2024年04月20日( 土 )

開発から半世紀を経て団地再生へ「宗像・日の里モデル」とは(前)

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日の里団地を10社JVが再生へ

 来年には開発から50周年の節目を迎える九州最大級の団地「日の里」が、いよいよ再生に向けて動き出す――。

 2020年1月、UR都市機構が公募を行っていた「UR日の里団地東街区の土地建物」の譲受人に、「福岡県宗像市日の里団地共同企業体」(以下、日の里JV)が決定した。日の里JVは住友林業(株)を代表企業とし、セキスイハイム九州(株)、ミサワホーム九州(株)、大和ハウス工業(株)、パナソニックホームズ(株)、積水ハウス(株)、トヨタホーム九州(株)、東宝ホーム(株)、西部ガス(株)、東邦レオ(株)の計10社で構成される。

東街区イメージ

 当該の土地建物は、宗像市日の里5丁目3番の1万8,280.79m2の土地で、もともとは住棟10棟(276戸)の団地が立ち並んでいたが、17年12月に用途廃止。その後、住棟4棟は解体撤去されたが、残り6棟は残置のうえで引き渡しとなり、既存住棟を活用して拠点化に資するなどの一定程度の生活利便施設とすることが公募の条件となっていた。

 この譲受人決定を受けて3月26日、宗像市とUR都市機構および(一財)住宅生産振興財団は、日の里JVと「日の里地区まちづくりに関する連携協定」を締結。今後、宗像市と日の里JV、URが相互の連携強化を図りながら、日の里地区の持続可能なまちづくりが推進されていくことになる。

既存棟は改修 拠点施設へ

 今回のプロジェクトでは、“宗像・日の里モデル”と名付けられたハイブリッド型団地再生が進められていく予定だ。事業全体のコンセプトは「Sustainable community(サスティナブル・コミュニティ)」で、過去から現在へとこれまで50年間続いてきた日の里コミュニティを、未来に向けて次の50年間をデザインしようというもの。コミュニティを「人と人のつながり」という狭義のものだけではなく、持続可能性を軸とする社会の在り方を常に考えていくものとして捉え、新しい風や多様な価値を受容。新たなチャレンジを起こし、進化するコミュニティを実現していく場づくりを目指していく。

 ここでは、「次世代に引き継ぐレガシー」と「新しい価値の創造」を掛け合わせることでエリアの“リブランディング”を行っていく計画で、これまでの日の里で取り組まれていた住民のまちづくり活動や団地再生への取り組みを踏襲したうえで、そこに先駆的な戸建住宅や新たなコミュニティといった付加価値を創造していく。

囲われてる部分が、今回再生されるエリア

 プロジェクトは大きく「生活利便施設エリア」と「戸建エリア」の2つに分けて開発が進められる。まず、生活利便施設エリアでは、日の里東小学校前の道路側に面している住棟である48号棟を、住民交流拠点「さとづくり48」として改修。地ビールを醸造・販売するブリュワリーやDIY工房を設けるほか、かつて日の里団地内に存在したコミュニティ活動拠点「日の里サードベース」の流れを汲んだコミュニティスペースや集会場の機能も付与。さらには、住棟の空き室を活用した起業支援なども行われる予定だ。

交流拠点として改修される予定の48号棟

 「さとづくり48」の土地建物は「日の里コミュニティ特定目的会社(TMK)」が所有し、管理・運営を東邦レオに業務委託する。TMKには共同企業体に属するハウスメーカーのほか、西部ガスと東邦レオが出資。所有責任者の西部ガスと運営責任者の東邦レオは、出資額の多寡に関わらず立場や収益などを同等として扱うという、これまでのエリアマネジメント運営の課題を解決する展開性のある運営体制も大きな特徴となっている。

 一方の戸建エリアでは、前述の48号棟以外の既存の住棟を解体・撤去・造成したうえで、エリアを64区画(165~220m2)に分けて、戸建住宅を新築していく計画となっている。最大の特徴は、いわゆる碁盤の目のように戸建住宅が整然と並ぶのではなく、エリアのなかにかなり大きな緑地を設けたうえで、まるでキャンプ場の木立のなかに立ち並ぶバンガローのように各戸が連続している点だ。

 この戸建エリアは、“里山に暮らす”をコンセプトに注目を集めた「サトヤマヴィレッジ」(北九州市若松区)を参考にしたもので、コミュニティ創発型「サトヤマ」住宅と名付けられている。住宅には垣根や塀をつくらず境界を曖昧にすることで、一帯を共有の庭として植栽するイメージで、住民同士の顔が見えやすく、コミュニティの形成を後押しする機能をもったユニークな住宅地となる。

 既存の住棟を改修する生活利便施設エリアでは、すでに一次改修が着工。今年10月にはブリュワリーがプレオープンを迎える。その後の二次改修着工を経て、21年5月に全体オープンの予定。戸建エリアでは、今年6月から住棟5棟(46、47、49、50、51号棟)の解体に着手し、9月に開発許可を取得して、翌10月から造成工事を開始。各戸建住宅は21年9月から着工となり、22年4月ごろ入居開始の予定だ。

(つづく)

【坂田 憲治】

(後)

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