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2020年02月21日 11:00

コンビニ業界大激変時代~月刊コンビニ 編集委員 梅澤 聡 氏(4)

 コンビニ深夜休業の是非。各方面からさまざまな“論客”が参戦してメディアを賑わせた。誰もが毎日のように利用するコンビニ。1日1店舗の利用客数を800~1,000人、全店舗数を5万8,000とすると、毎日5,000万人がコンビニを訪れている計算になる。国民の生活の一部に組み込まれたコンビニが今、内部で深刻な問題を抱えている。一連のメディア報道が人々に不安を与えたことはたしかだろう。コンビニ業界は今後どこへ向かうのか。

「ゴールド」シリーズ強化で客単価と目的来店性を高める

 家庭の惣菜需要が、客数や、とりわけ買上点数に貢献してきた。もう一方の客単価を高める施策が「一品単価」の向上である。育ち盛りの子どもを複数抱える一般的な家庭では、価格訴求の強いスーパーマーケットや、ドラッグストアの食品に目が行くのは仕方がない。しかし、少量でいいからおいしいものを食べたい高齢世帯、価格の安さより利便性重視の共働き世帯に対しては「品質の高さ」を訴求できる。セブン-イレブンの(前出の)高橋氏は10月の消費増税を前に次のような商品政策を示している。

 「価格競争に巻き込まれるつもりはない。戦うべきはセブン-イレブンに求められているニーズであり“価値”でしかない。セブン-イレブンに足を運んでいただく理由は、質の高い商品が値頃感をもって手に入ること。価値のある商品を、セブン-イレブンだったら安心して買える、このメッセージを、より強固にしていく。消費増税になると消費が冷え込む、価格はどうするの? 値下げするの? もっとポイントを付けるの? こうした議論を中心に置いては、現状のマーケットでセブン-イレブンは戦えないし、そこに主戦場はないと考えている」(高橋氏)。

 そこでセブンはワンランク上の商品開発に力を注いでいる。07年にスタートさせたグループ共通PB(プライベートブランド)「セブンプレミアム」は、10年にワンランク品質を向上させた「セブンプレミアムゴールド」を加えている。PBの品質を追求する象徴的な商品をセブンプレミアムゴールド(金の~)と位置付けて、高品質、それにともなう高単価の商品を強化していく。

 考え方として「ゴールド」の導入は、セブンプレミアムが定着している分野を対象にしていく。わかりやすい例でいえば、チルド温度帯の袋系惣菜の「金のビーフカレー」「金の直火焼ハンバーグ」各360円(税抜、以下同)である。いずれも、そのワンランク下のセブンプレミアムにおいて、100円台から200円台の商品が定着している分野である。それらのベースが支持を得たことで、次に品質的に頂点に立つ「金の~」が発売できたのだ。

 ゴールドのなかで最も成功したといわれる「金の食パン」にしても「セブンブレッド3枚入」88円や「しっとり食パン6枚入」100円が売れているなかで、19年4月に「もっちり食感 金の食パン厚切り2枚」138円、「もっちり食感 金の食パン厚切り4枚」275円をリニューアル発売している。

セブンの「金の食パン」
セブンの「金の食パン」

 リニューアルして値上げとする一方で品質の向上を図った。「今までの商品とはまったく違うものに変更した。そのままでもおいしく、とくに電子レンジで軽く温めて召し上がっていただく方法をお薦めしている」と当時の執行役員商品本部長・石橋誠一郎氏は語っている。

 セブンに限らずコンビニは全国のあらゆる立地に展開している。品質の向上と、それにともなう適正価格は加盟店も本部も望むところであり、従来のお手頃価格は残さなくてはいけないものの、高品質化を推進する姿勢がセブン-イレブンでは強い。

 創業期の70年代から80年代にかけて、今ほど弁当やサンドイッチなどのデイリー商品は強くなく、PB商品もほとんどない時代に、コンビニは「欲しい時に欲しい商品が欲しい量だけ」買えることを他の業態との差別化にしていた。長時間営業はコンビニの独壇場であり、1機能1アイテムを基本に、欠品は絶対にNGとしてお客の期待に応えていた。

 スーパーマーケットと比較して同じ商品が少々高くても、コンビニは存在価値を示してきた。仮に、コンビニが時短に向かい、食品廃棄を嫌って、売り切り御免になれば、創業時の強みが薄らぎ、残すはPB商品の訴求力が肝になってくる。セブン-イレブンの「金の食パン」や、最近であればローソンの「バスチー」といったヒット商品、目的来店性の強い商品を開発していく必要があるだろう。

(つづく)

<プロフィール>
梅澤 聡(うめざわ・さとし)

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中に『東京学生映画祭』を企画・開催(映画祭は継続中)。1989年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と飲食店巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。

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