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2019年11月19日 14:09

【(株)万惣】低価格武器に九州進出 宇美町に11月5号店

 広島県を本拠とする万惣は11月末、福岡県宇美町に九州5号店を出す。昨年11月、飯塚市に1号店を開設してからわずか1年。本拠地で出店余地が少なくなったことから持ち前の低価格を武器に九州で新たな市場を開拓する。計画では早期に10店体制を目指す。だが、福岡県では多様な形態の安売り業者がひしめき価格競争は激しい。はたして勝算はあるのか。

 

9月オープンした「アルゾひびきの店」
9月オープンした「アルゾひびきの店」

9月ひびきの店開業

 日清食品「カップヌードル」156円、山崎製パン「ロイヤルブレッド」150円、ハウス食品「バーモントカレー」215円、明治「ブルガリアヨーグルト」149円、キューピー「マヨネーズ」450g198円(いずれも税込)。9月下旬、北九州市若松区の学研都市にオープンした万惣「アルゾひびきの店」の売りは安さだ。車で1~2分の同じ学研都市内にある食品スーパー「カーニバルひびきの店」にくらべ、1割以上安いという印象だ。

 11月中旬の平日午後。アルゾひびきの店は安さを求める客で賑わっていると思ったら、広い店内は閑散としている。12台のセミセルフレジは2台しか開けていなかった。価格の高いカーニバルのほうがむしろ客が多い。

 アルゾの購入客をレジで観察していると、生鮮が買い物かごにほとんど入っていないことがわかる。買っているのは主に加工食品と特売のバナナとりんご。一方のカーニバルでは生鮮売り場に客が目立つ。

中間市にプロセスセンター

 万惣は九州進出に備え、福岡県中間市に店舗に生鮮食品を供給するプロセスセンター(PC)を開設。青果、鮮魚、精肉と惣菜の一部をここで加工する。通常の食品スーパーのように店内で調理することはしない。このやり方だと、店舗に加工要員が要らず経費は安くすむが、作り置きし配送に時間がかかる分だけ鮮度は落ちる。工場生産なので防腐剤などの添加剤を使う必要があり、味も店内調理に比べ落ちる。集中加工でコストを合理化するため、品ぞろえも限定される。

 カーニバルでは職人が鮮魚をさばき刺身を調理していた。客は解凍ものや塩干ものが多く、品種も少ないアルゾと見比べる。値段は高くても客の多くは鮮度と味が良く、品ぞろえの豊富な方を選ぶ。

 通常だと、出店を先行させ一定の規模に達した段階でPCをつくる。同社は逆で、広島で成功した自信がそうさせるのだろう。

当面10店目標

 万惣の前期の売上は年商270億円で、広島県を中心に約35店を展開する。1960年八百屋として創業、75年から食品スーパーに進出した。福岡県に着目したのは、同社の基本である店舗面積2700㎡で、100台以上の車を駐車できる土地が広島県内では少なくなったため。九州では飯塚、朝倉、吉野ヶ里、ひびきの、11月末の宇美と1年間で一気に5店を出店。プロセスセンターから1時間半で配送できる範囲を基本にまず10店を目標に拡大しドミナントを構築する。

 安く売るためには原価と経費を合理化する必要がある。飲料や調味料などはケースごとに陳列、できるだけ品出しと陳列作業を軽減し、少ない人員で運営している。販促費用も抑える。EDLP(毎日低価格)が基本で原則として特売チラシはまかない。

 商品も絞っており、年商300億円に満たない規模ではバイイングパワーで大手にかなわない。品種を購入頻度の多い売れ筋に絞ることで1品あたりの発注量を増やし、原価を下げる。

 ただ、このやり方だと売り場にバラエティーがなく面白味に欠ける。買い物の楽しさを求める客は一般のスーパーに行ってもらえれば良い、という考え方だ。

収支はマイナス

 2019年2月期の売上高に対する販管費比率は17.36%。経費構造はSMというよりもDSに近い。

 一方で粗利益率は15.57%しかない。つまり、粗利益で経費をまかなえず、収支はマイナス。粗利益率が低いのは売価を抑えるため、マージンを削っているためだ。同社とよく似た食品DSの大黒天物産の粗利益率は安売りにもかかわらず22.84%ある。同社の6倍以上の売上高をもち、プライベートブランドの構成比が高いことによる。

 経常利益は3億8,900万円、当期利益は4億100万円のそれぞれ2期連続赤字だった。九州出店に備えた人員採用などで販管費が前期比8.8%増と膨らんだのが主因。今期から新店がフルに寄与するため収益は好転に向かう見通しだ。店舗数が増え、PCの稼働率が高まれば原価低減も見込める。

※クリックで拡大
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安く売って利益を出す

 とはいえ、トライアルカンパニーやルミエール、コスモス薬品、ダイレックスなどの多様な低価格業者がひしめく九州で勝ち抜けるかどうかは不安も残る。大黒天物産もマミーズを買収し、本格攻勢をかける。

 集客の要となる生鮮は、アウトパック(店外加工)が基本だったトライアルでさえ、店内調理の比率を高めている。ダイレックスとルミエールは専門業者をテナントに入れている。

 勝機がないわけではない。生鮮のバックヤードがないため投資コストが低く、少人数で店舗を回せるため多店舗展開がしやすい。トライアルとルミエールは広域集客で多店舗展開に向かない。

 安く売るのは簡単で誰でもできる。問題は安く売ってどう利益を出せるかどうかだ。

【工藤 勝広】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:広島市佐伯区石内上1-8-1
代表:山本 誠
設立:1975年10月
資本金:9,000万円
年商:(19/2)270億8,483万円

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