CM効果で知名度アップ「攻めの広報」とは
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(株)奥村組
土木、建築を手がける老舗の中堅ゼネコンである(株)奥村組。同社はここ数年、大阪国際女子マラソンのメインスポンサーを始め、テレビ番組スポンサーやテレビCMなどの広報活動を展開し、会社の知名度向上などに積極的に取り組んでいる。なぜ今、広報活動なのか。同社の社長室広報課長・藤本義浩氏に聞いた。
「中途半端な広報はあかん」
(株)奥村組に限らずゼネコンは、一般消費者との接点が少ないため、これまではトラブル対応などの「守りの広報」がメインで、積極的な広報活動をしていなかった。このため、一般の方にとってのゼネコンの知名度は、全般的に低い。
大阪に本社を構える同社にとって、最大のマーケットである関東での知名度の低さは積年の課題だった。知名度が低いと、営業面で不利になるだけでなく、優秀な人材がなかなか確保できないからだ。
2016年ごろは、東京オリンピック需要などで建設業界の景気が回復するなか、同社の業績も比較的堅調に推移していた時期だったが、一方で将来的な建設投資の縮小が懸念される時期でもあった。そこで、「知名度、ブランドイメージを上げるのは今しかない」と、会社として“攻めの広報活動”に転じることになった。
それまで同社では、広報にあまりお金をかけていなかったが、「攻めの広報に必要な支出は認めるので、中途半端はあかん」ということに。検討を進めるなかで、一般の方の共感を得やすいスポーツイベントへの協賛に関心をもち始めたタイミングで、大阪国際女子マラソンヘの協賛の話が舞い込んだ。同マラソンに協賛すると、ゼッケンなどに社名が表示されるだけでなく、中継番組内で600秒間のCM枠がある。30秒CMが20本と、かなり大きな枠だ。社内ではいろいろな意見が出たが、知名度を上げるには絶好のチャンスと捉え、最終的に「やろう」という話になった。協賛契約は4年間。この大阪国際女子マラソンヘの協賛は、同社の広報活動にとって大きな転機となる。
CMコンセプトは「建設が、好きだ。」
マラソン協賛は決定したが、次に待っていたのは「テレビCMをつくる」という大きな仕事。コンセプトを検討するなかで、「建設という仕事に真剣に取り組める原動力は何か」を突き詰めていくと、「それはこの仕事が好きやからやろ」という話になった。その結果、「建設が、好きだ。」というコンセプトが生まれたという。建設業界に関わるすべての人に共通する思いなので、共感を得られるとも考えた。
次のステップは、「建設が、好きだ。」をどう表現するか。同じCMを20回流すわけにはいかないため、複数のCMが必要だった。同社社長の奥村太加典氏からは、企業メッセージをストレートに表現する「実直なイメージのもの」と、大阪の会社らしく「ユーモアのあるもの」という2方向でのCM制作を検討するよう指示があった。
ユーモアのあるCMには、女優の森川葵さんを起用。彼女に、建設業界に憧れる好奇心旺盛な建築系新入社員「奥村くみ」というCMキャラクターを演じてもらった。女性キャラクターをメインにしたのは、「男女問わず活躍できる建設業界をアピールしたい」「建設業界の既存のイメージを払拭したい」という思いがあったからだ。
最終的に「建設が、好きだ。」というコンセプトのもと、実際の社員などが登場する企業コンセプトCM「建設が、好きだ。」と「建設LOVE 奥村くみ」シリーズCM(全4話)を制作した。
2年目は、制作したCM映像を長期展開する施策と短期展開する施策を実施。長期展開としては、テレビ東京の「ガイアの夜明け」などの番組提供により定期的にCM放映。短期展開では、1月のマラソン前後で集中的に広告を出すことにした。そして協賛2年目となる38回大会に合わせて新たなCMも作成。「建設LOVE!奥村くみ」シーズン2として、新入社員だった奥村くみが少し成長し、建物が完成した達成感を味わうストーリーに仕立てた。
CM効果「奥村組がいいんじゃない」
こうして2年にわたり、大阪国際女子マラソンに協賛した同社。認知度が着実にアップしたことを自社調査で確認できたという藤本広報課長は、CMの効果について次のように話してくれた。
「大阪国際女子マラソンは、今では奥村組にとってお祭りイベントのようになっており、マラソン協賛は、社員のモチベーションァップにもつながっている。弊社の広報の転機は、やはりマラソン協賛が一番大きい。CMについては、自社の調査で認知度アップに大きく貢献していることが確認できており、手応えは感じている。採用担当者からは、『テレビCMもやっているし奥村組がいいんじゃない』という親からの意見で内定辞退が減っていると聞いた。それはCMの大きな効果だと思っている。やはり、会社名を知っているのと知らないのとでは、大きく違うなと感じている。ただし、“攻めの広報”としてはまだまだだと思っている。一定の成功を収めたとしても、同じことを繰り返すだけではダメなので、手を変え、品を変え、いろいろと考えていかなければならない」。
【大石 恭正】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:奥村 太加典
所在地:大阪市阿倍野区松崎町2-2-2
創 業:1907年2月
資本金:198億円
売上高:(19/3)2,155億円
社員数:2,003名(19年3月末時点)関連記事
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