かつての経済・文化の拠点、官民連携で復興・再生へ~日田市
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2020年06月09日 12:00

かつての経済・文化の拠点、官民連携で復興・再生へ~日田市

 北部九州の中心に位置することから、古くから政治・経済・文化の拠点として栄えてきた日田市。少子高齢化や転出超過による人口減少や、集中豪雨による被災など厳しい状況が続いているが、復興・再生に向けて、行政と民間とが連携した新たなまちづくりが進められている。

水郷のまち 日田

山あいに都あり 文化と歴史あるまち

日田市豆田町伝統的建造物群保存地区
(日田市ホームページより)

 江戸時代は幕府の直轄地(天領)となっていたほか、「水郷」と呼ばれるほど水資源に恵まれ、筑後川を通じて古くから久留米や大川などの北部九州の主要地域の物流を支える拠点でもあった日田市。市の総面積666.03㎢のうち、林野面積が550.72㎢と約82.6%を占めており、屋久杉(鹿児島県)、飫肥杉(宮崎県)と並んで九州三大美林の1つに数えられる「日田杉」の産地として、林業が盛んな地域で知られている。

 市の中心部にある豆田町は、かつての“天領”の面影を残す観光名所として知られ、江戸時代以降に建てられた建築群が現存することから、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定。儒学者の廣瀬淡窓が開設した日本最大規模の私塾「咸宜園」があったことから、同塾と共生した町並みが残るとして文化庁から日本遺産の教育遺産群に認定されている。

 また、九州で初めて住民を中心に開催された「天領日田おひなまつり」を始め、鮎漁解禁を祝う祭事「日田川開き観光祭」、竹燈籠が幻想的な夜景を演出する「千年あかり」など、地域の祭事も豊富。なかでも約300年以上の歴史を誇る九州三大祇園の1つ「日田祇園祭」は、厄除けの神事として国の重要無形民俗文化財の指定およびユネスコ無形文化財に登録されており、「山あいに都あり」といわれた日田の文化が、今なお受け継がれている。

令和元年日田祇園祭の様子(日田市ホームページより)

 一方で、地方自治体としては、少子高齢化や転出超過の影響から1980年に8万3,880人だった市の人口は、2019年4月には6万4,409人まで減少。地元就職支援や雇用創出などの若い世代の移住・定住対策に加え、結婚支援や子育て世代の経済的負担の軽減などの取り組みが重要課題となっている。

 また、人口減にともなって、中小の商店を始めとした地域経済が縮小。同市の6商店街で構成される日田市商店街連合会の調査によれば、加盟店舗数は1973年の562店をピークに、89年は356店、2019年は191店と減少の一途をたどっている。さらに、12年と17年には九州北部豪雨で市域が甚大な被害を受けたこともあり、行政・民間を挙げての地域再生・復興に向けた取り組みが続けられている。

地域経営による「Reデザイン」で再生へ

重要文化的景観 小鹿田焼の里
(日田市ホームページより)

 日田市では17年から、「ひたReデザインプログラム」という取り組みを推進している。これは、「民間と行政が連携した地域経営」「今あるものを新しいかたちで活用する」「課題や取り組みを個別・単体で考えず、総合的・統合的に考える」――ことに取り組んでいくというものだ。

 たとえば、旅館だった建物を交流拠点にして、貸事務所やイベントスペースとして活用することや、酒屋だった空き店舗を学生の勉強する場所や仕事の打ち合わせをするスペースとして提供するなど、ライフスタイルを“リデザイン”するという意図で課題解決とともに打ち出した。

 民間でも、地域内で循環する仕組みづくりや賑わいの創出に向けて、日田市商店街連合会がさまざまな企画を推進している。その1つが、まち歩きイベント「ひたまちてくてくウォーク」だ。これは、福岡市南区の井尻商店街が企画・運営する「とことこウォーク」を参考にしたもので、商店街を冒険感覚で散策し、その魅力を再発見してもらうことが目的。糖度が高い「日田梨」を始め、独特の風味や歯ごたえのある「日田焼きそば」、野菜でつくられた「ひたん寿司」など、地元の名産・名物などを日頃よりもリーズナブルに食べる・買うことができるとして、人気を博している。

JR日田駅

 また、日田市とJR九州(株)は今年3月20日に、JR久大本線・日田駅の駅舎2階に、ゲストハウス、カフェ、コワーキングスペースを備えたまちの交流拠点「STAY+CAFÉ ENTO」を開業した。運営は、公募型プロポーザル方式により選定された(株)ENTOが行う。ゲストハウスはインバウンドから国内旅行者まで幅広い層の利用を想定するほか、観光案内や飲食店案内など、まちのコンシェルジュとしての役割も担う。
 また、カフェ&バーでは内装や家具に日田杉を使用するほか、地元食材を使ったランチを地元の「小鹿田焼」の食器で提供するなど、随所で地元産品をPR。さらに、併設のコワーキングスペースは「場所を選ばない自由な働き方」を推進する九州アイランドワーク(株)(一平グループ)と連携し、宿泊機能を備えたコワーキングスペースとして新たな価値を提供する。

 豪雨被害からの復興や防災対策、人口減への対応など、多くの課題を抱えている日田市だが、そのなかでもまちの環境や資源、歴史・文化などを活かし、官民挙げて地元の力でまちを盛り上げようと、さまざまな取り組みを行っている。全国各地の地方自治体にとって、同市のこうした前向きな取り組みは、参考になるところも少なくないだろう。

【小山 仁】

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