2024年04月19日( 金 )

ブランド再強化に取り組む、技術のオーレック(後)

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(株)オーレック 代表取締役社長 今村 健二 氏

農業に欠かせないOREC

 ――御社の製品は、どれも独自性(オリジナリティ)に富んでいます。

 今村 農家の方々の「こういうものをつくってほしい」という声に真摯に向き合い、応えてきた結果です。「そういった製品はもうあるのでは」と思っていても、意外とないものです。他メーカーが最初から「無理だ」と相手にしてくれないようなものであっても、耳を傾けかたちにする。骨身に染みて農家の方々の大変さがわかったからこそ、やらなければという強い思いを抱くことができ、その思いを実現することができるのです。

 ――その思いがしっかり伝わっているからこそ、全国の農家の方々が御社の製品を使用しています。

 今村 全製品合わせて年間約9万台販売します。「全国の農家の方々の軽トラックに弊社の製品が乗る日が来るかもしれない」――そんな夢を思い描いていたのが30年前です。それが今現実のものになっているわけですから、非常に嬉しくなりますね。

 弊社では「百見は一感に如かず」を標語として掲げて、社員を農業体験に参加させています。私が設計図を作成していたころは手書きの時代。それがCADによる作成が主流となり、最近は一層バーチャル化が進みました。強度計算までシミュレーションできるので、極端な話、現場に行く必要がなくなっています。たしかに作業効率は向上しますが、それでうまく製品をつくれるかといえば、そうでもない。農家の方々への配慮が欠けているからです。

 だからこそ、体感することが大切なのです。体感することで問題意識をもち、それを製品づくりに役立てることができる。農家の方々に「使いやすい」といってもらえることが重要であり、常に“想像以上”を追い求める姿勢を忘れてはいけないと考えています。農家の方々から「お隣さんが使っているアノ製品!」と指名される製品づくりを今後も追い求めていきます。

リブランディングによる展開

 ――御社では創業70周年を迎え、企業のリブランディングが進んでいます。

OREC-green-lab-福岡
OREC-green-lab-福岡

 今村 企業というのは、30年サイクルで生まれ変わっていくものだと考えています。そうすると、弊社は創業70周年を迎え、次は100周年に向けて新たな展開を模索していくことになる。そうしたなかで、まずは弊社のことをより多くの人に知ってほしいという思いから、ブランド強化に取り組み始めました。「オーレック祭り」や「九州農高 川柳コンテスト」など、地域貢献にもつながるイベント開催を通じて、弊社を知ってもらうと同時に、次世代を担う若者たちに農業に関心をもって欲しいと考えています。

 

約250冊の書籍が集まる2階「ライブラリスペース」
約250冊の書籍が集まる2階「ライブラリスペース」

 そしてブランド発信拠点の「OREC green lab(オーレック・グリーンラボ)」です。グリーンラボは、弊社製品のショールームであり、農家の方々との交流拠点の役割も担っています。また、長野、青森についで19年10月にオープンした福岡のグリーンラボは、普段農業と接点がない方々からの利用も視野に入れた都市型ブランド発信拠点として、カフェや読書を楽しめるライブラリスペースを確保し、訪れていただいた方への食の安心・安全に貢献という視点から、「農」と「食」をテーマに情報発信をしています。

 ――海外でもOREC製品が使用されています。

 今村 ヨーロッパのブドウ園などで使われています。弊社の草刈機は軽量で根を固めたり傷めたりする危険性がないため、重宝されているようです。また、造園業者からの評判も良いようです。現地メーカーの家庭用草刈機はすぐ壊れてしまうらしく、業務用として販売されている弊社の草刈機は、値段が高くても長持ちするので評判が良いようです。アメリカではレンタル業者が大量に購入して、一般消費者向けにレンタルやリースサービスを展開しています。海外市場でも、弊社の製品がお役に立てていることは嬉しい限りです。

 ――最後に、今後の展開についてお聞かせください。

オーレック本社
オーレック本社

 今村 これからも弊社の中心事業が農業機器の製造であることは変わりません。「草とともに生きる」をコンセプトに、新たに3つの分野で事業を展開していきます。1つが環境分野で、畜産農家の環境・経営改善を促す畜産消臭システム「Dr.MIST」。アンモニアが分解されるので臭いが軽減され、ハエの発生が抑えられ、床換えの頻度が最大8カ月まで伸び、牛の疾病率が大幅に減少します。

 2つ目はIT分野。全国の家庭菜園者の活動を応援する家庭菜園SNS「菜園ナビ」を運営しており、菜園初心者からベテランまで、コミュニティ形成を支援することで、農業に関心を持つ人を増やしていきたいと考えています。

OREC製品を使って栽培した無農薬栽培のお米とお茶を使用したオリジナルのお米ラテ煎茶
OREC製品を使って栽培した無農薬栽培のお米とお茶を使用したオリジナルのお米ラテ煎茶

 そして3つ目が農作物を使った食品や石鹸など、「健康と美容」に貢献する分野です。主力商品の「薩摩の濃緑青汁」を始め、洗顔石鹸の「はたけの恵」など、農作物を使ったヘルスケア商品の開発・販売を通じて、農家の方々の新たな販路構築のお役に立てればと考えています。農業機器分野を含むこれら4つの事業によって、OREC創業100周年に向けてさらに精進してまいります。

 

(了)
【代 源太朗】

ORECに込められた思い

O…Originality(独自性)
R… Realization(実現性)
E… Essence(本質)
C… Challenge(挑戦)

<information>
OREC green lab 福岡
所在地:福岡市中央区赤坂1-13-1
営業時間:午前10時~午後7時
定休日:日・月・祝日(ほか、年末年始・夏季休業)

<Company Information>
代 表:今村 健二
所在地:福岡県八女郡広川町日吉548-22
創 業:1948年10月
設 立:1957年7月
売上高:(19/6)131億円
URL:https://www.orec-jp.com

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