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2020年07月01日 14:34

【インタビュー/玉城絵美】「リモート」のその先へ 10体のアバターを動かす世界がすぐそこに(中)

H2L(株) 創業者
早稲田大学大学院創造理工学研究科 准教授
玉城 絵美

 強力な感染力をもつ新型コロナウイルスは、人間が慣れ親しんできた「働き方」に対しても極端な転換を迫った。可能な限り人と人が交わらず、会話すら避けながら成果を生み出す働き方――不可能にも思える「無理難題」の実現に早くから取り組んできたのが、玉城絵美准教授が創業した(株)H2Lだ。同社は4月、「ポストコロナ社会を構築するベンチャー」にも選ばれ、その先見性と技術力が注目を集めている。玉城准教授が目指すのは場所や時間に縛られない生き方。リモートワーク技術が社会に実装されたそのずっと先で待っているのは、玉城准教授が10代のころ病床で夢見た「どこでもドア」の世界だ。

「ホログラムで出勤」が日常風景に?

 ――完全なリモート社会では能力さえあれば年齢は関係なく、障がいがあろうが、どこに住んでいようが引く手あまたということですね。逆に、新しいテクノロジーについていけない人も一定数存在します。そういう「遺物」のような人たちは働くのが難しい社会になるのでしょうか。

 玉城 予言に近いかたちになってしまうのですが、いまよりだいぶ働きづらくなると思います。中小企業の経営者や大企業の中間管理職の方たちと話す機会があって、そのときによく聞くのは「リモートワークになってから、どの人がよく働いていて、誰が働いていないのかがよくわかるようになった」っていうことなんです。そういった企業ではリモートワークのデータを蓄積して、大きな配置転換をやろうとしています。

 私が「じゃあ、働く人と働かない人の具体的な差って何ですか」って聞くと、「コミュニケーション能力です」って言うんですね。コミュニケーション能力って、大きく分けて非言語情報と言語情報があるんですが、そのうち非言語情報がかなり多くの部分を占めているんです。

 たとえば言葉の抑揚だったり身振り手振り、顔の表情だったりするんですが、これらがコミュニケーションの93%くらいを占めていて、言語情報はたった7%です。どういうことかというと、文章が苦手で書類をつくるのが得意じゃない人でも、オフィスに来てなんとなく雰囲気で流していたら仕事がまわっていた、ということなんです。これがリモートワークに移行すると、実際の成果として報告書があがってこないので、上司からは「雰囲気で仕事をしていた人」と評価されてしまう。リモートだと言語情報メインのコミュニケーションになるので、その能力が低いと評価されにくく、リモート実力主義によるちょっとした地殻変動が起きているようです。

 「雰囲気」の人たちが今後どうなっていくのかっていうのは……ちょっと頑張って言語能力を上げてほしい(笑)。もしくはその方たちでも働きやすいようなインターフェイスを一生懸命開発しているので、技術面でフォローアップしていきたいと思います。

 ――玉城さんが創業したH2Lでは、社員の席にアクリル製のパネルを置いて、そこに社員それぞれのホログラム(3次元映像)を映し出すことであたかもそこにいるかのようにコミュニケーションできる技術(HoloD/ホロディ)を開発しました。表情やしぐさもわかるため、非言語能力によるコミュニケーションを補助する意味があるように感じました。

ホログラムリモートワーク「HoloD」のイメージ
HoloDのリモートワーカー側インターフェイス

 玉城 おかげさまで「HoloD」はいろいろな企業さんに興味をもっていただいています。仕事の成果は最終的に言語情報で出すことがほとんどですが、その過程でチームをまとめあげる業務管理などは非言語情報をものすごく使うので、中間管理職の皆さんはどうしても非言語情報能力が必要になります。そこでHoloDでは人間とほぼ同じ大きさのホログラムパネルにリモートワーカーを映し出して、非言語情報も含むコミュニケーションをできるようにしました。

アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」作品中に出てくる
謎の機関〈ゼーレ〉のシーン(※イメージ)

 HoloDについて意外に多いのが「営業に使いたい」という提案です。オフィスに置くのかと思いきや、受付に置きたいという提案もありました。
 HoloDがよく例えられるものが2つあって、1つは映画『スター・ウォーズ』のレイア姫のホログラムです。もう1つがちょっと変わっていて、アクリル板のHoloDがずらっと並んで上司を囲むその光景が、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で主人公のお父さんが謎の機関〈ゼーレ〉の上司と話をするときの場面に似ていると。「お父さんはリモートワーカーなんですね」って話もしました(笑)。

 

(つづく)


<PROFILE>
玉城 絵美

H2L(株)(H2L Inc.)創業者/早稲田大学大学院創造理工学研究科 准教授/人間とコンピュータの間の情報交換を促進することによって、豊かな身体経験を共有するBody SharingとHCI研究とその普及を目指す研究者兼起業家。2011年にコンピュータからヒトに手の動作を伝達する装置「Possessed Hand」を発表。分野を超えて多くの研究者に衝撃を与え、CNNやABCで報道。米『TIME』誌が選ぶ50の発明に選出。同年には東京大学で総長賞受賞と同時に総代を務め博士号を取得。2012年にH2L,Inc.を創業、2015年にKick Starterにて世界初触感型コントローラ「Unlimited Hand」を発表し22時間で目標達成。内閣府総合科学技術・イノベーション会議で総合戦略に関する委員も務める。新たなBody Sharingの研究プロダクトである「FirstVR」は、NTTドコモ5Gとの連携を2019年に発表。Possessed Hand、Unlimited Hand、FirstVRは、基礎から応用まで多くの研究者に利用されると同時にBody Sharingサービスへと展開している。

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