中谷一馬氏がマレーシア視察を報告、「どの国も財務省・経団連は消費税を上げたい」
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立憲民主党の中谷一馬(なかたに・かずま)衆院議員は10月27日、日本経済復活の会(小野盛司会長)で講師を務め、8月下旬のマレーシア視察を報告し、「どの国でも財務省・経団連は消費税を上げたいんだなぁと分かった」と感想を述べた。
マレーシアには消費税廃止の影響を視察するため、3日間滞在。同党の高井崇志・伊藤俊輔の両衆院議員と無所属の松平浩一(会派「立憲民主党・無所属フォーラム」所属)衆院議員、れいわ新選組代表の山本太郎前参院議員、神奈川県議・横浜市議ら地方議員が同行している。
マレーシアは前ナジブ・ラザク政権の2015年4月、それまであったSST(売上・サービス税)を廃止してGST(消費税)を導入。2018年5月の総選挙でマハティール元首相率いる野党連合・希望連盟(PH)が政権を奪取し、同年6月よりGSTを廃止し、SSTを再導入している。
中谷氏は現代貨幣理論(MMT)を解説した後、「実はまだ、どこにも報告したことがなかったので、いい機会だと思った。参院選直後、枝野(幸男)代表や福山(哲郎)幹事長がれいわを含め野党一致結束してやっていこうと打ち出していたので、僕も彼らの政策をしっかり研究する必要があった。山本氏のブログを見ると、すごくいいことを言っていて、心に響いた」と動機を明かした。
中谷氏は、マレーシアで副財務相や副防衛相、商工会議所幹部ら8人から聞いた話を報告した。
最初に会ったリュウ・チン・トン副国防相は、野党連合のマニフェストをつくった人物。前政権が導入したGSTは国民生活を苦しくし、政権スキャンダルや汚職もあって野党連合が勝利した。野党連合はGST廃止を掲げたものの、税収はGSTが約1兆1,400億円なのに対し、SSTは5,200億円に半減。「新政府の課題は、汚職撲滅と新税収の確保。経済成長を進めて所得・法人税収増を実現したいと話していました」。
次に会った財務省のシバ主税局長からは、SSTへの変更による減収に対し、新たに砂糖税と出国税を導入するも賄いきれず、国営石油企業ペトロナス社から配当金をもらい穴埋めしている実態を報告された。GST廃止は消費者から喜ばれているが、事業者から不満が出ている。SSTは効率的でないから、財務省内では改善を検討している。「個人的意見だが」として「GST撤廃は望ましくない。タイも引き下げで対応している」と税制の再変更を主張されたという。経済省スタンドラ・マクロ経済局長らは、経済成長によって格差是正や技術革新を行っていきたいと説明した。GST廃止による税収減もあって公共事業が減る一方、米中貿易摩擦など世界貿易が厳しいなか、4.7%の成長率を維持できたことに胸を張ったという。
アミール副財務相は、「総選挙で勝てるとは思っていなかった」と吐露し、税制変更の仕事をした財務官僚の労をねぎらったうえで、税収減を補うため、脱税対策やほかの課税を考えていることを明かした。「SSTはシンプルな税でビジネスコストを下げ、消費者の可処分所得を上げる」と述べ、GSTの課税対象が全品目の60%なのに対し、SSTは35%と限定されていることを説明したという。
モハムド首相経済顧問は、マハティール首相の経済政策をつくった。教育や福祉がよくならず国民は同制度に不満をもっていたことを指摘し、「税収が下がることへの対応が必要」と課題を挙げるとともに、GST廃止後の経済状況をグラフで示し、「公共投資が減っている。ただ、個人消費は経済的に厳しいなかでも伸びている」と成長政策を唱えたという。
連合(労働組合)のソロモン事務局長はGSTの不人気が政権交代の要因になったと指摘しながら、「いかなる増税にも反対。マレーシアは税の公正な配分ができていない」と主張したと報告。外国人の流入によって賃金が引き下がっていて、仲介企業ばかりもうかっていることを挙げた。
民間シンクタンク、マレーシア経済研究所のカマル所長は、GSTは経済学者の間で好ましい税制との意見があるが、逆進性があって貧困層には厳しく格差が広がると指摘。一方で富裕層が海外で資産隠しをしている状況では、財源として取りやすいと話したことを紹介し、「この人は中間で悩んでいる感じ」と評じた。
最後に、「日本で経団連会長に当たる」商工会議所のクン委員長の説明を紹介。GSTのほうが広く徴税できる点で優れているとして、日用品などの物価が下がっていない点を挙げ、「減税分をそのまま企業が利益でもっている。GSTの還付を受けるため会計システムにIT投資したのにと、中小企業が怒っている」と告げられたことを明かした。「調和タスク」と名付け、SSTを再びGST相当の制度に戻すことを検討しているとのこと。
視察の成果について、中谷氏は「どの国でも、財務省・経団連は消費税を上げたいんだなぁと分かった」と吐露。経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)がプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化のため消費税を20%にすべきと勧告したり、2040年には社会保障費の確保だけで18%の消費増税が必要との主張に触れ、「2%上げるだけでもこれだけ景気が落ち込むのに、どう考えても現実的な数字でない。机上の空論。諸課題をしっかり解決できるような長期的展望を示して、財政出動した方がいいのではないか」と問題提起した。
さらに、「消費税の廃止は国民への訴求力が強く、政権交代の起爆剤にもなり得る」として、時限的な消費税減税を提案。「財源を確保したうえで、国民生活を明るくする今のための政策と、わくわくする希望あふれたビジョンを示す未来のための必要な経済政策として、5〜10年時限的に消費税減税をしてみて、財務省がいうように金利も上がり、円安もすごいことになったら、元に戻せばいい。そうでなかったら、日本の経済成長や人口構造の問題が解決する道筋がつくまで、財政をちゃんと支出した方がいい」との見解を示した。
<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)
1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。ブログ『高橋清隆の文書館』。関連キーワード
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