2024年05月01日( 水 )

【検証】「ゴーン国外脱出」~天気晴朗なれど視界不良

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 検察からのリーク情報でしか記事を書けない検察御用達報道機関は、検察がだんまりを決め込んでいる現状、ゴーン事件はまるで山村の廃屋の様相を呈している。

 そんな中、検察が弘中弁護士事務所を家宅捜索したと報道された。今、報道機関が報道しなければならないのは、なぜ裁判所はゴーン、ケリー、日産の裁判の公判期日を決めないのか、これらの裁判はどうなるのか、どうする気なのか、であり、それを裁判所に問いたださねばならない。

 刑事被告人の基本的権利は「有罪か無罪か」を迅速に公平公正な裁判で確定してもらうことであり、裁判所にはその義務がある。とくに無罪を主張する刑事被告人にとっては迅速な裁判による事件の確定は名誉回復のためにも絶対的に必要なことである。

現在地不明

 国民は事件がさっぱり見えない。天気晴朗なれど視界不良である。それは完全に事件が曖昧世界に誘導されつつあるからである。これが人質司法に失敗し、無罪の判決しかない裁判の終局を何としてでも回避したい検察と裁判所の「ご意向」なのである。

整理整頓

 検察による弘中事務所の強制捜査はまったく茶番であり、世間の目をくらますための猿芝居でしかない。しかし、大きく報道するジャーナリストにはそれが見えない。それは事件全体の展望がなく、ただ右往左往しているだけだからである。

法的な視点の必要

 刑事被告人の管理監督権は事件の管轄権のある裁判官(裁判体)にある。裁判官は必要な限度で被告人を収監するが、原則としては保釈しなければならない。もちろん、検察官が逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れを理由に保釈に反対するから、その妥協点として保釈条件を付して保釈する。これは裁判官の訴訟指揮権の行使である。

 ゴーンは保釈中に保釈条件に違反して国外逃走した。これは明らかに保釈条件違反であるから検察の請求により、または職権で保釈が取り消されて当然である。また、無審査国外逃走自体が1つの犯罪行為であるから、保釈中の刑事被告人が新たに罪を犯せば、保釈が取消になるのは当然である。問題はこれからである。ゴーンが国内にいれば直ちに収監されるが、国外のため収監ができない。これはどうすることもできない。では裁判所はどうすべきか。それを示しているのが刑訴法286条の2である。

第286条の2

 被告人が出頭しなければ開廷することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否し、刑事施設職員による引致を著しく困難にしたときは、裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる。

 つまり、被告人の出頭不能は公判手続き進行の阻害事由にはならないから、裁判官は公判手続きを進めなければならない。

 さて、ゴーンが保釈中に犯した新たな犯罪について、検察には当然、捜査権がある。しかし、密出国してすでに外国にいる人間について密出国罪の犯罪捜査をして何の意味があるのか。もちろん現在、40日以内にICPO規定により、裁判をレバノンで開くか日本で開くかの合意の締結が迫られているが、それはあくまで、入管法違反の犯罪についてであって、ゴーンがすでに起訴されている3つの犯罪についてではない。

 おそらくゴーンは入国管理法違反行為自体については認めるが、それは人質司法といわれる人道に反する刑事手続きから逃れるための正当防衛手段であったとして、無罪を主張するであろう。

 そうであれば、やはり、すでに起訴されている3件の事件について公判手続きを進め、ゴーンの正当防衛の主張の当否について黒白をつけなければならない。

 誰が見ても裁判所が「今すぐ」やらなければならないことは公判手続きの進行である。

【凡学 一生】

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