2024年03月19日( 火 )

ひと・ちいき・まち「3つの健幸」を目指すメディカルコミュニティみやきプロジェクト

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公民連携でCCRC進める

 超高齢社会が進行する日本において、多くの地方自治体が直面しているのが、医療費や介護保険料などの社会保障費の増大による財政圧迫や、産業に従事する人手不足による地域の活力低下といった深刻な課題だ。こうした課題を解決するべく、自治体としてCCRC(生涯活躍のまち)の取り組みを積極的に進めているのが、佐賀県みやき町だ。

 同町は、2015年9月に「健幸長寿のまち」宣言を行った。「健幸」とは“健やか”と“幸せ”を組み合わせた造語であり、同宣言は「すべての人々が生涯にわたっていきいきと健やかで幸せに暮らせる」――まちづくりを進めていこうという決意表明にほかならない。町を挙げてさまざまな健康関連事業を展開することで、健康増進や統合医療による予防医療を推進。「高齢者が安心・健康で生涯活躍できるまち」であることをPRし、移住促進および定住人口増加につなげていく。また、公民連携のさまざまな方策によって活躍の場=雇用の場を提供できる仕組みをつくっていき、健康面・社会面両面でまちの魅力向上を果たそうとしている。

 その宣言を具現化していくため、同町では積極的に公民連携の取り組みを推進している。16年5月には(株)ディーエイチシーと社会医療法人天神会との三者で健康増進を目指す包括連携協定を結んで、「健幸マイレージ制度」を導入。町民の健康意識の向上や健康管理に役立てている。また、17年2月には調剤薬局を展開する(株)ミズおよび(株)ローソンと連携協定を結んでコンビニを活用した健康づくりサポートを行うほか、17年10月には鳥栖・三養基地区歯科医師会と協定し、口腔の健康づくりを進めてきた。18年4月には高齢者サポートなどを手がけるMIKAWAYA21(株)および町内の旧・三根町庁舎でコールセンター事業を手がけるみやきまち(株)と協定を結び、独居高齢者らをサポートする仕組みづくりをスタート。地域包括ケアシステムの構築にも乗り出した。さらに今年3月には、早急的な感染症予防などのために、(株)カドーおよび(株)ワンテンスとの三者連携協定を締結。矢継ぎ早の公民連携施策により、CCRCに向けて歩を進めている。
 そして現在、健幸長寿のまちづくりのシンボル的な施設として整備が進められているのが、医療・福祉・健康増進のための「メディカルコミュニティみやきプロジェクト」だ。

複合施設が21年春開業へ

「メディカルコミュニティみやき」イメージ
交流ホール

 「メディカルコミュニティみやきプロジェクト」は、同町大字白壁にある町営の温水プール施設「北茂安B&G海洋センター」の改修に合わせて、周辺一帯を再開発していくもの。コンセプトとして掲げているのは、予防医療と生活の向上による健康なからだづくりを行う「ひとの健幸」と、健康と医療を中心としたコミュニティづくりを行う「ちいきの健幸」、そして健幸長寿で次世代に継承するまちづくりを行う「まちの健幸」の“3つの健幸”を目指す包括的交流拠点。約1万9,000m2の敷地内に、屋外交流スペースとなる中庭を備えた鉄骨造2階建て・延床面積約5,200m2の複合施設を新設するほか、健康器具や遊具を備えた屋外運動スペースや多目的広場なども整備し、既存のプール施設とも併せて一体的な運営を行っていく。複合施設の整備は、施設完成後に所有権を町に移転するBT(Build Transfer)方式で行われ、(株)栗山建設、(株)九州PFIクリエイト、(株)石橋建築事務所、(有)エフケイエンジニアリング、(有)古賀建築測量設計事務所で構成される「(株)メディカルみやき」が手がける。施設開業は2021年春の予定。

 複合施設メディカルコミュニティみやきは、社会医療法人天神会が運営する診療所・デイケア・リハビリ施設を中核にした「医療・診療」のほか、トレーニングジムなどの「運動・健康増進」、地域包括支援センターなどの「福祉」、薬局などの「物販サービス」、そして「プール」の5つの分野で構成。施設内では最新の医療や健康づくりの情報などを随時発信し、町民の日々の生活のなかでの健康増進に役立ててもらう。加えて、医療・診療以外のさまざまな機能も盛り込むことで、町民に気軽に足を運んでもらえる地域コミュニティの核としての役割も担っていく。

 施設はすでに着工しており、来年春の開業予定に向けて整備が進められている。開業の暁には、同町のCCRCの取り組みがまた新たなステージを迎えそうだ。

【坂田 憲治】


■みやき町長 末安 伸之 氏

みやき町長 末安 伸之 氏

 現在の日本の医療は西洋医学がベースとなっており、「どこか身体の具合が悪くなったらお医者さんに診てもらい、抗生剤などの薬を処方してとりあえず治す」という対症療法が中心です。一方、日本の古くからの医療は東洋医学がベースで、漢方や鍼治療などによって免疫系に作用し、自己治癒力を引き出していくやり方でした。どちらの医療が優れているというわけではなく、それぞれの長所と短所をしっかりと理解したうえで、状況によって使い分けていくことが重要です。私は町長になる前に社会福祉法人に勤めていたときの経験から、この西洋医学と東洋医学を組み合わせた統合医療の取り組みを、いずれ行政のなかで実現したいと考えておりました。

 健幸長寿のまちづくりについては、これまでもさまざまな公民連携の取り組みのなかで進めてきましたが、今回進めているメディカルコミュニティみやきプロジェクトは、その拠点となる場所です。診療所や介護施設だけでなく、調剤薬局、鍼灸院、アロマ・エステ、トレーニングジム、温浴施設、プールなど多彩な機能を盛り込み、町民の方々がさまざまな目的で訪れる施設にしたいと思っております。そこでは、病気に罹らないための知識や情報、また罹ったとしても早期に回復できるための統合医療の情報などを発信し、町民の皆さまの日常生活のなかでの健康増進に役立てていただきたいと考えています。

 本町では今後も、施設整備だけでなく、さまざまな公民連携の取り組みを複合的に進めることで、健幸長寿のまちづくりの推進に注力していきます。

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