2024年04月24日( 水 )

魅力、所得、認知度アップへ「ブランド糸島」次の展開とは(後)

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糸島市長 月形  祐二  氏

東京で手応え、次の展開は

 ――糸島で過ごす時間そのものが価値をもつ「ブランド糸島」が確立されつつある今、次の展開が気になるところです。

 月形市長 これまで、ブランド糸島を全国で認知していただくために、関東圏、とくに東京中心のプロモーションを行ってきました。次は、日帰り可能な距離にある関西圏で糸島をアピールしていきたいと考えています。商慣習の違いもあり、商品の価値と価格のバランスを取ることは容易ではありませんが、東京での実績を基に、自信をもってブランド糸島を広めていきたいと思います。

 20年2月に阪急うめだ本店で開催される九州物産大会では、糸島にスポットを当てていただける予定です。このチャンスを生かし、関西圏を新たな商圏として開拓することが、今後の大きな目標となります。

糸島市制施行10周年記念企画

 ――距離の話でいうと、韓国や中国とも非常に近い距離にあります。

 月形市長 糸島の農畜産物や海産物は、韓国や中国・香港でも十分勝負できる品質水準にあると考えています。国内の人口減少が避けられないなか、これから先、海外市場は間違いなく重要なターゲットになってくるでしょう。

 これまでの10年間、糸島の良さをSNSなどで情報発信してくれる糸島のファン獲得に励んできました。たとえば、人気レストランのシェフの方を糸島にお招きして、生産現場を見学していただき、生産者の方と直接お話いただく「糸島ファームtoテーブル」などの事業を通じて、シェフに「糸島の語り部」となってもらい、糸島ファンづくりの拠点となっていただきました。現地を知る方が伝える情報が増えていくにつれて、糸島の幸がどのような過程を経て手元に届くのかという、ストーリーを知る方も増えていきました。こうして、適正価格での販売の実現、ブランド糸島に対する信頼を得てきたのです。

 ――これからの糸島のまちづくりを考えたとき、何が必要になってくると考えられますか。

 月形市長 人口は増加基調で推移していますが、実際に人口が増えているのは、鉄道沿線の波多江、東風、南風、前原、前原南の市内15校区中5校区のみです。これからの課題として、JRとの接続を含む生活交通をどう確保していくかを考えていかねばなりません。

 市では、路線バスやコミュニティバス、自主運行バスなどを組み合わせることで、交通空白地域をなくす「どこでもバス事業」を推進しています。これにより、すべての市民が市内を自由に移動できる交通網を整備していきます。

 ――九州大学・伊都キャンパスの存在も、より大きなものになっていくと思います。

 月形市長 九州大学伊都キャンパス南側に、留学生向けの居住エリアを設置する「国際村構想」があります。糸島の未来を担う子どもたちが、国際感覚を培う場の提供にもつながるこの計画を、まずはしっかりとかたちにしていきます。近接エリアでは、80室超のホテルも建設中です。海外の研究者を始めとする、多種多様な人たちが集う交流拠点の形成を目指しています。

 また、合わせて「サイエンス・ヴィレッジ構想」も掲げています。地域・大学・企業が一体となった糸島市独自の研究拠点を置き、そこから世界初となる技術の実用化・製品化を目指していきます。雇用の創出はもちろんですが、市民が誇れるものにするためにも、シリコンバレーのようなオープンイノベーション拠点を築いていければと考えています。

特性を生かした「糸島」の融合

 ――最後に、次の10年に向けての意気込みなどをお聞かせください。

 月形市長 前原市、二丈町、志摩町は、糸島市として統合されました。しかし、まだ完全な融合には達していません。前原市、二丈町、志摩町という境界感覚がまだ残っている方は少なくありませんので、これを次の10年で解消し、市民の皆さまに一体感をもっていただきたい。糸島市の○○校区、または○○コミュニティというように、同じ糸島市民であると意識してもらえるようにしていく必要があると思います。

 これは、それぞれのエリア特性をなくすということではなく、各校区・コミュニティが主体的に活動していくことで、その独立性・独自性の基に糸島市が成り立つというまちづくりの在り方です。20年度からは、各地域の公民館を「コミュニティセンター」へと改称し、生涯学習だけでなく、さまざまなイベントも行えるようにしていきたいと考えています。各校区・コミュニティがその地域の特色を生かした活動を、自分たちで企画・実行していくことが、本当の意味で持続可能な発展を糸島にもたらすのだと思います。

 まちへの愛着は、自ら進んで参画することで生まれます。それは糸島の歴史、伝統を後世に伝えていくうえで、欠かせないものです。良いものは良いものとして、継承していくことも大事です。そのなかで、新しい発想でまちづくりをしていければよいと思います。専門家の意見を取り入れてイメージの刷新を試みるほか、せっかく九州大学・伊都キャンパスがあるのですから、学生の意見を取り入れてみるのも面白いでしょう。新旧が融合するまち、新しい息吹が感じられるまち。糸島はまだまだ可能性に溢れています。そのポテンシャルを余すことなく、新たな10年のために生かしていくことが大切なのです。

(了)
【代 源太朗】

<プロフィール>
月形 祐二 (つきがた・ゆうじ)

 1958年6月生まれ。糸島郡志摩町桜井(現・糸島市志摩桜井)出身。西南学院高等学校、西南学院大学法学部を卒業後、(株)モリタに入社。その後、86年から2002年11月まで衆議院議員太田誠一氏の秘書を務め、03年4月の福岡県議会議員選挙で初当選し、福岡県議会議員を3期10年務めた。14年2月に糸島市長に初当選し、現在2期目。

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