ライオンズマンション春日公園~設計偽装に関する大京の回答(前)
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構造設計一級建築士の仲盛昭二氏は、「福岡県大野城市の分譲マンション「ライオンズマンション春日公園」の構造計算に重大な偽装がある」と指摘した文章をNetIBNews編集部に寄稿した。このマンションは 1995年2月に竣工した 鉄骨鉄筋コンクリート造14階建て 総戸数210戸の分譲マンション。事業主は(株)大京、設計は大京九州支店(構造計算プログラムは大林組専用ソフト)、施工は前田建設工業。JR大野城駅と西鉄白木原へのダブルアクセスという恵まれた立地である。
編集部では、この文書をNet I・Bにて発信する前に、マンションの分譲会社である(株)大京の意見を聞いて反映すべく、4月16日に大京の小島社長宛てに質問書を送付し、4月30日に回答が返送されてきた。
(下記は 大京へ送付した質問書)
株式会社大京 代表取締役 小島 一雄様
貴社が分譲された福岡県大野城市の「ライオンズマンション春日公園」の構造計算に関して、構造設計一級建築士 仲盛 昭二氏から寄稿いただき、弊社ニュースサイト「NetIB-NEWS」にて配信することを予定しています。
貴社の見解も同時に配信しなければ不公平であると考えますので、貴社の見解を頂きたく、本文書を差し上げました。仲盛氏が述べているように「ライオンズマンション春日公園の構造計算が違法でないことを構造計算書の該当箇所数ページを示すことにより証明」していただきたく存じます。
仲盛氏の指摘に対して、違法でないことの証明を、また、証明を頂けないのであれば その理由を、令和2年4月30日必着にて、上記弊社担当者宛に文書にて郵送願います。
仲盛氏が指摘している設計偽装は下記の3点。
1.鉄骨柱脚ピンの場合の重要な係数の偽装
2.耐震壁方向に有効な鉄骨部材がない場合の重要な係数の偽装
3.鉄骨柱脚ピンの場合の必要鉄量の不足=規定より53%不足「係数の偽装」とは、保有水平耐力計算における構造特性係数(Ds)の偽装を指す。図の上段の部分は このマンションの構造計算における保有水平耐力比であり、「階」の右側の欄「Ds」が構造特性係数Dsを示す。「Y方向」は耐力壁方向であり、耐力壁方向に有効な鉄骨が配置されていない本マンションの構造計算は、SRC造として低減されたDsが採用された構造計算が行われている。
本来行うべき構造計算の方法としては、RC造のDsを採用した保有水平耐力計算を行わなければならない。低減されていないRC造のDsを採用した場合の保有水平耐力計算を行った場合の数値が図の下段の部分である。8階(0.99)から3階(0.92)が 構造耐力不足(Qu/Qun<1.0)となっている。地震が発生した場合、構造耐力が低い階が最初に崩壊する。1つの階の崩壊は、建物全体の耐震強度が不足という事態につながる。
質問書に対する大京からの回答は下記の通り。
弊社が分譲いたしました「ライオンズマンション春日公園」につきましては、建築基準法に定められた検査済証の交付を受けており、弊社として適切に建設されたものと考えております。
なお、「ライオンズマンション春日公園」は分譲済の物件でございます。弊社はお客様のプライバシーと資産価値を守る義務を有する立場にあり、その観点から、マンション名を実名で報道することは控えていただきますようお願い申し上げます。令和2年4月24日
株式会社大京 グループ経営企画部 広報担当大京の回答には、「建築基準法に定められた検査済証の交付を請けており、当社として適切に建設されたものと考えております」とある。一見すると「検査済証が交付されているのであれば問題ないのでは」との印象を受ける方もいるかもしれない。
しかし、「検査済証」は、完了検査において「図面と実際の施工状況が一致していること」を確認し発行される書類であり、設計が建築基準法および関連法令規準に適合していることを証明するものではない。設計が建築基準法および関連法令規準に適合していることを証明する書類は「建築確認済証(建築確認通知書)」である。つまり、建築確認において偽装が見逃され施工された場合、偽装に基づいた図面の通りに施工されていれば検査済証が交付されてしまうのである。
大手マンション販売会社である大京は、当然のことながら「建築確認済証」と「検査済証」の違いを認識しているはずなので、あたかも 「検査済証が設計の適法性を証明するもの」との印象を与えるために、回答として「検査済証の交付」を記したものと推察される。
仮に、大京が建築確認済証と検査済証の違いを認識せずに回答をしたのであれば、マンション販売会社として失格であろう。国内のマンション販売戸数において、大京はトップクラスである。国内トップクラスである大京が、検査済証の意味という初歩的な知識を有していないとすれば 恐ろしいことである。
また、大京は回答のなかで、「当社はお客さまのプライバシーと資産価値を守る義務を有する立場にあり」と答えているが、違法建築を隠ぺいすることはプライバシーを守るどころではなく、区分所有者および近隣住民を危険な状態に置いていることである。「資産価値を守る」と書いているが、違法建築であれば、適正な資産価値は有していないのである。
(つづく)
【桑野 健介】
法人名
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