これからの工法・CLTパネル工法 メリットとデメリットは?(後)
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2020年07月02日 07:00

これからの工法・CLTパネル工法 メリットとデメリットは?(後)

 森林大国の日本では、林業の振興やCO2排出量を削減に向けて国産材の活用が期待されている。S造やRC造が主流の中大規模建築物でも利用できる、直交集成板のCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)で木造建築をつくる取り組みが進んでいる。CLTを使うと、どのようなメリットがあるのか。これから解決していくべきCLTの課題とは。その動向を見つめた。

森林ジャーナリスト田中淳夫氏に聞く
CLT生産に課題「業界を超えた情報交換を」

国産CLTが抱えるコストの課題

 ――CLT生産の課題は、どこにあるとお考えですか。

 田中 欧米産CLTの約7万円/m3に比べて、国産CLTの価格は約15万円/m3と高く、競争力強化のため7万円程度まで下げる必要があるといわれています。しかし、欧米のCLTが材料として使うトウヒなどに比べて、国産CLT原料のスギは含水率が高いため、乾燥に手間がかかります。CLTは加工工程も多く、歩どまりは約15~30%と、合板や無垢材に比べて高くありません。

CLTパネル材料となるスギの人工林

 CLT生産工場を安定的に稼働させるのに、必要な木材を集めるのも簡単ではありません。CLTの価格を下げるには、通常1万円/m3以下のB材の買い取り価格を、3,000円/m3まで下げる必要があるといわれますが、あまり現実的ではないでしょう。山主の所有面積が小さい日本では、大量の木材を安定して集めにくく、CLTに使われる原料のB材は合板用に取られて余っていないことも、工場の製造コスト増になります。

 そもそも、柱など建築用材になるA材は高く利益がありますが、B材は安くほとんど利益が出ません。伐採搬出費用の約7割が補助金で賄われていますが、木を育成する50~60年間は山主の持ち出しのほうが多く、このままでは次の世代のために木を植えられない状況です。

 また、今は法規制の壁がありますが、WTOの非関税障壁で国産材を優遇できないことや、将来は日欧EPAでEU産木材の関税が撤廃されるため、価格競争力のある輸入CLTが今後広がる可能性もあります。

今までにないアイデアが新しい素材を生かす道

 ――CLTを林業振興につなげるには、何が必要ですか。

 田中 「どこまで木材の魅力を出せるか」にかかっています。魅力のある建物なら木の付加価値を感じて、施主は費用を負担するでしょう。新しい素材を生かした今までにないアイデアから、CLTの新たな使い道を生み出さないといけません。

 木材を目にしたり触ったりすると、リラックスできるという研究結果が出ています。木材を使った内装の店舗が増えたのも、売れ行きに良い影響があるからではないでしょうか。それで木に親しみを感じてもらえると、森や林業を考えるきっかけが増えて林業振興につながります。

 林業家は自分が生産した木材がどこの建物に使われるのか、逆に建築家は建設で使う建材がどの山から来た木材なのかを知らないことがほとんどです。林業・製材業と、建設業・不動産業との業界を越えたお互いの情報交換が進むようになれば、現場の使い道に合わせた無駄のない生産が可能になり、どの業界にもプラスになるはずです。

<PROFILE>
田中 淳夫
(たなか・あつお)
1959年生まれ。静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社などに勤務。森林ジャーナリストとして活動し、森林、林業そして山村社会などを見つめ続けている。主な著書は、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など。

(了)

【石井 ゆかり】

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