凄味ある経営者(6)生まれ故郷の活性化に一生を賭けた男 アスミオ.社長・吉岡澄男氏
吉岡氏の近隣に住んで38年
筆者は西区野方に住んで38年になる。福岡市住宅供給公社の最後の戸建分譲の物件を購入した(建物の建築・企画は当方が行った)。
当初、会社へは夫婦それぞれ車で通勤していた。お酒を飲んだ日は、地下鉄1号線の姪浜駅まで乗って、そこからはタクシーで帰っていた。自宅までは約3.5kmと結構な距離がある。中洲から姪浜までが約10kmであることを考えれば、姪浜に到着してからもタクシーで「もう一走り」が必要な場所だったのだ。それゆえ、野方というか道隈地区の栄枯盛衰を38年間、目撃してきた。当時は西鉄バス野方操車場周辺が、たまり場であった。
変化の初めは都市外環状道路の貫通、
続いて地下鉄3号線の開通
かつて周辺には田畑が広がっていたが、都市外環状道路の整備が進むにつれて開発のピッチが上がり、風景は一変した。さらに様変わりを加速させたのは、2005年に橋本まで地下鉄3号線が開通したことである。今では貫通道路ができたので自宅から18分で行ける。当時は回り道をして25分かかっていた。道路の周りは田んぼが大半であったから夏場の朝6時半ごろは「蛙の大合唱」であった。橋本駅までの道路が整備されて周辺には店舗の進出が相次ぎ、人通りが増えてきた。
博多駅まで開通して「収益真っ黒」へ
天神南駅からわずかな距離しかないが、博多駅まで開通した。一転して混雑が極まってきた。たとえば2月27日のことである。櫛田神社前駅から午後9時10分前後に電車に乗って橋本駅に向かった。すると驚いたことに茶山駅まで立っている乗客であふれていた。こうなると橋本駅周辺(姪浜までの延長は時間の問題である)の本格的な再開発が求められることになる。
そこで立ち上がったのがアスミオ.(株)吉岡澄男社長である。「我が生まれ育った故郷に恩返しをしよう」と立ち上がったのである。
西区・橋本駅前で区画整理が佳境
地場企業が進める未来志向のまちづくり
アスミオ.(株)
代表取締役 吉岡澄男 氏
福岡市地下鉄七隈線の起点である橋本駅の駅前で現在、土地区画整理事業の進行とともに新たなまちづくりが進もうとしている。その大きな立役者であり、一帯の開発の牽引役を務めているのが、この地を拠点として事業を営んできた総合建設会社のアスミオ.(株)だ。同社代表取締役・吉岡澄男氏に、この地で進むまちづくりへの思いを聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)
区画整理事業が佳境
駅前には新本社ビルも
代表取締役 吉岡澄男 氏
──現在、橋本駅前での区画整理事業が佳境を迎えています。この地で生まれ育ち、事業を営まれてこられた吉岡社長からすると、万感の思いではないでしょうか。
吉岡 おっしゃるように、いよいよここまできたか、という思いですね。現在進んでいる「橋本駅前土地区画整理事業」には当社も参画していますが、約20年前から土地区画整理の検討が開始され、準備組合の設立や土地区画組合の設立認可を経て、2020年度から土地区画整理事業がスタートしました。26年度末までの事業期間で、橋本駅前の約7.3haの整備を行っていくものですが、すでに24年5月からは駅前広場が供用開始となり、都市計画道路などのインフラ整備も徐々に進んできています。また、エリア内では大和ハウス工業(株)と西日本鉄道(株)が共同で商住一体型の分譲マンションの開発を進めていますが、かなり注目を集めているようです。
──「橋本駅前周辺のマンションがかなりの注目を集める」なんて、以前はとても信じられませんでしたが、ここまでの街になったきっかけは、何だったと思われますか。
吉岡 やはり一番の転機は、福岡市地下鉄七隈線が開通し、橋本駅が開業したことだと思います。それまでの橋本エリアは、少し離れれば住宅供給公社の開発した壱岐団地などの市街地もありましたが、現在の駅周辺の多くはいわゆる市街化調整区域で、ほとんど開発が進まず田畑が広がっていました。当時は周辺の農家の方々から、「ウチの田んぼを買ってくれんか」と頼まれることも多かったです。
