2024年04月25日( 木 )

【検証】「ゴーン国外脱出」~人質司法の後に来るもの「無限裁判」(後)

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 現在、日本人が感覚的にゴーンの裁判が行われないことを納得している背景にはこのような裁判手続の本質に対する大きな無知誤解が原因である。

 以上の明白な事実は、民事訴訟法学者であれば、瞬時にして判断できる。しかし、黙認するだろう。このようにして、犯罪を裁くべき刑事裁判所が、検察官の犯罪を隠蔽するため、刑事訴訟法を曲解して歴史に残る大犯罪を敢行する。

 日本国民の目は騙せても世界の良識を欺くことはできない。日本の法律学者全員が恥をかき、日本国民が恥をかく。ゴーンは名誉回復のため、世界に向けてこの事実を知らしめる。

 上記二件の裁判所犯罪が深くゴーン事件に関係関連しているという事実には単に歴史の偶然とは割り切れない不可思議な思いを禁じ得ない。

 結局、裁判所が自ら法の規定を踏みにじることになるのだが、日本には事実上「誠実な」刑事訴訟法学者は存在しないようであるから、このような裁判官による法律違反が横行する。この論文を見た大学で刑事訴訟法を教えている学者ならぜひ反論していただきたいと思う。

 日本で有数の経済団体の代表者がゴーンの国外脱出について意見を求められ、「正々堂々と日本の裁判を受けてもらいたかった」とコメントした。テレビドラマの見過ぎでなければ、正真正銘の無知無能である。

 日本では過去、多数の冤罪が発生した。有名な甲山事件では事件発生から被告人全員が無罪を勝ち取るまで25年を要した。以下主な冤罪事件の判決確定までを示せば松川事件14年(無罪)・名張ブドウ酒事件12年(死刑)・八海事件17年(無罪)狭山事件14年(無期懲役)である。

 65歳のゴーンが無罪を勝ち取るまでに平均でも15年は優にかかる。80歳のときに無罪を勝ち取って、人生に意味があるか。その前に獄死(一審で有罪となれば直ちに収監される)する可能性すらある。冤罪かどうかは別にして、アメリカ議会でのアメリカ商人の証言で有罪とされた田中角栄元総理大臣は裁判が確定する前に死去した。そのため、公訴棄却(裁判の打ち切り)となった。逮捕起訴され被告人となった田中角栄はついに汚名を晴らすことなく鬼籍の人となった。

 このようなむごい事実が多数ある日本の刑事裁判史である。「正々堂々と」という発想自体が無知無能の結果という他ない。日本有数の経済団体の代表者といえば、日本では「学識経験者」でもトップクラスの人である。

 以上の事実が海外に報道されれば、日本人全体の名誉が貶められることは想像に難くない。国民は今こそ、「井の中の蛙」から脱皮して文明先進国の仲間入りを目指さなければならない。

 ほかに有力な証拠がないうえ、従来まで有力な証拠とされてきた自白がない裁判では裁判所も無罪の判決を出すしかない。しかし、それは検察と手を組んできた裁判所としては責任を問われることは間違いない。そこで裁判所が選択する訴訟指揮は可能な限り、裁判を長期化することである。高齢な被告人であれば、判決を出すまえに死去してくれるかもしれない。途中で退官時期も来るかもしれないし、転任もある。被告人の人権など、裁判官はまったく考えていない。無罪判決を出せば身内から、有罪判決を出せば世間から、批判をうける。これを避けるには、ひたすら裁判を長期化するほかない。

 被告人の迅速な裁判を受ける権利は憲法で保障された権利である(37条1項)。公判期日不指定が5年という異常な期間ではあるが、判例もある(高田事件)。本件は検察の証拠開示の拒否という違法行為が理由の期日不指定であるから、1年2カ月でも憲法違反となることは明白である。マスコミをはじめとする世論の喚起が必要である。日本のマスコミが刑事被告人の権利保護とはまったく逆の方向を向いていることを世界の良識は知っている。今後、世界の良識による日本のゴーン裁判のあり方に対する批判は厳しいものとなる。

(この項了)
【凡学 一生】

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