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2020年07月05日 07:00

イージス・アショア中止は日本発の防衛システムへの転換点(4) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 そもそも7年前に導入が決まった時点では、1基の建造費は800億円と言われていた。それが、あれよあれよという間に2倍以上に膨れ上がり、2基併せて4,500億円になってしまった。しかし、北朝鮮の脅威に対応するには「致し方ない」「これしかない」との判断が先行したようで、詳細な費用の見積もりはなされないままであった。

 というのも、北朝鮮からミサイルが発射された場合、日本に到達する時間は「約8分」。「時間が勝負」というわけだ。イージス・アショアで迎え撃つ場合、ブースターの落下場所を安全な場所に誘導するような計算を施して発射していたのでは、貴重な時間をロスしてしまう。日本全体を守ることを考えれば、秋田県や山口県の一部にブースターが落下したとしても許容範囲内だとの認識があったのかもしれない。それより北朝鮮の弾道ミサイルに命中させることを最優先していたとしても当然ではなかろうか。

 アメリカにとっては、地元住民には緊急避難指示を出せば済む話との受け止め方であった。この点、「人の命は地球より重い」とする日本人とは価値観が違うようだ。実は、アメリカ本土では迎撃ミサイル基地の周辺ではこれまで何度もミサイルの発射失敗によって犠牲者が出ている。しかし、地域コミュニティから反対運動は出たことがない。

 今必要なことは、アメリカの一方的な売込み攻勢にいったん、「ノー」と言い、日本が独自の防衛戦略を再構築することである。アメリカはかつての「世界の警察官」の座を放棄し、「アメリカ第一主義」に徹している。しかも、戦後アメリカは世界各地で紛争や対立に関与し、多くの戦争を戦ってきたが、一度も勝利を手にしていない。

 まさに、「アメリカ式軍事戦略の限界」が露呈しているのである。いくら、冷戦時代の残りかすの大量の大陸間弾道弾の先頭に滑空弾を搭載し、「地球のどこの目標に対しても30分で到達し、核兵器以上の破壊力がある」と豪語しても、すでにロシアも中国も超音速兵器を相次いで開発し、アメリカと対峙している。

 こうした軍拡競争が続けば、アメリカも中国も同じ穴の狢で、内部崩壊の道を歩むことになるだろう。今やドローンやコロナを含め生物化学兵器が幅を利かす「非正規戦」の時代に他ならない。北朝鮮が力を注ぐEMP兵器の開発も然りである。

 日本は「専守防衛」を金科玉条の如く世界に訴えている。しかし、これは至極当たり前の発想で、日本の専売特許ではない。「富岳」の躍進を通じて、スパコンの演算能力で世界1位の座を取り戻した日本である。AIやIoTの力に加えて、世界の安全保障の監視システムや平和構築にもっと独自の力を発揮すべきであろう。安倍首相も河野大臣もイージス・アショアの撤回を機に、「敵基地攻撃能力」に関する議論を活発化させようと目論んでいるようだ。

 しかし、今、目指すべきは「宇宙基本計画」なのである。この5月に宇宙作戦隊を発足させた日本。今後は偵察衛星を大幅に増やし、弾道ミサイルを探知、追尾できる衛星をアメリカとも協力して開発する。北朝鮮の核やミサイルに対抗する可能性が強まることは当然だが、人類共通の課題となってきた火山活動や地震など自然災害の監視や避難誘導、復興支援にも活用できる体制を目指すべきである。

 イージス・アショア導入を白紙撤回したことで、アメリカからの圧力が一層強まるだろう。そのときの切り札にもなり得る。日本は現在の宇宙開発予算1.2兆円を2030年代初めには倍増する計画である。こうした流れを加速させ、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の撤去や衛星開発に日本が技術と資金を提供すれば、アメリカの負担を大幅に軽減させることにもなる。今こそ、宇宙時代に相応しい柔軟な発想で国防戦略を再構築する時だ。

(了)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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