2024年04月16日( 火 )

“ウィズコロナ”の世界で不動産テックは根付くのか(前)

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 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の世界的な感染拡大によって、働き方に変革が求められている。なかでも、ウイルス感染を回避しつつ仕事に取り組める手段として、テレワークが注目を集めている。

 不動産業界では、仲介業者を通じた内見申込や紙媒体主体の契約方法など、エンドユーザーが強いられる時間的制約が多い。契約までの時間短縮など、生産性の向上や業務の効率化を目指し、早くからITを活用したオンライン上で完結する不動産サービスの必要性が議論されていた。
 しかし、そうした不動産×IT=「不動産テック」の導入は議論の域を出ず、遅々として進んでいないのが現状だ。実際に土地所有者と不動産業者との間でなされる情報交換や取引は、両者の関係性を土台としている。既知の間柄から来る“安心感”を、オンラインサービスの利便性が代替するまでには至っていないのだ。

 何かのきっかけが必要とされるなか、偶発的ではあるものの、今回のコロナが発生。不動産テック推進の足がかりを得た格好だ。

コロナショックを商機に

 緊急事態宣言が発出されて以降は、国や地方自治体が企業にテレワークの実施を要請。官制需要ではあるものの、関連企業にとって「コロナショック」が商機であることは間違いない。

 不動産テック企業のイタンジ(株)では現在、自社サービスへの問い合わせが増えているという。とくに、賃貸仲介会社向け顧客管理システム「ノマドクラウド」、内見予約や電子契約を可能とする賃貸管理会社向けリーシング業務のワンストップサービス「Cloud ChintAI」への関心が高まっており、導入した企業からは「Cloud ChintAIがなかったら、テレワークは不可能だった。導入しておいてよかった」など、前向きな声が寄せられている状況だ。
 また、イタンジ提供のオンライン上で賃貸物件への入居申し込みが完了する「申込受付くん」による入居申込数は、年間12万件を突破。同サービスの利用者3,540名を対象にアンケートを行った結果、75%以上が「紙よりウェブでの入居申し込みを希望する」と回答するなど、リピーターの獲得にも期待できる内容となっている。

 「申込受付くんの利用が広がることによって、管理会社のペーパレス化だけでなく、仲介会社や保証会社のペーパレス化も実現され、業界全体のデジタル化を促進することができます。物件の募集状況が自動的に最新化されるという面でも、業界にとって必要とされるサービスであると考えています」(イタンジ)。
 コロナショックは、既存サービスを時代に即した在り方へと転化させるチャンスだ。各不動産テック企業には、これを一時的な特需で終わらせないためにも、エンドユーザーに寄り添った、さらなる創意工夫が求められる。

テレワーク採用の実態

 ITツールの導入によってサービスの利便性を高める不動産業者だが、社内のIT化は進んでいるのだろうか。コロナショックにおける社員の安全確保や、集団感染を防ぐ目的で推奨されたテレワークの実施は、容易ではない。
 “仕事に人が付く”のではなく、「こいつになら任せられる」といったように“人に仕事が付く”日本の雇用環境においては、社員が事務所にいるという「存在感」が評価対象になる場合が多く、テレワークは根付かないとの意見が散見された。当社で行った不動産関連業者へのアンケート結果を一部紹介する。

不動産テックA社

 当社では、slackやビデオ会議ツール、クラウドストレージを活用しており、社内での押印文化もないため、基本的にはほぼすべての社員がテレワーク可能な状態にありました。そのため、今回の緊急事態宣言を受けて、新しくサービスの導入などは行っておりません。ほぼすべての社員が、問題なくテレワークに移行しております。

アパート販売管理B社

 基本的には、賃貸管理部門も含めた全従業員を対象に、在宅勤務にて業務を行っております(4月22日時点で80%の在宅勤務率)。お客さまや関係者さまとの商談、打ち合わせなどにつきましては、必要に応じてテレビ会議や電話会議による非対面での実施をご提案させていただいております。一方で、賃貸管理業務に限ったことではありませんが、郵便物の確認、請求書関係、紙で出力し押印など必要な一部書類業務については、出社対応が必要になっております。

不動産売買C社

 全社員がテレワーク対象です。郵送物などがあるので、総務が週に何度か出社していますが、その場合も会社の滞在時間は数時間程度です。営業活動はテレビ電話が基本です。
 非常事態宣言が解除されたとしても、6月19日までは完全リモートワークを続けます。以降も月曜日の午前中3時間のみ出社、火曜から金曜日は出退勤制限なし。お客さまのところへ自由に商談に行くスタイルです。営業管理は、売上になる手前をKPI(重要業績評価指標)とし、2週間に1回のKPI会議で行動確認していきます。もちろん、社員同士のコミュニケーション不足が懸念されるため、定期的に飲み会や研修、旅行を企画していきます。

 不動産テック企業に関しては、今回のコロナに関係なく、すでにテレワークを実施している、あるいはすぐにテレワークに移行できる土壌が整備されているところが少なくない。移動時間を業務時間に充てることで、生産性の向上をはたした社員もおり、コロナへの感染リスク低減への取り組みとしても、企業は全員出社という慣例を見直す時期にあるといえる。
 コロナに関係なく、すでにテレワークを実施している企業もある。(株)フージャースコーポレーションは、「育児や介護など、家庭の事情を抱える社員の働き方改革や、各社員の業務効率化の観点から、2年ほど前より順次導入を進めております」としており、早くから職場環境の再整備に注力してきたようだ。

(つづく)

【代 源太郎】

(後)

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