2024年05月27日( 月 )

住民のための地域医療とは――

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 超高齢化社会に突入し、疾病カテゴリーの細分化や治療方法が広がる昨今、患者が求める治療ニーズも変化している。その対応として医療の先進・高度化が進む一方、地方の医療施設による一貫治療が困難となっており、地域ぐるみの医療機関との連携が必須課題となっている。

2025年までに地域医療を整備

 地域医療とは、地域住民のための生活支援活動として、地域という枠組みの再構築や、住民が主体となって参加する地域医療づくり、地域医療を担う総合医の育成、地域医療機関の機能分化と連携を支援する体制構築などを推進する取り組みで、医療機関における疾患の治療やケアにとどまらない概念を指す。

 内閣府が公表した2019年度の「高齢社会白書」によれば、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.0%、75歳以上人口は14.2%。今後も高齢化が急速に進行していくと見られており、65年には国民の約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になると推計されている。一方で、地方の都市部近郊においては、地域の過疎化や医師不足による統廃合が加速。救急などで入院する患者の6割以上は高齢者といわれ、全国的な地域医療への取り組みが課題とされている。

 政府は25年までに、地域ごとに効率的で不足のない医療提供体制の構築を目指している。「経済財政運営と改革の基本方針2019」(19年6月に閣議決定)では、この地域医療構想の実現に向けて、公立・公的医療機関などの診療実績データの分析に基づき、高度急性期・急性期医療や過疎地などでの医療提供に重点化するよう医療機能を見直すとともに、それを達成するための再編・統合の議論を進めていくとしている。なお、再編・統合については、必ずしも医療機関そのものの統廃合を決めるものではないが、医療機能の再編や病床数適正化の支援を行っていくものだ。

 厚生労働省は今年1月、地域医療構想の実現に向けて国が助言や集中的な支援を行う「重点支援区域」の1回目の選定結果を公表。3県5区域が選ばれた。これらの区域では今後、地域の医療提供体制や医療機能再編などを検討する医療機関に関するデータ分析などの技術的な支援のほか、地域医療介護総合確保基金の優先配分などの財政的な支援が行われていくことになる。

今年1月発表 初の重点支援区域
【宮城県】
仙南区域(公立刈田綜合病院、みやぎ県南中核病院)
石巻・登米・気仙沼区域(登米市立登米市民病院、登米市立米谷病院、登米市立豊里病院)
【滋賀県】
湖北区域(市立長浜病院、長浜市立湖北病院、長浜赤十字病院、セフィロト病院)
【山口県】
柳井区域(周防大島町立大島病院、周防大島町立東和病院、周防大島町立橘病院)
萩区域(萩市立萩市民病院、医療法人医誠会都志見病院)

独自路線による地域医療を推進

 行政が地域医療政策を進めていくなかで、喫緊の課題として挙げられるのは、医師の確保と設備環境の充実だろう。地域によっては危機的な状況となっており、独自で地域医療に取り組む医療施設も少なくない。

 北九州を拠点とする北九州総合病院は、医療ロボットの導入など、あらゆる疾病に対応可能な先端の医療設備の導入を進めているほか、地域住民と連携会を発足し、院内で病気について学べる教室やイベントの開催といった取り組みを実施。また、近隣の福祉施設や介護施設とも連携することで専門業務を分担し、効率的な医療サービスを提供している。

 佐賀県鳥栖市を拠点とする医療法人社団如水会 今村病院では、鳥栖を始めとする佐賀東部地域に救急医療体制が充実していなかったことから、10年前より急性期病院(急性疾患または重症患者の治療を24時間体制で行う病院)にシフトした。救急病棟だけでなく、とくに専門とする外科においては最先端の医療機器設備をそろえ、専門の医師を集めて質の高い医療を提供。また、救急医療の連携とレベルアップのため、近隣の自治体や医療施設と連携し、医療従事者と医療資源を集中させることにより、地域住民と密着した地域包括の医療サービスの提供も推進している。

 地域医療とは、そこで生活する地域住民のためにあるものだ。医療技術自体は日進月歩で進歩しているものの、地域によってはそれを必要とする患者に届いていないという現状もある。地域医療は“生活支援活動”と捉えなければならず、将来の医療はそれぞれの持ち場に加え、地域住民と家族ぐるみで運営していかなければ厳しくなるだろう。いわばこれからの地域医療は、地域住民が主体となり、日々の生活のなかで医療・健康・介護に関わる従事者がサポートするというかたちで運営していくことで、地域の自立を促し、地域を豊かにするものになっていくのかもしれない。

【小山 仁】

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