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漁村から炭鉱のまちを経て 持続可能な発展を目指す「姪浜」(後)
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2019年12月03日 07:00

漁村から炭鉱のまちを経て 持続可能な発展を目指す「姪浜」(後)

1940年の姪浜唐津街道(上)と現在の様子(下)
(上写真:姪友会「郷土写真集2002年姪浜とその周辺」より抜粋)

埋立地による価値創造

豊浜団地
豊浜団地

 年間20万トンにおよぶ石炭を採掘していた姪浜炭鉱であるから、ボタの総量も相応のものとなる。炭鉱閉山後、愛宕山側と小戸神社側にあったボタ山はそれぞれ取り崩され、海の埋め立てに利用された。当時の海岸線から沖に向かって約1kmを埋め立てるのに役立てられ、これにより広大な開発可能区域が誕生。埋め立て作業は64~68年にかけて行われ、完成した埋立地にでき上がったのが、現在の「豊浜団地」である。

 埋立地による開発促進の成果は、豊浜団地だけにとどまらない。博多湾に浮かぶ能古島に臨む「小戸公園」は、ヨットハーバーやバーベキュー広場、球技場を備える海辺公園として、週末には多くの人で賑わう。だがここも、ボタを使った埋め立てによる敷地の拡大がなければ、人の滞留を促す設備の拡充もなかった。

海に面する小戸公園
海に面する小戸公園

 沿岸部の埋め立てはその後も続き、82~88年にかけて住宅街の地盤がつくられた。現在の「西福岡マリナタウン」である。近接地は九州最大級のアウトレットモール「マリノアシティ福岡」を始め、ヨットやボートの保管・レンタルなどを手がける西福岡マリーナ、ホテル、観覧車などがあるリゾートエリアとなっている。

 こうして姪浜は、炭鉱閉山後に衰退するのではなく、産業遺構であるボタ山を再活用することで海上に活路を見出し、まちのイメージを刷新することに成功した。

1958年の姪浜の航空写真(上)と現在の姪浜略図(下)。
図中の赤線は以前の海岸線をおおまかに示したもの
(上写真:姪友会「郷土写真集2002年姪浜とその周辺」より抜粋)
※クリックで拡大

 一方で、姪浜駅の存在も大きい。同駅には現在、福岡市地下鉄・空港線とJR九州・筑肥線の2路線が乗り入れており、それぞれの起点となっている。また、同駅には西鉄バスと昭和バスのほか、今宿姪浜線乗合バス「なぎさ号」も運行。西区のなかで交通結節点の役割を担っている。さらに82年5月に西区(旧)が現在の西区、早良区、城南区へと分区された際、同駅のすぐ南西の場所に西区役所ができたことで、姪浜は西区における行政の中心地にもなった。そして90年代以降は、同駅周辺で土地区画整理事業が進行。駅を中心に開発が進められ、駅周辺―とくに駅南エリアには、高層マンションやオフィスビルなどが相次いで建設された。

 こうして姪浜は、今や福岡市西区を代表する職住近接エリアであり、遊べる場所も内包した憩いの場所となっている。

循環型のまちづくりを

1725年建立の「小戸大神宮」
1725年建立の「小戸大神宮」

 漁村から始まった姪浜は、宿場町としての発展を経て、やがて石炭産業の勃興により働き手が急増。エネルギー革命後は、埋立地に住まいと商業施設を新設することで生活利便性を向上させ、定住者の増加に成功した。2019年現在、姪浜は西区最大の人口集中地区にまで成長した。

 旺盛な開発動向は落ち着きを見せ始めたが、19年12月には温浴施設「(仮称)ヒナタの杜 小戸の湯どころ」が小戸2丁目(姪浜炭鉱跡地)にオープンするなど、緩やかにまちの新陳代謝は続いている。マンション建設も散見されることから、20年以降もさらに人口が増えていく可能性はある。

 ただし、これからの姪浜のまちづくりを考えていく場合、現状の利便性を維持させていく方向が良いように思われる。住む場所としての姪浜と、週末遊びに行く場所としての小戸。うまく棲み分けができている2つのエリアそれぞれに特色があるからこそ、市場を奪い合う事態が避けられている。今以上を求めてスクラップ&ビルドや、さらなる埋め立てを強行し開発を推し進めれば、必ずバランスが崩れ、まちとしての魅力は減退していくであろう。

 海辺という立地に加え、これまで進めてきた自前の資源を生かしたまちづくり。次の世代にも、都市と自然が共生するまち・姪浜に住み続けてもらうためにも、これまで同様、今あるものを再利用する持続可能性を追求した循環型のまちづくりを行っていくことが理想だ。

(了)
【代 源太朗】

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