芸術・文化のまち復権へ 副都心・池袋の再開発(前)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年12月06日 07:00

芸術・文化のまち復権へ 副都心・池袋の再開発(前)

 2014年5月、豊島区は東京23区で唯一「消滅可能性都市」であると指摘されたことで、衝撃が走った。「池袋にあれほどの賑わいがあるのに、そんな馬鹿な話はない」という声もあったが、一方で豊島区は危機感を抱き、まちづくりに本腰を入れた。

田園から交通の要衝へ

1963年ごろの池袋駅東口。左に西武百貨店
1963年ごろの池袋駅東口。左に西武百貨店

 明治時代の池袋周辺は、旧中山道、染井通り(駒込周辺)、雑司谷道(雑司ヶ谷村、池袋村)などの沿道で集落が形成。だが、それ以外は水田や畑、雑木林などが広がっているだけで、とても現在の賑わいが想像できるような地域ではなかった。

 1903年、豊島線「池袋~田端間」が開通し、池袋駅が誕生。当時の池袋駅周辺は、武蔵野の面影を残す田園地帯で、木造駅舎のほかは主だった建物もなかった。09年の地形図を見ると、池袋周辺での大規模な土地利用は、学習院や巣鴨監獄などの数カ所のみ。学習院は現存しているが、巣鴨監獄は戦後に巣鴨プリズンと名称を変え、戦犯を収納する役割となった。駅開業当時、池袋駅の年間乗降客数は5万人程度だった。

 大正初期に東上鉄道(現・東武東上線)や武蔵野鉄道(現・西武鉄道池袋線)が開業。池袋の利便性はさらに高まり、郊外と連結する鉄道路線の現在の姿がほぼ形成された。大正後期になると池袋駅から巣鴨監獄にかけ、市街化が顕著になる。18年には立教大学が築地から池袋に移転し、21年には自由学園が創設され、学生も集まるようになった。

 このころ、池袋駅東口に存在した丘陵地「根津山」を開削。護国寺方面を結ぶ道(現・グリーン大通り、日の出通り)を整備し、数年後には市中心から市電が入るようになった。

芸術街でもあった池袋

 昭和初期には、池袋近辺の長崎、千早、要町には100を超えるアトリエが立ちならび、多くの若い画学生が居住していた。ここに住んだ芸術家たちは、この地域を“アトリエ村”もしくは“パルテノン”(フランス語で宮殿の意味)と呼び、当時の著名な詩人・小熊秀雄氏は、パリにたとえて「池袋モンパルナス」と名付けた。戦争や宅地化により、多くのアトリエはその後消滅したが、池袋が文化都市を目指すDNAの源流を探ることができる。

 このころ、現在の明治通りや川越街道、春日通り、中山道などの環状・放射状の幹線道路を中心に本格的な道路整備が進められ、戦前までに豊島区の骨格的な幹線道路網が形成された。当時存在した谷端川や弦巻川などの河川は、暗渠となった。

豊島区役所
豊島区役所

 戦時中は池袋周辺も焼け野原になったが、交通の要衝であったため、焼け跡には戦後、バラック建てで長屋式の商店街や露店がつくられ、いわゆる「闇市」が形成。池袋東口の闇市は、51年までに駅前整備の計画とともに姿を消した。池袋駅周辺では戦災復興土地区画整理事業が行われ、80年までに道路・公園の基盤が整備された。

 広域的な道路網は69年に首都高速5号線(都市高速道路5号線)「池袋~音羽間」が、77年には同線「池袋~高島平間」がそれぞれ開通。78年には巣鴨プリズン跡地にサンシャインシティが誕生した。90年に東京芸術劇場が開業、92年にはメトロポリタンプラザが開業するなど、池袋駅周辺の土地活用が進んだ。

 池袋駅は現在、JR(山手線・埼京線・湘南新宿ライン)、東京メトロ(丸ノ内線・有楽町線・副都心線)、西武池袋線、東武東上線の8路線が乗り入れている。また、2013年には東急電鉄東横線・みなとみらい線との相互直通運転の開始により、埼玉から池袋そして横浜までの直通運転が実現した。

 こうして副都心の地位を確立した池袋。だが、まちづくりの観点からすれば、サンシャインシティなどの竣工後は停滞していた。池袋のまちづくりが動いた大きなトピックスが、15年に竣工した豊島区役所の新庁舎移転だ。総事業費約435億円をかけたが、税金を一切使わないことで大きな話題を呼んだ。

旧区庁舎を再開発

中池袋公園から工事中のHareza池袋を望む (事業者:東京建物、サンケイビル、鹿島、豊島区。延床面積約8万7,900m2)
中池袋公園から工事中のHareza池袋を望む
(事業者:東京建物、サンケイビル、鹿島、豊島区。延床面積約8万7,900m2

