2022年06月28日( 火 )
by データ・マックス

債権法改正 定型約款に関する新ルール

岡本綜合法律事務所 代表 岡本 成史 氏
岡本綜合法律事務所 代表 岡本 成史 氏

 鉄道やバスの運送約款、保険約款やインターネット通販サイトの利用規約など現代の社会では、不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者が、あらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき、この約款に基づいて契約を締結することが少なくありません。

 民法の原則では、契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されないことになりますが、約款は、大量の取引を迅速に行うために、あらかじめ定められた画一的な約款の条項に拘束力を認めるところに意義があります。しかし、これまでの民法には約款を用いた取引に関する規定がありませんでした。

 今回の民法の改正では、このような実情を踏まえ、新たに「定型約款」に関するルールを新しく定めています。「定型約款」は次の要件を満たすものをいいます。

(1)特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、
(2)内容の全部または一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの((1)と(2)を満たす取引を「定型取引」という)
(3)定型取引の契約内容とすることを目的に、特定の者により準備された条項の総体

 従って冒頭に掲げた運送約款、保険約款などは定型約款に当たると考えられますが、不特定多数の者を相手にしないもの、当事者間で個別的にその条項を検討するようなことが予定されているもの(たとえば契約書の雛形など)は、「定型約款」には該当しません。定型約款に該当すれば、顧客が定型約款にどのような条項が含まれているか認識していなくても、(1)「定型約款」を契約の内容とすることを合意した場合や、(2)あらかじめその「定型約款」を契約の内容とすることを顧客に「表示」していたときには、「定型約款」の個別の条項についても合意したものとみなされます。

 なお、このように事業者にとってメリットが大きいですが、他方で取引の相手方になる顧客を保護する必要もあります。そこで、定型約款の条項のうち、(1)相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項で、(2)その定型取引の態様およびその実情ならびに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものについては、合意をしなかったものとみなすとされています。

 現在、取引に「約款」などを利用されている事業者は、まず自社で利用されている約款などが前記「定型約款」に該当するかを検討し、「定型約款」に該当する場合には、顧客に一方的に不利益な契約条項がないかを検討する必要があることになります。

 なお、継続的な取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応して、定型約款の内容を事後的に変更する必要が生ずることがあります。しかし、民法の原則では、契約内容を事後的に変更するには、個別に相手方の承諾を得る必要があり、多数の顧客と個別に変更について合意するのは、現実的には困難と思われます。そこで、今回の民法改正において、次の要件を満たす場合には、一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることが規定されました。

(1)変更が相手方の一般の利益に適合する場合
(2)変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的な場合

 なお、現在も約款中に「当社都合で変更する」ことがある旨を記載されていることが多いかと思いますが、このような記載があっても、一方的に変更ができるわけではなく、変更が合理的である必要がありますので、ご注意ください。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表

 1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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