めて当たり前の法論理上の定理を宣言したものです。憲法が上位で法律が下位だという意味はありません。基本的な規範間に上位下位を観念することはできません。後述する裁判官の自由心証権と適正手続条項の衝突が良い例です。

 具体的に説明すれば、何も憲法で定めなくてもいい規範(婚姻の成立が両性の合意によるとの婚姻法)がある一方、法律のなかには憲法で定めて当然という規範(禁反言や信義則)があります。従って、いったん成立した法律と憲法の条文においてはその法規範としては対等・同等です。

 ここで、憲法学上で問題になった憲法前文の規範性について国民はぜひ、学者・専門家の議論を知っていてください。つまり、憲法の基本的な精神を述べた憲法前文(それは普遍的原理つまり条理や経験則を基に記述されている)に規範性、具体的にいえば、裁判規範としての効力はあるか、という議論です。結論は当然、裁判規範であるということに落ち着きました。

 これは法規範といっても何も成文法だけでなく、人間社会が長年にわたって形成してきた条理、経験則も規範であることを自覚させたものです。この条理や経験則は何も司法試験合格者や法律学者のみが身に着けているものではないのですから、国民はまず、法規範とは何か、人間社会における条理や経験則とは何かを今一度自分なりに考えていただきたいものです。

 上記の学者の議論には別の意味も含まれています。それは、あらゆる法律・規範が日本語という文字で表現される結果、「解釈」という個々人の価値判断が入り込むスキがあるということです。「解釈」のなかには、憲法条文はプログラム規定であって、具体的には立法によって決まるのだ、という事実上の骨抜き解釈も横行しました。国民が本気になって、憲法の条文1つ1つの政治家・官僚・学者の「解釈」に目を光らせないと、折角の理想的な憲法条文も骨抜きにされ、画餅となる危険にさらされています。

(つづく)

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