2024年04月16日( 火 )

アロマセラピーで認知症を予防・改善(前)

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星薬科大学先端生命科学研究所ペプチド創薬研究室
特任教授 塩田 清二

 認知症にかかわる医療費は15兆円に上り、国民経済を大きく圧迫している。2025年には、団塊の世代が75歳を迎え、認知症患者数は爆発的に増大していくとみられている。そんななか近年の研究で、アロマセラピーによって、認知症およびその前段階の人(フレイル)の脳機能を活性化し、認知機能の改善を図れるということがわかってきた。星薬科大学先端生命科学研究所ペプチド創薬研究室特任教授・塩田清二氏に解説してもらった。

アルツハイマー病と嗅覚障がいの相関性

 超高齢化の進んでいる日本において、認知症患者の急激な増加は医療費を圧迫し、看護や介護を行う人たちにも大きな負担となっている。

 最近の新聞報道では、認知症にかかわる医療費は15兆円にもなり、国民経済を大きく圧迫していることが知られている。さらに2025年には、団塊の世代が75歳を迎えることになり、認知症患者数は爆発的に増大していくことは間違いない。

 認知症あるいはパーキンソン病などの患者さんは、嗅覚が障害されている場合が多いといわれている。我々は、NIRS(光トポグラフィー)という最近開発された装置を用いて、近赤外光を脳に照射して、とくに大脳皮質の脳血流量を測定している。この装置を使った実験によると、アロマセラピーによって、認知症およびその前段階の人(フレイル)の脳機能を活性化し、認知機能の改善を図れるという結果が出てきている。 

 認知症は、何らかの外的および内的原因により脳の記憶などに関わる神経細胞の機能低下が生じたり消失したりしたために、記憶力や注意力などの知的能力が障害された状態になることであるといえる。

 認知症の多くは、脳の器質的な変性をその病因としている。たとえばアルツハイマー病では、全般的な脳の萎縮や脳室の拡大が見られ、最も顕著な神経変性は、海馬やその領域にみられ、アルツハイマー病特有の物忘れと対応していると考えられている。

 とくに近年、注目される臨床症状として、アルツハイマー病による嗅覚障害がある。これは以前より指摘されており、アルツハイマー病のごく初期に嗅脳の委縮とその機能低下がみられることが注目されていた。

 またアルツハイマー病の重症度が、嗅覚障がいの重症度と明らかに相関性のあることが多くの研究で報告されている。さらに加齢にともない、健常者でも嗅覚機能の低下がみらえることもわかってきている。

(つづく)

参考文献:『<香り>はなぜ脳に効くのか アロマセラピーと先端医療』塩田清二著(NHK出版新書)2012刊

<プロフィール>
塩田 清二 (しおだ・せいじ)

 早稲田大学卒業後、新潟大学大学院修士課程修了。昭和大学医学部にて医学博士号を取得(1983年)。アメリカのチューレン大学客員教授、昭和大学医学部顕微解剖学講座主任教授(1999年〜2015年)を経て現在、星薬科大学特任教授。2018年に中国ハルビン医科大学の客員教授に就任。日本アロマセラピー学会名誉理事長、糖尿病肥満動物学会の名誉会員。「米田賞」「後藤賞」を授与。VIP/PACAP関連ペプチドおよびRegulatory Peptides国際学会の理事。英文原著論は500を超える。

(後)

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