わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2019年11月19日 13:47

中小企業では経営者と労働者は共通の目的を達成するパートナー!(前)

 今、大企業を中核とする現代の市場社会が、経済的停滞に陥ると同時に、人々の共同性・連帯性や労働の尊厳を破壊している現実がある。では、人々を封建的抑圧から解放した市場経済の歴史的積極性を生かしながら、人間の本性にとって合理的な社会を目指すためにはどのようにしたらよいのだろうか。そこで大きな役割をはたすことができるのが中小企業である。

 中小企業研究の第一人者 黒瀬直宏 (特非)アジア中小企業協力機構 理事長(前嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科研究科長)に聞いた。

(特非)アジア中小企業協力機構 理事長 黒瀬 直宏 氏

戦争責任は「戦前責任」「戦中責任」「戦後責任」と3つ

 ――本日は、これからの中小企業、中小企業とアジアについて、いろいろとお話をお聞きしたいと思います。その前に、今年1年を政治・経済の分野で振り返っていただけますか。

 黒瀬直宏氏(以下、黒瀬) 政治に関していえば、本年は1919年に起こった、中国の「五四運動」(※)、朝鮮の「三一運動」(※)からちょうど100年目でした。日本は朝鮮の独立を求める三一運動に対しては、過酷な弾圧で応え、反帝・反封建を旗印に北京でデモを行った学生たちによる五四運動に対しては中国への侵略を加速し、日中戦争、第二次世界大戦へと進みました。そして、破局を迎えたのはご存知の通りです。だからこそ100年後の今年はアジアで起きた亀裂を2度と繰り返してはいけない象徴的な年でした。

※【三一運動】1919年3月1日から始った日本統治下における朝鮮の全民族的な反日独立運動。「独立万歳」を叫んで決起したので万歳事件とも呼ばれる。日本側官憲は発砲して、約5万 2,000人を殺傷、4万 6,900人余を検挙したといわれる。

※【五四運動】中国革命史上、新民主主義による革命の端緒を開いた政治運動。政府は弾圧。このためかえって全国的な反帝・反封建運動に発展。

 しかし、日本と韓国との間に大きな亀裂が走りました。「徴用工問題」そのものに関しては、有識者の間でもさまざまな見解があると思います。しかし、問題の根本が日本の植民地支配にあったこともまたたしかです。それが100年経っても解決されていなかったことが、形を新たにして今回噴き出したものと私は考えております。

 戦争責任は「戦前責任」「戦中責任」「戦後責任」と3つあると聞いたことがあります。

 戦前責任とは戦争を阻止できなかった責任、戦中責任とは無辜の人たちを虐殺した責任、戦後責任とは2度と戦争を起こさない仕組みをつくる責任です。つまり、それぞれの世代に責任があるということです。私は1944年生まれですが、戦争は知らないので、事実上は戦後生まれといえます。しかし、戦後生まれだから、戦争責任がないというのは誤りで、「2度と戦争を起こさない仕組みをつくる」ことが私たちの世代の責任と思っています。このことをしっかり肝に刻み、日韓問題などに関しても、考え、行動していきたいと考えております。

90年代に「強い輸出競争力」と「国内完結型」が崩壊した

 一方、経済に関しては残念ながら今年も新たな経済システムの芽は現れませんでした。

 60年代に確立した日本の戦後経済システムには大きな2つの柱がありました。「非常に強い輸出競争力を持つ大量生産型の重化学工業」と「ものをつくる過程で必要なものは、設備でも、原材料でも、何でも国内で調達が可能な国内完結型の生産体制」です。

輸出拡大のため大量生産型重化学工業が設備投資を行うと国内完結型生産体制を通じて投資が投資を呼び、日本の高度経済成長(1955〜73年)をもたらし、減速経済化したものの、この仕組みは80年代まで続きました。

 しかし、90年代に入るとこの2本柱が崩壊します。まず、非常に強い輸出競争力を持つ大量生産型の重化学工業の典型例としての電気電子産業がその競争力を急激に落としました。続いて、自動車産業もかつてに比べれば競争力は大きく落ちました。その原因は簡単に言いますとIT革命によるものです。日本が誇った製造業の競争力の基と言われた優れた技術者、優れた設計者がIT技術で代替できるようになったからです。

 日本の大企業は国内にいては競争力を回復できないので、低賃金と市場を狙い中国を初めとする東アジアへ生産拠点を移転しました。国内完結型の生産体制は東アジアベースの生産体制へと変わり、東アジアと日本との間で分業関係が形成され(生産の東アジア化)、国内設備投資は縮小しました。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
黒瀬直宏氏(くろせ・なおひろ)

(特非)アジア中小企業協力機構 理事長、国際アジア共同体学会 理事長
 1944年東京都練馬区生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程修了。中小企業事業団(現・中小企業基盤整備機構、中小企業政策の実施機関)に1970年入職、1996年3月まで26年間中小企業政策遂行の実務に携わる。以後、豊橋創造大学、専修大学教授を経て、2009年4月嘉悦大学経営経済学部教授、2010年 嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科教授、研究科長、2012年4月 同ビジネス創造学部教授。2014年4月 ビジネス創造学部長。NHKラジオ第一放送「社会の見方・私の視点(旧「ビジネス展望」)」を1991年より担当。

 著書として、『複眼的中小企業論~中小企業は発展性と問題性の統一物~』(同友館)、『中小企業政策』(日本経済評論社)、『中小企業政策の総括と提言』(同友館)、『温州産業の原畜過程:情報による「下から」の資本制化と企業の階層分解』(三田学会雑誌96巻4号)、『21世紀中小企業論第3版』(共著 有斐閣)など多数。

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