2024年03月19日( 火 )

コンビニ業界大激変時代~月刊コンビニ 編集委員 梅澤 聡 氏(5)

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 コンビニ深夜休業の是非。各方面からさまざまな“論客”が参戦してメディアを賑わせた。誰もが毎日のように利用するコンビニ。1日1店舗の利用客数を800~1,000人、全店舗数を5万8,000とすると、毎日5,000万人がコンビニを訪れている計算になる。国民の生活の一部に組み込まれたコンビニが今、内部で深刻な問題を抱えている。一連のメディア報道が人々に不安を与えたことはたしかだろう。コンビニ業界は今後どこへ向かうのか。

セルフレジや売り場無人店舗で生産性をアップ

ローソン、夜間無人の入り口認証
ローソン、夜間無人の入り口認証

 チェーン本部がいま最も腐心するのが、店舗運営におけるコスト削減である。納品時の検品レスやスライド棚による作業軽減、食器洗い機の導入、カウンターフーズのセルフ販売、発注作業の軽減、キャッシュレスの推進など、さまざまな取り組みがあるが、19年度および20年度に最もわかりやすい改善が「レジ精算」の(セミ)セルフ化になるだろう。レジ精算の完全セルフ化は「売り場無人店舗」にもつながってくる。

 ローソンが19年8月23日から半年間をメドに深夜帯の売り場を無人にする実験を開始した。場所はローソン氷取沢町店(横浜市磯子区)で、午前0時から午前5時まで売り場に従業員を配置せずにお客にセルフ決済をしてもらう。実験店ではバックヤードに従業員1人を残して緊急時対応をする。半年間の実験期間中に安全・安心が担保できれば、バックヤードに人を置かずに深夜帯の完全無人化の実験も検討していく。

 まず入店時の確認には工夫を施した。QRコードによる認証方法と、顔撮影によって確認する方法の2つ。自動ドアの横に入店機器を設置し、入店方法の案内モニター、QRコードの読み取りリーダー、顔撮影用のカメラ、インターホン、これら4つで構成している。

 QRコードによる認証は、ローソンアプリのホーム画面上にあるQRコードを直接入店機器にかざすことで自動ドアが開くシステム。お得意さまに配布する入店カードは申込用紙に必要事項を記入してもらい従業員に渡すことで発行している。

ローソン、夜間無人のセルフレジ
ローソン、夜間無人のセルフレジ

 QRコードをもたないお客も入店できるように顔撮影による入店の装置を設置した。顔の撮影画像をAIが解析して、仮に人の顔と判断できなければ自動ドアを開けないようにした。顔撮影があれば、万が一、何かあったときは人物を特定できるので抑止力にもつながる。

 会計は通常の有人レジを休止して、スマホレジ、または自動釣銭機付きのセルフレジを利用してもらう。スマホレジは、商品に付いているバーコードをスマートフォンで読み取ってもらい決済する。18年4月からスタートさせ、ローソン1,000店舗を対象に導入を図っている。年齢確認が必要な酒、たばこは販売しない。売り場環境は防犯カメラを通常の2倍の17台に増設、映像はバックヤードにいる従業員が確認するほか、警備会社とも連携し、午前0時から午前5時までの間にモニタリングする。

 従業員は、時間中にお客との接点はなく、販売業務もサービス業務も清掃業務もないため、お客からの問い合わせも基本はない。時間帯ではなく、業務内容からコンビニの就労を敬遠していた高齢者などに、人手不足のおりアプローチできるかもしれない。

ローソンの夜間無人店舗
ローソンの夜間無人店舗
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(つづく)

<プロフィール>
梅澤 聡(うめざわ・さとし)

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中に『東京学生映画祭』を企画・開催(映画祭は継続中)。1989年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と飲食店巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。

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