2024年05月27日( 月 )

未病と介護予防で地方創生へ 高齢者のQOL向上図る「日本型CCRC」とは

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NPO法人高齢者健康コミュニティ

 少子高齢化にともなう社会保障費の増大と税収の減少が、大きな問題となっています。高齢者の自立支援は、今後の国の医療介護財政状況と密接に関係しています。政府は、「高齢者ができる限り健康でその人らしく、最期まで住み慣れた場所で安心して暮らせる」~地域包括ケアシステムの構築を方針として打ち出しており、これから高齢者ケアの考え方が大きく変わろうとしています(【表】参照)。

 一方で、超高齢化が進行していくなかで、我が国が考えていかなければならないのが、企業の経済成長です。「企業の目的は顧客の創造である」とは経営学の父であるP・Fドラッカーの言葉ですが、そのために企業はマーケティングとイノベーションという2つの基本的な機能を考えていかなければなりません。

 高齢者の自立支援についてマーケティングの視点から考えた場合、欧米と比べて我が国では、未病・介護予防を中心とした「健康型高齢者住宅」がほとんど整備されていないのが現状です。この健康型高齢者住宅は、地域包括ケアシステムを構築していくなかで、高齢者の尊厳を遵守するとともに自立を促していくうえで、重要な要素になります。そのため、高齢者ケアのなかでも、今後の成長が見込まれる市場だと思われます。

 健康型高齢者住宅の開発のヒントになるのが、米国の「CCRC」です。CCRCとは、体力や記憶力が衰えていく高齢者に対して、同じ敷地内で最期まで継続したケアを提供可能な総合施設であり、「Continuing Care Retirement Community」の頭文字をとったもので、「継続したケアを提供する高齢者の生活共同体」と訳せます。私どもは、CCRCを「高齢者健康コミュニティ」としました。具体的には、継続した生活支援・健康支援・医療・介護サービスを提供することで、高齢者の尊厳を守りながらも、できる限り自立して健康かつ快適に暮らすことのできる「健康型高齢者住宅」を中心とした総合的サービス施設です(【図1】参照)。

 米国にはCCRCがおよそ2,000カ所あり、80万人程度の高齢者がCCRCで暮らしているといわれています。CCRCには、「健康型住宅」のほかに、高齢者の医療・介護ニーズに応じて対応できる「支援型住宅」、看取りまでできる「介護型住宅」の3つの高齢者住宅があります(【図2】参照)。見慣れたスタッフと最期まで同じ場所で暮らすことは、適応能力が低下した高齢者の生活環境の変化による精神的な落ち込み、認知症の進行(トランスファーショック)を予防することにも寄与するといわれています。CCRCの予防効果として、(1)「寝たきりになる確率の低減」、(2)「急性期病院からの早期退院」、(3)「医療介護費用の低減」などが挙げられています。

 我が国では、土地のコストを考えると、CCRCの機能を1つの敷地で提供することは容易ではありません。そこで私どもは、医療介護サービスを提供する複合施設を拠点とし、健康型高齢者住宅を開発するとともに、地域の高齢者の自宅もネットワークでつなぎ、地域包括ケアシステムの機能を満たす「日本型CCRC」を提案しています。具体例を紹介しますと、複数の医療・介護施設を運営する佐賀県のある医療法人では、中心となる地域に病院や在宅クリニック、訪問看護ステーションを据え、その近隣に通所介護や住宅型有料老人ホーム、グループホーム、宅老所を配置することで、地域での在宅医療介護サービスを提供。これによって、日本型CCRCのモデルを形成しようとしています。今後は新しい宅老所などを含めた「健康型高齢者住宅」を充実させ、地域高齢者の自立支援を促進していくことを検討しています。

 高齢者の自立支援ニーズが高まるなかで、医療と介護を統合した自立支援を行う健康型高齢者住宅を取り入れた「日本型CCRC」は、新しい市場・顧客を創造するとともに、地方創生の解決策の1つとなると考えられます。


Profile
窪田 昌行
(くぼた・まさゆき)
鹿児島出身。1981年、九州大学工学部大学院修了(工学修士)、93年、ペンシルバニア大学ウォートンスクール終了(MBA)、2000年に岡山大学医学部(医学博士)。建設会社の病院企画・計画担当、経営コンサルタントを経て、06年に産学連携で医療福祉経営マーケティング研究会を設立。14年に日本型CCRCの理念・仕組みの普及と人材育成の場の構築のためにNPO法人高齢者健康コミュニティを設立し、理事長を務めている。

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