2024年05月06日( 月 )

中国が来月にウェブ会議方式で全人代会議を開催か~政治・社会の復調のアピール

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 中国、香港メディアは、中国が3月から延期していた全国人民代表大会(代表数約3,000人。以下、全人代)会議を来月開催する見通しを報じている。中国「GLOBAL TIMES」(「環球時報」の英字紙)は17日、5月後半か6月初めに開催される可能性が高いという見通しを、香港「星島日報」(親中紙)は5月23日に開催との見通しを報じている。全人代会議の開催に関して、日常的な業務執行・決定機関である全人代常務委員会(175人)が26日から開催する同会議において開催時期を決定すると見込まれている。

人民大会堂内議場

 開催にあたって、2つのポイントがある。まず第1に、中国は特に首都北京における新型肺炎の再度の感染を警戒しており、人々が首都北京に入ることに対して一定の制限を設けており、感染予防策との兼ね合いを考慮しなければならない。全人代には約3000人の代表(議員)が出席する。全人代会議は指導者に接触することが容易ではない中国において、主要な指導者がマスコミの前に姿を現す貴重な機会であるため、取材、傍聴するために大勢の記者、外交官が北京の人民大会堂に押し寄せる。このために中国入りする記者もいるが、中国政府が海外から来る記者に対しても2週間の隔離措置を求めるのであれば、日程を早めに通知するなどの配慮が求められよう。

 あるいは全人代会議は初めてウェブ会議を取り入れる可能性もある。「GLOBAL TIMES」が23日、そのような見通しを報じており、方式は北京在住の代表は会議場に集まり、地方在住の代表はそれぞれの地域にてオンラインで参加するというものだ。これなら、感染拡大の不安はひとまず棚上げできる。

 なお、中国は2月の全人代常務委員会会議においてオンライン会議を実施済みであり、出席者171名のうち、114名が会場に来て、残りの57名がオンラインで出席し、議論、法案に対する表決まで行っている。湖北省などいくつかの地方政府の人民代表大会(人代)会議でも行われている。全人代会議となるとオンラインでの出席者は数百人から千人以上が見込まれ、国の会議としては前例のない試行となるが、報道によると技術面では問題ないようだ。

 第2に、中国の全人代の仕組みでは、全人代会議の前に各地方政府の人代会議を終えている必要がある。通例ではそれらは1月から2月にかけて開催されるが、今年は感染状況の深刻化に伴い多くの地域で開催が延期されていた。現在、延期していた地方政府が続々と開催していることも報じられており、準備は整いつつあるようだ。武漢市は1月初旬に、湖北省は1月中旬に人代会議を開催済みである。

 なお、全人代はかつては共産党の決定事項を承認するだけのゴム印にすぎないと揶揄(やゆ)されていた。現在では諸外国を意識して法意識が高まり、立法機能を強化しているとはいえ、会期も10日程度で短く、セレモニー的な要素は依然として残っている。例えば、湖北省の会議の開催時期には世間で新型コロナウイルスに対する危機感が醸成され始めていた時であったが、湖北省当局は会議を滞りなく開催することを優先し、感染状況の中央政府への報告が不十分であったと後に批判を浴びた。2月には湖北省および武漢市のトップである共産党書記が更迭されている。

【茅野 雅弘】

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