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2019年11月20日 09:30

中小企業では経営者と労働者は共通の目的を達成するパートナー!(中)

(特非)アジア中小企業協力機構 理事長 黒瀬 直宏 氏

受け身的輸出依存・コストカット依存的拡大再生産の体制

 国内に残っている製造業は依然輸出依存型ですが、かつてのように技術力に基づく輸出競争力は失われ、輸出は相手国の国内市場の拡大や為替相場に翻弄される受け身的なものになっています。輸出が伸びを失ったため、生産量は増えず、利益を確保するにはコストカットしかありません。

 大企業は労働コスト削減のため、従業員の解雇、実質賃金の切り下げ、非正規従業員の採用を行いました。もう一方で、下請企業からの購入単価を引き下げました。この2つが90年代以降の大企業の利益を生み出す手段となっていったのです。それで何とか利益が出てしまうのでリスクをともなう設備投資をする必要がなくなり、ますます設備投資は停滞、内部留保だけが増えました。

 私はこのような、90年代以降の生産の仕組みを「受け身的輸出依存・コストカット依存的拡大再生産」と名づけています。これでは経済が停滞するのは当たり前です。アベノミクスでお金をどんどん刷っても、大企業の内部留保が溜まり、使われないお金が日銀の当座預金となって積み上がっていくだけです。内部留保の多くは海外に投資され、国内の競争力はますます劣化していきました。

 経済停滞の影響だけでなく、生産の東アジア化により部品の調達が東アジアで進み、部品供給システムから脱落する中小企業が増加、中小製造業の数の減少が続きました。今はトリクルダウン(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる)どころか、大企業が中小企業の市場を失わせ、もっといえば、食いつぶしている状況にあります。

中小企業経営者は下請単価が上がれば賃上げに使うと回答

 日本の企業の99%以上は中小企業で、そこで働いている人は国民の70%を占めています。この中小企業の改善が日本の経済全体すなわち内需拡大の命運を握っていると言っても過言ではありません。では、そのために何が必要なのでしょうか。

 1つ目は、従業員の実質賃金を引き上げることです。2つ目は、中小企業が置かれている価格関係を改善(下請単価の切り上げなど)していくことです。中小企業の価格関係を改善することによって、同時に賃金が上昇することは調査ですでにわかっています。中小企業庁が経営者に実施した「下請単価が上がれば、何に使いますか」という質問に対し、「賃上げに使う」という回答が多くを占めました。中小企業にとっては、大企業と比べ物にならないほど、1人ひとりの人材が大事なのです。

 3つ目として、中小企業は労働向上を経営目標に掲げ、そのために付加価値生産性を上げる「労働条件基準原理」を採るべきと私は考えています。こうすれば、拡大してきた所得格差も改善されます。正規と非正規の問題も大事ですが、今は正規労働者でも大企業と中小企業では大きな賃金格差があります。それは1990年代以降、中小企業においては、ベースアップはもちろん、定期昇給さえできなかったからです。

 これらの3つの点が改善できれば、中小企業が発展するだけでなく、内需も拡大する好循環が生まれ、さらに次の新しい経済の仕組みが見えて来るのではないかと私は考えています。中小企業家同友会(※)の経営者の方々とお付き合いして明確にわかったことは、「弱者だから助けてください」という発想が微塵もなかったことです。「中小企業は今でも日本経済に大きく貢献している。しかし、大企業に比べれば、いろいろな不利な要素もあるので、その不利を是正してくれれば、今の何倍も貢献できる」と皆さん、誇りをもっておられました。

※【中小企業家同友会】広く中小企業経営者の経験と知識を交流、企業の自主的近代化と強靭な経営体質をつくることが目的。47都道府県で47,022の企業経営者が会員。会員の平均的企業規模は、従業員30名、資本金1,500万円。(2019年4月現在)

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
黒瀬直宏氏(くろせ・なおひろ)

(特非)アジア中小企業協力機構 理事長、国際アジア共同体学会 理事長
 1944年東京都練馬区生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程修了。中小企業事業団(現・中小企業基盤整備機構、中小企業政策の実施機関)に1970年入職、1996年3月まで26年間中小企業政策遂行の実務に携わる。以後、豊橋創造大学、専修大学教授を経て、2009年4月嘉悦大学経営経済学部教授、2010年 嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科教授、研究科長、2012年4月 同ビジネス創造学部教授。2014年4月 ビジネス創造学部長。NHKラジオ第一放送「社会の見方・私の視点(旧「ビジネス展望」)」を1991年より担当。

 著書として、『複眼的中小企業論~中小企業は発展性と問題性の統一物~』(同友館)、『中小企業政策』(日本経済評論社)、『中小企業政策の総括と提言』(同友館)、『温州産業の原畜過程:情報による「下から」の資本制化と企業の階層分解』(三田学会雑誌96巻4号)、『21世紀中小企業論第3版』(共著 有斐閣)など多数。

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