2024年05月17日( 金 )

ついに始まった!「建設崩壊」そして「不動産崩壊」(前)

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建設業界の崩壊

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府は緊急事態宣言の対象を全国にまで広げた。そんななか、清水建設の建設現場の勤務者3名の陽性が判明し うち1名が死亡したことから、緊急事態宣言の対象地域の作業所約500カ所の閉鎖を決めた。緊急事態宣言が全国に拡大されたことから、作業所の閉鎖は全国に及ぶと考えられる。

 清水建設以外にも感染者が発生したゼネコンがあり、工事の中止を表明あるいは検討している。感染者が発生していないゼネコンも、発注者と工事の中止などの協議を開始している。
 大林組では 九州電力玄海原子力発電所の工事現場(前田建設工業とのJV)において社員の感染が判明し、この現場だけでなく 緊急事態宣言対象地域の工事現場約350 カ所の工事中断を検討中であり、会社全体としては4月25日から5月10日までを一斉休業とする。
 竹中工務店でも従業員に感染者が判明し、対応を検討中である。

 福岡の建設工事現場では、作業員の現場への通勤手段は自動車が圧倒的に多い。しかし、東京などでは電車で通勤する作業員の姿を多く見かける。自動車の中も3密ではあるが、電車の中は、より大人数の感染リスクが高くなる。東京は空前の再開発ラッシュであり、地方からも多くの職人たちが東京の建設現場で働いている。職人たちにとって、現場だけではなく、通勤途中、宿泊先も3密の状態となっており、感染リスクは高い。

 建設現場は職人なくしては成り立たず、顔を突き合わせて打ち合わせや指示をしながら進めていくので、テレワークとは無縁の業種である。工事を延期すれば、ゼネコンの資金繰りや発注者の業務計画に悪影響が出る。しかし、これ以上の工事作業所での感染拡大を止めるためには、工事作業所を閉鎖する以外に有効な手段が無いという判断で、各ゼネコンは閉鎖を決断している。通常、建設工事の請負契約では、工事の遅延などが発生した場合、発注者が遅延損害金などを請求することができるが、天災などの場合は例外とされる場合が多い。

 国土交通省は、公共工事に関して 工期延長に伴うコスト増加の発注者負担を地方自治体に通知した。また、民間の発注団体に対しても、工事請負者側から工期延長を請求でき、増加したコストは双方で協議するよう求めた。建設業界団体に対しては、下請け業者への適切な支払いなどを求めた。国を揺るがす未曾有の事態であるので、発注者の理解・協力が求められる。非常時になれば 大手ゼネコンほど 内部留保を強化する可能性が高いので、下請けへの適切な支払いは守っていただきたい。また、国も支援策を打ち出すべきである。

 このように、建設業界において崩壊が始まった。他の業界でも、観光・宿泊・飲食・交通・サービス業などあらゆる業種において崩壊が始まっている。国民が一定期間「STAY HOME」を徹底し、コロナウイルスが収束できることが理想であるが、中小企業や個人事業主が持ちこたえられるのか…。大きな試練となっている。

(つづく)

【桑野 健介】

(後)

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