 旧豊島区庁舎跡地、豊島公会堂跡地の再開発「(仮称)豊島プロジェクト」によって、豊島区が整備する「としま区民センター」を含め、ミュージカルや伝統芸能を公演するホールや、アニメ、サブカルチャーを楽しめる空間など、個性の異なる8つの劇場を備える新複合商業施設「Hareza(ハレザ)池袋」が誕生する。11月1日には、ハレザ池袋の中核である多目的ホール棟「東京建物 Brillia HALL(ブリリアホール)」が先行オープン。同時に、内包施設となるライブ劇場「ハレブタイ(harevutai)」、スタジオ「ハレスタ」、エントランス部分に位置する「パークプラザ」も同時にオープンした。オフィスや商業施設を含む全体のグランドオープンは20年7月を予定している。

区役所新庁舎の前を通過する予定で工事中の環状第5の1号線
区役所新庁舎の前を通過する予定で工事中の環状第5の1号線

 周辺の道路インフラ整備も進められている。新庁舎前を通過する「環状第5の1号線」(東京都建設局)は、渋谷区広尾~北区滝野川に至る全長約14kmの都道で、19年度末の完成を目指している。現在、池袋駅東口の駅前には明治通りが通り、クルマの交通が集中し交通混雑が慢性化。環状第5の1号線が開通すれば、クルマの動線が移動することが予想されている。

 豊島区では11年に「池袋副都心交通戦略(池袋の交通のあり方を考える)」を策定し、歩行者優先のまちづくりを進めてきた。豊島区の担当者は「今後は明治通りの混雑も緩和され、池袋駅東口周辺は歩行者優先のまちになっていきます」と期待を寄せる。

池袋駅東口

(つづく)
【長井 雄一朗】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年08月09日 07:00

相次ぐマンションの設計偽装

 構造設計一級建築士の仲盛昭二氏は、発覚が相次ぐ耐震偽装マンションに関し、マンション販売会社・設計事務所・行政に対して質問書を送付した。なぜ、この時期に仲盛氏が耐震偽...

2020年08月09日 07:00

復活の道が見えない日産自動車の研究(2)

 指名委員会の次なる仕事は、代表執行役の選任。指名委員会は2019年10月8日、西川氏の後任の社長兼CEOに内田誠・専務執行役員を起用すると発表した...

2020年08月09日 07:00

2019年度九州流通企業売上高ベスト10~4位までの順位は昨年度と変わらず

 2019年度の九州流通企業売上高ベスト10が決まった...

2020年08月08日 07:00

経営者が考えておくべきハラスメント対策とは

 新型コロナウイルス関連の報道に埋もれた感じがありますが、今年6月からいわゆる「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法の改正)が施行されました...

2020年08月08日 07:00

生まれ変わった交流拠点、糸島ファームハウス「UOVO」(後)

 UOVOではファミリー層向けに、子どもが遊べるようにと芝生スペースも整備中。日射しの強い夏は、散水用のスプリンクラーがそのまま“涼”を感じられるアイテムになる...

2020年08月08日 07:00

コロナ禍に揺れる新大阪駅~都市機能不足、リニアにも暗雲(後)

 骨格に関してはもう論ずることがないので、地方創生回廊中央駅構想について見ていくことにする...

2020年08月07日 18:24

【8/8~21】お盆期間の飲み会は1次会、2時間まで 福岡県が要請

 福岡県は8~21日、県民に対して、接待をともなう飲食店、居酒屋など酒類を提供する飲食店やカラオケでの滞在を2時間以内とし、1次会のみの利用を要請する...

2020年08月07日 18:23

新型コロナウイルスが直撃~旅客運輸会社は生き残ることができるのだろうか

   来週、お盆を迎える。「今年は帰省を控えるべきか、それとも帰省すべきか」と、ぎりぎりまで迷っている人が多いといわれているが、旅客運輸業界の株価、経営状況などをみて...

2020年08月07日 17:55

【横田一の現場レポート】〈解散・総選挙は今秋〉説が無視できない理由 維新人気で「Go To改憲」

 コロナ禍にあってもなお、今秋の解散・総選挙説が永田町では囁かれている。7月15日には維新副代表の吉村洋文・大阪府知事が、地方分権の超党派勉強会「新しい国のかたち(分...

2020年08月07日 16:57

厚生労働省公表の「ブラック企業」 7月31日発表 九州地区(福岡を除く)

 20年7月31日に公表(20年6月30日更新分)された福岡を除く九州地区分は下記の通り...

pagetop