最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(前)
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最先端技術と住民目線でより良い未来社会を実現
食事や買い物をする際、支払いは顔認証によって手ぶらで「キャッシュレス」。ドローンなどを活用して、各人の必要なものが必要なときに届く「自動配送」システム。街中を走るのはすべて自動運転のモビリティで、運転に手間取られることなく、移動時間中にも好きなことが可能に。子ども1人ひとりに合った教育を“いつでも・どこでも”受けることが可能な「遠隔教育」や、自宅にいながら必要な診察を受けられる「遠隔医療」。一度行政登録を行えば、以降の申請や手続きが、すべて個人のスマートフォンなどのデバイスから可能になる「行政手続ワンスオンリー」――。どれもこれも、SF映画や漫画などのなかで描かれている近未来都市のイメージそのものだが、これらすべては夢物語などではない。現在、内閣府が主導で進めている「スーパーシティ」構想が結実した暁には、実際に日本に誕生する新しい都市の姿なのである。
「スーパーシティ」とは、AI(人工知能)やビッグデータなどの最先端技術を活用し、国民が住みたいと思う、より良い未来社会を包括的に先行実現するショーケースを目指すものとされている。その要件としては、①移動、②物流、③支払い、④行政、⑤医療・サービス、⑥教育、⑦エネルギー・水、⑧環境・ゴミ、⑨防犯、⑩防災・安全の10項目の領域のうち、少なくとも5領域以上をカバーしたうえで、生活全般にまたがるものとされている。冒頭に述べたような域内でのキャッシュレスやドローン配達、遠隔医療や自動運転などを可能にすることで、誰もが住みやすく、かつ誰もが自分の可能性を広げていけるような、暮らしと技術が調和した未来を先取るコミュニティを実現していくものだ。2030年ごろに実現される未来社会での生活を加速実現するとともに、住民が参画して住民目線でより良い未来社会の実現がなされるよう、ネットワークを最大限に利用していくとしている。
都市インフラと都市OSをAPIによって互換・連携
その実現に向けては、分野を越えてデータを連携させるプラットフォームの構築が不可欠だ。道路や水道、電力網などの物理的な都市インフラと、横断的なデータ連携基盤であるデジタルインフラを組み合わせ、物理的インフラのなかにデータ連携のために必要な通信基盤やセンサー、デバイスなどを埋設。物理的インフラの上にデジタルインフラがレイヤー(層)状に重なっていくようなイメージで、各種の新たなサービス提供を可能とする未来仕様の都市インフラを構築していくものだ。一方で、まちの根幹を成す重要なデータを安全・安心に運用していくためのセキュリティ面も重要となる。そのために、サイバーテロ対策やデータローカライゼーションなどを含めた、データの適正な管理とセキュリティの確保を徹底。こうした都市インフラとデータ管理の両輪こそが、スーパーシティ形成の大前提となる。
そうした都市インフラを構築したうえで、最先端の技術を常に活用し続けるため、政府が特定の技術を推奨・誘導することなく、官民の枠組みを越えて常にオープンな連携を可能にするためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を設計。データ連携基盤や認証・決済、センサーなどの各種サービスの共通機能を提供する「都市OS」を、それぞれのアプリケーションサービスや都市インフラとつなぎ、データやサービスの互換性・連携性を保証していく。また、これらを活用した技術・手法をリファレンスとして蓄積・共有。都市インフラと都市OS、さらにはアプリケーションサービスを連携させて、スーパーシティの構造基盤を積み上げていくことになる。
さらにスーパーシティの実現に向けては、強力な推進機関の存在が必要不可欠だ。実行にあたっては、国のさまざまな関係機関を始め、自治体や民間企業など、多くのプレーヤーが関わることが想定されるが、未来社会の加速実現には、これまでにないインフラの整備や新たな規制の設定・運用が欠かせない。従来の国家戦略特区の区域会議をさらに充実・強化させるための、国(内閣府)と自治体、民間で構成する強力な推進機関を設置する必要が出てくる。この推進機関には、都市設計・運営全般を統括するアーキテクト(建設する者)や創造力・機動性のある人材などが集い、独自の規制設定などの強力な権限を付与。AIやビッグデータなどの最先端技術の活用や、住民の参画などをマネジメントし、便利な暮らしやニーズに合わせたライフスタイルの構築など、住民目線を取り入れた都市づくり・まちづくりを行っていく。
なお、この推進機関の設立に直接つながるものではないが、19年6月には、内閣府およびスーパーシティに取り組む企業を中心に「スーパーシティ・オープンラボ」を設置。オープンラボのメンバーとして積極的な発信を一緒に行っていく企業・団体の募集が行われている。今年3月25日時点で、オープンラボには86の企業・団体が登録。全体設計やコンサル、アーキテクト、まちづくりを始め、移動や物流、金融、医療・介護、教育、エコ・環境、防災・防犯、観光、セキュリティなど、各専門分野のさまざまなアイデアが寄せられている。国や自治体、企業、そして暮らす住民――すべての人の知恵と技術で、世界をリードする未来都市を実現するための準備が着々と進められている。
(つづく)
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