それが05年の地下鉄・七隈線の開通と橋本駅の開業を契機に、大きく潮目が変わりました。その後に福岡外環状道路や福岡高速5号線(都市高速)もできましたし、その沿線では大型商業施設「木の葉モール橋本」をはじめ、商業店舗が軒を連ねています。ただ、それでも橋本駅前の一帯では、なかなか開発が進んでこなかったのですが、今回の土地区画整理事業が完了すれば、新たなまちづくりが順次進んでいくと思われます。
──その橋本駅前で、御社の新本社ビルも計画されているそうですね。
吉岡 区画整理事業のエリア内に当社の新本社ビルの計画を進めています。新本社ビルは、天神ビジネスセンターのデザイン・監修を担当した重松象平氏がセンター長を務める九州大学大学院の研究・教育センター「BeCAT」と共同で、デザインやコンセプトなどの検討・設計を行ってきたもので、RC造・地上15階・地下1階建となる計画です。中層部に当社の本社が入るほか、低層部は大胆な緑化を施した商業フロアに、高層部は賃貸マンションフロアとなる予定で、橋本駅前の新たなランドマークにふさわしいビルにしていきたいと思います。施工は自社で行い、今年5月に着工して29年に完成予定です。
また当社では、エリア内にさらに2カ所の土地を有しています。こちらについては用途の検討を重ねたうえで、新本社ビルの完成後に何かしらの開発を進めていく予定です。
総合建設会社からまちづくりの領域へ
──総合建設会社としての御社の事業については、いかがですか。
吉岡 当社の創業時は、博多湾の埋め立て工事における土砂運搬などを担っていましたが、そこから土木、建築、工事開発、環境まで広域に事業を展開していき、さまざまな建築物や都市インフラなどを手がけながら、総合建設会社としての豊富な施工実績を残してきました。また現在は、ビル賃貸や不動産管理などのストックビジネスの事業の展開も進めています。自分たちで企画し、所有し、管理する──こうした「総合プロデュース」の領域こそが、地元の利を知り尽くした当社の強みだと考えています。そして、この強みを生かすかたちで力を入れているのが、まちづくりへの関わりです。
その一例として、たとえば宮若市では約38haもの広大な土地を取りまとめて、25年夏から「四郎丸工業団地」としての開発を進めているところです。ここは九州自動車道・若宮ICからも近いことで利便性が高く、倉庫・物流用地に適しており、この開発事業を通じて優良な企業を呼び込んで雇用を創出することで、このエリアにおける未来のまちづくりの礎になればと思っています。
──最後に、これからの展望をお聞かせください。
吉岡 橋本駅前での区画整理事業が完了すれば、新たなまちづくりが進んでいくことになります。その南側では、さらに広大なエリアで新たな土地区画整理事業の検討も行われていますし、橋本駅の周辺はこれからさらに発展していくと思います。ですが、この地が街として成熟するまでには、まだまだ時間がかかります。このまちづくりをきちんとやり上げることが、私の役目だと思っています。
当社の社名である「アスミオ.」には、「未来志向で明日を見よう」という意味合いも込められています。まずは、現在の区画整理事業の完了と新本社ビルの完成を当面の目標として、その先の未来も見据えながら、今後も事業を通じたまちづくりというかたちで、地域社会に貢献し続けていきたいと考えています。
【文・構成:坂田憲治】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉岡澄男
所在地:福岡市西区大字羽根戸159-4
設 立:1981年4月
資本金:9,800万円
URL:http://www.asumio.jp/
<プロフィール>
吉岡澄男(よしおか・すみお)
1951年5月、福岡市出身。前職での経験を基に、81年4月に(株)澄男工業として設立。2013年5月にアスミオ.(株)へ商号変更した。








