2024年04月24日( 水 )

四国新幹線「ないのがおかしい」(後)

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中央の認知度向上も次は「住民理解」

四国新幹線イメージ図
(四国新幹線整備促進期成会ホームページより)

 四国新幹線は四国だけで盛り上がっているように見えるが、他の地域でも取り組みがないわけではない。国やJR西日本は、新大阪駅を新幹線ネットワークのハブとするため、地下に新幹線ホームを整備する計画だ。これは将来的な新線を見据えたものだと考えられる。

 波床教授は、「国は、新大阪駅を新幹線ネットワークのハブにするため、地下に2面4線の新幹線ホームを新たに整備する計画だ。山陽新幹線、北陸新幹線だけなら、新たな地下ホームは必要ない。国もJR西日本も明言していないが、おそらく九州新幹線(西九州ルート)、四国新幹線などを視野に入れたものだろう。新大阪駅の新幹線駅部分は、すべてJR東海が所有している。JR西日本が使用できるのは20番線だけだ。JR西日本にしてみれば、自前のホームをもっともちたいという考えがあるのかもしれない」――と分析する。

 期成会では、中長期目標に「リニア中央新幹線が大阪まで開通する2037年を四国新幹線開業の1つのターゲットにする」を掲げる。千葉会長は、「期成会の立ち上げ直後は、政府与党に要望活動を行っても関心をもってくれなかったが、今では中央での四国新幹線の認知度は格段に向上した。多くの方が基本計画路線のなかで『四国が最も熱心』との評価を得ている。『次は四国の番だ』と強く感じている」と力を込める。

 ただ、肝心の住民の機運醸成は道半ばだ。「新幹線なんかいらない」という声も根強く、シンポジウムでも盛り上がっているのは関係者だけなのが現状だ。地元メディアの扱いも小さい。四国で建設会社を営む社長は、「数年前に比べれば、自分の周りの経営者の間でも、四国新幹線は現実味を帯びてきている。ただ、なかには否定的な人もいる。地域によっては、高速道路がまだ整備されていない地域もあるからだ。とくにホテル関係者のなかには、宿泊需要の減少を懸念する声もある」と話す。期成会としては、地元の「熱心さ」のレベルをまだまだ引き上げる必要がありそうだ。

簡単ではない「整備」格上げ

 四国新幹線の地元要望に対し、国土交通省鉄道局は現状をどう認識しているのか。

 「地元の強いご期待があることは十分に承知しているが、整備計画路線の財源確保などが大きな課題になっているのが現状だ。基本計画路線を現時点で『整備計画路線に格上げ』し、実現することについては、さまざまなハードルがあり、簡単には解決できない課題だ」(鉄道局担当者)――と、慎重な姿勢を崩していない。

 その一方で、国土交通省は、「幹線鉄道ネットワークの在り方に関する調査を実施中だ。この調査は、全幹法に基づく法定調査ではないが、幹線鉄道の整備が社会経済に与える効果の検証や単線新幹線など、幹線鉄道の建設コストを縮減するための効果的・効率的な整備手法の研究に資するもの。今後、基本計画路線も含めた全国の幹線鉄道ネットワークをどのように形成していくかについて、必要となる検討材料の把握・整理を行っていきたい」。まったく期待を抱かせないわけではないが、さりとて何ら明確な確信も与えないというよくある対応だ。

「四国の新幹線整備のイメージ」四国新幹線整備促進期成会ホームページより

(了)

【大石 恭正】

(中)

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