2024年03月29日( 金 )

区画整理完了はスタートライン 香椎はにぎわいを取り戻せるか――(3)

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20年間で失われたまちのにぎわい

アピロスの閉店により、西鉄香椎駅以西の国道3号側からの人の流れは激減した(2019年12月)
アピロスの閉店により、西鉄香椎駅以西の国道3号側からの人の流れは激減した(2019年12月)

 現在、このように区画整理事業の完了を目前に控えている香椎駅周辺エリアだが、99年から始まった約20年間の事業期間内に、次第に失われつつあるものがある。それは、まちにとって何よりも重要な要素の1つである“人のにぎわい”だ。

 香椎に訪れた転機の1つが、国道3号沿いのアピロス香椎が、2000年1月に惜しまれつつも閉店となったことだ。これにより、国道3号側からセピア通りを通ってJR香椎駅方面へと向かう人の流れが減少。

 とくに、大規模な団地を擁する海岸沿いの御島崎エリアから、アピロスを通ってセピア通りに向かうという動線が完全に断たれてしまった。その後、アピロス跡地には再開発によって新たに分譲マンションができたことで、住民の増加による多少のにぎわい創出には寄与したと思われるが、失われてしまった活気を埋めるまでには至っていない。

 なお、元のアピロスがあった場所から西に約700mの香椎浜エリアには、03年11月にショッピングセンター「イオンモール香椎浜」が開業。アピロス香椎をはるかに超える規模の大型商業施設だが、距離的な問題のほか、そもそも大型駐車場を備えていることで直接乗り付ける買物客が大多数のため、香椎駅周辺エリアへの直接的なにぎわいの創出にはつながっていない模様だ。こうしてアピロス閉店によって、西鉄香椎駅以西のにぎわいが激減してしまった。

 また、03年7月のJR千早駅の開業と、翌04年8月の西鉄千早駅(名香野駅から改称)の移転開業により、千早でJR駅と西鉄駅が接続したことも大きい。以前であれば、福岡都市圏東部においては、JR線路と西鉄線路とが最も接近していた場所が香椎だったことで、JRと西鉄との乗り換えのために、それなりの人数が香椎の街中を移動していた。だが、その乗換拠点の座が千早駅に奪われたことで、また香椎の街中から人の往来が減少してしまうことになった。

 それでも、当初の香椎副都心整備計画で掲げられていたように、千早と香椎の2エリアを核とした“あれい構造”の広域拠点が形成されるのであれば、千早エリアが活性化することで、その恩恵が香椎にももたらされるはずだった。だが、2つのエリアを結ぶ交流ゾーンの要となるはずの都市計画道路・千早香椎線は現在、香椎側からは香椎川の手前までで整備がストップ。

 一方の千早側からも、香椎宮前線(香椎参道)までで止まっており、その間の約220mの区間の整備は手付かずの状況だ。この区間に関しては、区画整理事業の施行地区界の範囲からも外れているほか、市の道路整備アクションプランのなかでも、まだ整備着手のメドが立っていない。

街中からは店舗が減り、人の往来もまばらに
街中からは店舗が減り、人の往来もまばらに

 さらに、区画整理の進行にともない、都市計画道路や区画道路にかかる立地の商業ビルなどが解体・撤去され、入居テナントなどが退去を余儀なくされている。こうして、セピア通りも含めた香椎駅周辺から商業店舗が減少。

 区画道路の整備が行われたキラキラ通りとみゆき通りの両商店街でも、かつての雑多ながらも活気のあった光景は姿を消し、今では残っている店舗がポツポツと営業している状況だ。香椎エリアに立地する商店街組織の連合体である香椎商工連盟によると、ここ10年間で加盟する事業者の数は、ほぼ半減してしまったという。

駐車場として暫定利用されている土地も多い
駐車場として暫定利用されている土地も多い

 また、天神や博多などと比べてもそれほど変わらないほど、香椎の地価や家賃設定は高額で、「香椎で商売をしたい」と思っても、外からの新規の事業者はなかなか進出しづらいという。街中から人の往来が減っていることも、商売的にはマイナス要素。そのため、区画整理にともなって更地になった土地でも、元あった商業ビルなどを再建せず、駐車場などの暫定利用で様子見しているところも多い。魅力的な商店がないから客足が遠のき、それがさらに新規出店をためらわせるという“負のスパイラル”状態に陥っているといえよう。

(つづく)
【坂田 憲治】

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