2024年03月29日( 金 )

区画整理完了はスタートライン 香椎はにぎわいを取り戻せるか――(4)

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住民の増加とともに新たなにぎわい創出へ

 こうして、現状はにぎわいや活気が失われてしまっている感のある香椎駅周辺だが、復活への希望がないわけではない。

 たとえば、区画整理の完了している箇所や周辺エリアでは、マンションを始めとした住居開発が進行。新たな保育所・保育園などもできており、子育て世代を中心とした住民が増えてきているという。住民が増えれば、通勤や通学などでの駅への移動で、街中を往来する人の数も増加。自然と、にぎわいも生まれてくるというものだ。

 現在、JR駅前などでは、すでに数棟のマンション建設も進行しており、完成すれば新たな住民の増加とともに、街中の活性化に寄与してくれることだろう。

 また、香椎は歴史あるまちだけに、古くからの住民の熱意や結束力も高い。地元の香椎校区自治協議会や香椎商工連盟でも、香椎を盛り上げようとさまざまなイベントなどを企画しており、19年12月には香椎駅前で初となるクリスマスマーケットを開催。

 20年4月25日には、都市高延伸工事のため2年間の中止を余儀なくされていた「東区花火大会」も復活する。ほかにも、「香椎灯明まつり」や「香椎ごちそうマルシェ」「『点と線』香椎桜まつり」「五月病を吹き飛ばせin香椎」など、季節ごとに多彩なイベントが催されている。こうした地元民が、自らの地域を盛り上げようとする熱意は、まちづくりにとって何ものにも代え難い重要な要素だ。

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 区画整理事業の進行とともに行われる既存建物の解体撤去などによって、街中に空地が増加し、一時的に人のにぎわいが失われてしまうのは、ある意味で仕方のない部分もある。

 現在の香椎は、“幼虫”から“蝶”へと羽化するための端境期である“サナギ”状態であり、まちが生まれ変わるための“通過儀礼”の真っ最中だともいえよう。東部広域拠点の一端を担う香椎エリアのポテンシャルは、まだまだ高いはずだ。今後、区画整理事業の完了をスタートラインとして始まる、“新たな香椎”に期待したい。

香椎エリアMAP
※クリックで拡大
香椎エリアMAP

(了)
【坂田 憲治】

福岡市住宅都市局 香椎振興整備事務所
計画課長 末次 敏弘 氏

香椎振興整備事務所・末次課長
香椎振興整備事務所
末次課長

 現在、新たな香椎の“骨格”については、ほとんどできあがっており、今後は細かな仕上げの工事や、換地処分などを行い、事業の完了となります。行政としてはここで1つの区切りを迎えるわけですが、その後に登記簿の書き換えなどの手続き関連や清算金の交付・徴収などもありますので、最後までしっかりとやっていきます。

 まちづくりの観点からいくと、区画整理事業の完了はあくまでスタート地点であって、これから住民の方々がまちをつくり上げていくフェーズに入っていきます。香椎では、住民の方々や商業を営んでいる方々が、地域に愛着をもち、熱意をもってまちづくりに取り組まれていることを強く感じます。皆さまの熱意のある取り組みにより、香椎のまちが、さらにすばらしいまちになっていくのではないかと、期待しています。

香椎校区自治協議会
会長 田代 恒久 氏

香椎校区自治協議会・田代会長
香椎校区自治協議会
田代会長

 今回の区画整理事業で新たに公園が3つできますが、そのうちの香椎駅前西公園では、舞台を設けてもらい、地域のお祭りやイベント時に活用しています。

 新たなまちの骨格はできつつありますので、これから地元も一丸となってまちづくりを進めていくわけですが、その際に重要なのは「どのようにまちを発展させていきたいか」というベクトルの統一です。核となる大型施設や魅力的な専門店などを誘致して、地元だけでなく外からも、多くの人が香椎へと足を運んでくれるようになればいいですね。

 今、香椎で育っている子どもたちが、大人になってからも「香椎に住みたい」と戻ってきてくれるような、そんな魅力あふれるまちになっていってほしいと思っています。

香椎商工連盟
会長 吉本 清 氏

香椎商工連盟・吉本会長
香椎商工連盟
吉本会長

 これから新たな香椎のまちが形成されていきますが、商工連盟としては、新たに建つマンションなどについては1階部分を店舗にしてもらうことなどを要請していきたいと思っています。

 まちの活性化にとって、新しい人や若い人の力は欠かせません。ですが、来てもらわないことには、香椎の良さはわかってもらえませんので、外から人を呼びこむようなイベントは、今後もコンスタントに実施していきたいと思います。

 これから香椎のまちが、新たに生まれ変わっていきます。願わくは、毎日が筥崎宮の放生会のようににぎわっていた、“昭和のころの香椎”を取り戻したいですね。

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