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2020年05月27日 10:18

「徒歩の調査」から見た福島第一原発事故 被曝地からの報告(中)

元福島市渡利住民 千葉 茂樹

放射線関係の単位・規則

 放射線の話になると、さまざまな単位が出てくるため、以下に簡単に説明しておきたい。原発事故の記事が出ると、多くの読者はこれで訳がわからなくなる。

 著名人の発言でも単位を混同して使っていることがある。特に「放射線」と「放射能」。本文を読んでわからなくなったらここに戻って確認していただきたい。また、「放射性物質の管理」についてもわかりにくい規則があり、これについても簡便に説明する。

Sv(シーベルト)
 放射線が人体に与えるダメージを表す単位。被曝(放射)線量。ボクシングに例えると、有効打数のようなもの。

μSv/h(マイクロシーベルト)
 1時間あたりの被曝(放射)線量。(放射)線量当量率。ボクシングに例えると、1ラウンド中(限られた時間内)の有効打数のようなもの。μ(マイクロ)とは、1/100万のこと。日常生活で使っているc(センチ)は1/100、m(ミリ)は1/1000、k(キロ)は1000を表す記号。

Bq(ベクレル)
 放射能(放射線を出す能力)の単位で、1秒間に原子核分裂が1回起こると1Bqとなる。この時、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などの放射線が放出される。例えると、フライパンにポップコーンを入れて炒るとコーンが弾ける。このコーンが1秒間に何個弾けるか。飛び出す物も、皮や中身などに分かれる。

Bq/m2(ベクレル/平方メートル)
 表⾯汚染密度。物質の表面 1㎡で、1秒間に原子核分裂が何回起きるかを示す単位。例えれば、フライパン1個(単位面積)にポップコーンを入れて熱し、1秒間に何個弾けるか。

Bq/kg(ベクレル/キログラム)
 質量汚染密度。物質1kgにおいて、1秒間に、原子核分裂が何回起きるかを示す単位。例えれば、フライパンにポップコーン1kg(単位質量)を入れて熱し、1秒間に何個弾けるか。 

cps(カウント/秒)
 放射線計数率。放射線が1秒間に1回測定されると1cps。測定器毎に意味合いが異なる。同じ量の放射線が出ていたとしても、感度が低い器械ではcpsの数値は低く、感度が高い器械ではcpsの数値は大きくなる。機種毎にBq/㎡などへの換算係数が異なる。例えると、池や沼で魚を取るとき、大きな網と小さな網では、1回の漁で採れる魚の数が違うようなもの。

放射線管理区域
 一般人が立ち入ってはならない区域。2つの区分がある。ひとつは、空間放射線量率での区分で、20μSv/h以上で、「立入管理制限区域」。もうひとつは、表⾯汚染密度での区分で、4万Bq/㎡以上で、「汚染管理区域」となる。 

汚染土の管理
 原発事故後に基準が変わり、特別措置法施行規則で8000 Bq/kg以上の汚染物を管理するようになった。

原発事故直後の記録

 2011年3月15日、東風が吹き、東日本各地は原発から出た放射性物質の雲(プルーム)に覆われた。折り悪く雨が降り、上空にあった放射性物質が雨と共に地上に降り注いだ。15日午後6時、福島市では24.1μSv/hを記録した。当時、私は放射線の知識がほとんどなく、「マイクロシーベルト」と聞いても何のことかピンと来ず、ただ得体の知れない恐怖に襲われた。その後、福島県立医大図書館に通い、専門書を1カ月で20冊ほど読んで勉強した。

 当時を振りかえると、異常な事がたくさん起きた。私は事故直後、会津の猪苗代に逃げたが、20日に渡利に戻った。この時、土湯峠(会津と福島盆地の境)から眺めた福島盆地上空には、不気味な青白いモヤがあった。渡利に戻った翌21日、左目が腫れあがり、車に触った指が痛痒くなった。これは中々治らなかった。

 原発事故前には野鳥がたくさんいたが、事故後はまったく見なくなった。5月に久しぶりに見た若いスズメは、庭の枇杷の実を一心不乱に食べていた。翌日、枇杷の木の下にスズメの死体があった。

 庭のコモチマンネングサは黄色く変色した。この草は、汚染のより少ない地域へ行くと緑色であった。2012年の春は竹や笹が黄色く変色した。これも汚染の低い場所では緑色であった。

放射線測定器をなんとか入手

 原発事故直後、放射線測定器は品薄で非常に高額であった。私が放射線測定器を入手したのは5月下旬ごろ。米国研究機関放出品で、5月上旬に校正(計測器の精度確認)された放射線源を測定する機器であった。

 対数目盛のアナログメーターで範囲は0~2000cps、対数目盛は数値が小さいほど間隔が広く、小さい値でも正確に読み取れる。この機器は「汚染された土」を測るには最適であった。1954(昭和29)年の「第五福竜丸事件-ビキニ水爆実験の放射能汚染」の際に、「被曝マグロ」を測定した機器と同じ構造である。試運転の後、福島市渡利を中心に調査を開始した。

(つづく)


〈プロフィール〉
千葉 茂樹
1958年生まれ。岩手県一関市出身。元福島県高等学校教諭。専門は火山地質学。調査の中心は磐梯山。この他に、「富士山、可視北端の福島県からの姿」などの多数の論文がある。2011年3月11日の福島第一原発事故の際は、福島市渡利に居住していた。翌12日、会津の猪苗代にいったん避難して20日に渡利に戻る。異変を感じたことから、専門外の「放射性物質による汚染」の研究を始めた。その後、阿武隈山系の平田村に転勤となる。平田村は原発から約45kmと近いが、地形の影響で「汚染がドーナツ状に低い地域」のほぼ中心にある。著者の調査形態は、地質調査と同じ「徒歩」が基本。2019年3月で定年退職。

※詳細な調査データは「報告書・論文など」として、京都大学吉田英生教授のHP(Watt & Edison)http://wattandedison.com/Chiba2.htmlに掲載。磐梯山の論文も含む。

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